アメリカとカナダにおける今後の経済動向と題して、私共の現経済状況に対する理解や今後の流れについて共有したいと思います。
1)アメリカ・カナダ両政府のインフレ対策とその影響
2021年から継続してきた、コロナ関連の政府支援・財政政策と、ステイホームに伴うオンラインショッピングによる消費の高騰が、2022年の高レベルインフレの大きな要因となりました。現在、アメリカ・カナダ両政府は高インフレ鎮火政策に集中し、短期金利の急激な上昇に踏み切っています。これが年始には0%だった訳ですから、現在の6%半ばまでの短期レートの上昇は、経済(特に若年層消費者)には大きな影響を与えています。米連邦銀行は再度短期金利ターゲットを上昇させると、私は考えています。カナダ中央銀行も依然として2%インフレターゲットを示唆し、今後の更なる金利上昇を否定していません。
しかし、コロナ禍は経済的要因で始まった訳ではないので、大半の家庭には貯蓄があり、その使い道がなかった訳です。よって、消費は継続され、食料や燃料の高騰にも対応してきました。そんな中、カナダで一番打撃を受けているのは、近年マイホームを購入した若年層です。多くがゼロ金利時代に購入し、それをベースに25年間の支払い計画を立てたと思いますが、購入後一年以内で金利が3〜4倍にまで跳ね上がったので、家計簿は火の車状態だと予想されます。ただ、家関連の出費比率が30%を超えている家庭は、2016年の24%から20.9%まで低下したとの事です。
2)不動産市場の動向
不動産業界においては物流倉庫の需要は依然として高く、現在は今まで満たされなかった需要を満たすために、新規物件の導入が進められています。現時点では「新規竣工物件の余剰供給」は話題に出ていませんが、2023年下半期まで現金利政策が継続する傾向にある中で、着工件数が減ったのは言うまでもありません。ただ、物流倉庫を含めたインダストリアでは過剰需要が現在も継続しており、新規供給物件では記録的賃貸レベルで貸し出しが締結されています。
3)コロナ渦・ウクライナ戦争の影響
また、資源(特にガソリン)や食糧(小麦粉など)価格の上昇もコロナ禍以前よりは高額ですが、現在は落ち着きを見せています。ウクライナ戦争や中近東資源供給レベルの影響が今後も継続すると思いますが、この地域戦争が終止する事で、資源及び食糧問題はだいぶ緩和されると予測します。
ただ、軍事産業の向上が目的である米国としては、率先してウクライナ戦争の終戦に向けて動くとは思えません。一方で歴史的な「世界の警察官」ポリシーは依然として米国社会に浸透していると思いますが、Biden政権の中でどれだけこの共和党的考えを重んじているかは疑問です。ただ、対ロシアの力関係を明確にするだけでなく、中国に対しても政治的・軍事的影響力を見せつける上では良い材料になるので、急な展開は起きず、この地域戦争はこの先も継続すると予測しています。
4)まとめ
カナダ中央銀行のインフレターゲットが2%である中、インフレが7%を超えている2023年Q1の状況では、今後も高金利レベルは継続すると思われます。よって、現時点のプライム金利は既に6.45%(カナダ)に達していますが、今後更なる上昇が1〜2回はあると見ています。しかし、2023年下半期には経済の回復を見込んでいますので、上昇幅も0.25%ほどで終わるのではないでしょうか。
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KM Pacificグループ代表取締役社長
枡田 耕治
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