契約形態にもよりますが、カナダのインダストリアルの賃貸借契約の殆どはトリプルネット(NNN)契約で、入居者(テナント)が物件における入居スペース割合に相当する固定資産税と建物の保険、及びテナント自社の運営経費(水道、ガス、電気など)を家賃とは別に払う形式になっています。
テナントの自主管理が義務付けられている事で、管理会社も物件へ来ることも少なくなり、頻度は物件の大きさにもよりますがだいたい月一が目安です。訪問の際には物件状況の目視(破損箇所の有無確認や清潔度の確認)やテナントとのやり取りが主な訪問理由です。よって、この際には管理会社担当者と友好関係を密にすることが可能です。
多くのテナントは管理会社との関わりをよく思っていません。管理会社はテナントの邪魔をし、なにかの理由につけて支払い請求を求めてくると思われがちです。もちろんこのような悪質な管理会社が存在するのも事実です。そしてこのような管理会社が入っている建物では物件運営がうまく行ってない場合が殆どです。
テナントの立場から見た管理会社との上手な付き合い方 その1
しかし、一般的なテナントの考えとは比較的に多くの管理会社は資産価値の維持と同時に良好なテナント関係を築こうとしています。管理会社としても、不動産価値維持にはテナントが必須である事を理解しており、安定した長期入居は物件に利益をもたらします。
この様な関係の中、テナントの立場から見た管理会社との上手な付き合い方は、物件担当者を知る事から始まると思います。多くのプロパティーマネージャー(PM)は営業的素質を持っている場合が多く、話しやすい人間が多いと思います。PMとしても良好なテナント関係を築く事は、自分の仕事の効率促進に繋がり、友好的な人間関係は物件の利益向上にも繋がる為、仕事の優先順位も高くなります。
その上で、PMとしては総務や物件関係の担当者との関係を重視すると同時に、受付の社員との関係もとても大事にします。受付係はテナントの顔に当たる部署で、各テナントの内部状況(営業状況や人間関係など)や各社員のその日の顔色やムードを理解している場合が多いからです。また、受付係は立場上、話好きな人が多く、各テナントの情報収集に大きく貢献しています。よって、大事な話をする場合、PMの多くは受付の担当者に面接先のムードを事前に確認する場合が多いです。(笑)
テナントの立場から見た管理会社との上手な付き合い方 その2
テナント視点でPMと上手に付き合う方法は、
- 対応窓口を統一し、
- 入居説明会から同じ担当者にする。
- 総務であっても、ある程度不動産知識がある人を配置する。お互いが同じ言葉を話せるのは、スムーズな関係を保つ上でも大事な要素です。
- 無理しない範囲でPMと継続して交流を保つ事です。PMと食事に行ったりする必要はないですが、PMが会いに来た時には数分割いて面談する事をお勧めします。
- 問題や質問は浮上時に問い合わせる。管理会社としても時間が経ってしまうと「古い案件」になってしまい、お互いの業務に支障が出るからです。
- テナント側の物件担当者が賃貸借契約書の内容を理解しているのも重要な事です。問題が起きた時点で契約書を確認するのではなく、当初から大まかな内容を把握しておく事はコミュニケーションの無駄を省き、建設的な会話と関係を生む事になるからです。
この様な友好的な関係は万が一賃料支払いが遅延する場合などでも大きな役割を果たしてくれます。例えば、友好的な関係が築けていれば、稀に支払いを忘れた場合でも、PMの配慮で違約金を排除してくれる事もあるからです。個人的な経験からも協力的なテナントからの稀な要請は多めに見ました。日頃はタイムリーに賃貸借契約書の内容を順応してくれているテナントなら尚更です。
3)まとめ
結論的には、不動産も人間が大きく関わる仕事ですので、その関係を有効的に保つ事で多くの問題も事前に防ぐ事ができます。これは法律重視社会のアメリカでも同じ事です。不動産業界の人間はシンプルに考える人間が多く、気持ちよく仕事が出来れば、多くの問題は協力的に解決しようと対応してくれます。
皆さんの管理会社との関係が良好に保たれます様に。
KM Pacificグループ代表取締役社長
枡田 耕治
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