住宅再開発プロジェクトにおける可能性
住宅の再開発は商業物件と比べ断然簡単です。環境保全や土壌汚染などについても用途が限られている為、住宅購入時ではフェーズIの環境検査や土壌調査も行なっていません。再開発目的なので取り壊しするだけという事もありますが、クロージングまでの期間が非常に短いという点で十分なデューデリが出来ないというのが本音です。それでも、解体事前の調査で環境汚染物質が見つかれば、法に沿った処置を行う必要があります。住宅の場合には売買がそれぞれ個人になり、デューデリの必要性を知らないという点や、法的責任などについても無知な場合が殆どです。同時に購入需要が高い為、この様な簡素化した購入方法を受け入れないのであれば、購入の交渉チャンスを失ってしまうのも事実です。
よって、住宅の購入時にはある程度バッファーをつけておく必要がある事をいち早く学びました。また、高需要から入札価格も高めになる可能性が高く、商業物件以上にギャンブル要素があると感じています。
購入契約成立後の流れと融資について
一旦、購入契約が交わされ、デューデリ期間に入れば、住宅では細分化された業者を呼ぶのではなく、Inspector(インスペクター/住宅診断士)という建造物確認業者が構造状況から違法建築や修繕必要項目までを見極めてくれます。通常は数時間で終わり、その場で状況の説明を行い、業者の判断を伝えてくれます。翌日には書面の報告書が送られ、購入最終判断材料として使われます。更に、この報告書は銀行融資の一部として、金融機関からの提出を求められます。再開発の場合には、再開発用図面などもあれば同時に提出する事で、購入と建築融資が咬合された融資申請が可能になりますが、殆どの場合は購入時までに図面が出来上がらない為、購入と再開発融資は別々に申請します。
融資面では再開発コストの80%まで(購入を含む)を提供してくれます。金利も概ね良心的で着工期間中は金利の支払いだけになり、売却時にすべてを支払う事になります。
設計から引き渡しまで
設計では建築家(Architect)とHousing Designerという2種類の専門家がおり、具体的な違いはライセンス上のものと思いますが、依頼者としての違いは感じる事なく、デザイナーの方が価格も断然安く終わります。通常はデザイナーが概要と外壁デザインを行い、他にインテリアデザイナーが内装の全てを引き受けます。建築申請には内装デザインは必要がない為、申請書が行政に受理された後に内装デザインを行うのが一般的です。
建築申請には2023年夏時点で5〜6ヶ月掛かっており、水道や電力を含め、申請費用は約$6万ドル(約650万円)程かかります。電力については前回のブログでお話しした通り、戸数によっては変圧器の設置が必要になります。下水道も市の下水道管に直結しますが、戸数が多い場合には雨水処理の為に貯水槽の設置が義務付けられます。建築期間は通常の宅地サイズで10〜12ヶ月です。よって、一般的プロジェクト期間は約2年になり、大まかな内訳は次の通りになります:デザイン2ヶ月、申請6ヶ月、建築12ヶ月、販売と引渡し3カ月。
進行中のニュープロジェクト: 2995 Adanac Street
バンクーバーにおける物件保証の現状
なお、バンクーバーでは物件保証がゼネコンの方から提供され、最長で10年間保証を義務付けられています。この保証もデベロッパーでは提供する事が出来ず、免許を持ったゼネコンが消費者に直接提供するシステムになっています。ゼネコンがその保険の内容を肩代わりする代わり、デベロッパーが保険代を負担します。これは各物件にかかる費用になり、プロジェクト毎に費用負担が請求される事になります。
デベロッパーとしての責任は引き渡しまでとなり、その後はゼネコンと購入者の直接な対応になります。
KM Pacificグループ代表取締役社長
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
アマゾン: 「家業を継げなかった三代目、継がなかった三代目」枡田耕治
楽天ブックス: 「家業を継げなかった三代目、継がなかった三代目」枡田耕治