これだけブログを書いてきていますが、読者の中には「商業不動産の面白さは何か」という基本的な疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。そう言った面でも、今回は私、枡田耕治、にとっての商業不動産の面白さについて熱弁させて頂きたいと思いました。熱く、そして長くなりますがどうかお付き合いください。

1)バックグラウンド

私が商業不動産業界へ飛び込む上でやはり大きな影響となったのは、私の育った環境が不動産会社だったという事だと思います。家には家業関連のものは殆ど置いてありませんでしたが、会社関係者の出入りは多く、良くパーティー等も行われていました。そして私も長男として会社へ出かける事も年数回あり、周りからの将来的「期待」を伝えられ、感じていたのも事実です。なので、環境的にも家業に入りたい、不動産に関わりたいという想いは強かったです。

しかしこれでは家業への想いがある一人の人間の話になってしまい、商業不動産のやりがいを図るものにはなりません。じゃあ、なにがそこまで自分を奮わせて、資金的にも負担が多く、流動性がないと言う面ではリスクも多いこの業界に自分から飛び込む様な事をし続けるのか?やはりそれは「ロマン」です。そして自分にしか出来ない「オンリーワンの物件を作り上げられるから」です。そして、自分の作品がテナント企業によって使われ、喜ばれるのを見るのは感動の一言に尽きます。

2)ロマン

多分、これはどの仕事に対しても値するものだと思います。思いが強くなければ、その業界で汗水垂らして、将来の成功を信じて進むことは出来ないと思います。私の不動産に対してのロマンは、やはり自分が建造した物件が世に残るという事だと思います。自分がコンセプトを考え、納得したデザインのもと、建物が構築されることは感動です。そしてプロジェクトが時の先を行き、話題になれば、それほど嬉しいものはありません。皆さんも幼少期にレゴや積み木などで遊んだ事があるかも知れません。その際、私の場合には壊しもせず、ディスプレーのため、もしくは後日また遊ぶ為に、目に見える所に残しておいたものです。やはりこの子供の時の感動と同じで、自分が作成したものが残るというのは感動ですし、自分の思いがこもったものが形になって残ると言うのはロマンだと思います。じゃあ、枡田はただ目立ちたいだけなのか?と言う疑問も出てくるかも知れません。多分、他のデベロッパーを含め、目立ちたいのではなく、自分が良いと思い、作り上げたものが、社会で受け入れられる、社会に貢献出来ていると言う感動を味わいたいんだと思います。私はそうです。やはり自分の身の回り以上に大きな社会に貢献出来る事は感動であり、そのチャンスをもらえると言うのはロマン以外のなにものでもありません。

3)社会貢献

例えば、もう10年経ちましたが、弊社が関わった704 Alexander Street物件は今でも現場の帰りなど少々大回りしてでも、現状を確認するために立ち寄ったりしてしまいます。そして、自分達が残した建物が今もいたずら書きもなく綺麗に使われていると、地域向上と秩序向上に貢献している実感が得られ、嬉しい気持ちで一杯になります。

多くの場合、機関投資家になると、不動産がお金作りの「手法」になってしまい、デザインをはじめとする「作り手の魂」が打ち込まれない場合が多くあります。以前、機関投資会社に勤めていた時も「いかに早く」、「いかに安く」仕入れ、竣工し、「いかに高く」貸し出せるかが大きなポイントでした。もちろん弊社でも経済利益の追求は大事です。しかし、不動産開発屋の場合には各デベロッパーの想いや考えが含まれた物件が多い気がします。例えば、704 Alexander Street物件では地域の秩序向上の為に外灯の数を多めに設置したり、典型的な倉庫の寒さを払拭する為に入り口にシャンデリアを吊るし高級感と暖かさを持ち入れたりしました。そして1270 Frances Street物件には内広場やオープン廊下を導入する事で、バンクーバーと言う街の中に存在するマイクロ都市環境の導入を試みました。

これが機関投資家になると、デザインは一貫しており、アメニティーにはその時の需要や近隣競合物件の設備に左右される事もありますが、建築コストが常に大きなドライバーになっていました。

(後半へ続く)

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