この度上記の様な面白いご質問を頂きました。どの様な形で投資に参加するかにもよると思いますが、簡単な結論は「ノー」です。特に住宅不動産から商業不動産に専門家の手を借りずに飛び込む事は無謀だと思います。私も不動産業界者として20年以上商業物件に携わって来ましたし、個人投資面においても住宅物件に関わって来ましたが、二つを同じ舞台に乗せて比較するのは非常に難しいと思います。
このブログでは一個人が個人の投資として戸建住宅、もしくは複合住宅を購入すると言う仮定ですので、企業スケールでの都市開発や区画調整から始める大掛かりな不動産投資事業は考えていません。ただ、後者における不動産投資を検討する場合にも、一般的オフィスやインダストリアル投資を行っているからと言って、他のセグメントへの参入は容易ではありません。未経験や不十分な知識はその投資家特有の投資リスクを上昇させる事になります。
1)住宅物件と商業物件の違い ①
個人の住宅投資に話を戻すと、人々は居住する必要があると言う観点から住宅への需要は耐える事なく継続しますが、日本の不動産同様「場所」がキーになります。北米の場合は国土も大きく、車による通勤も多く、日本の首都圏の様な「継続する街」が限られる為、サテライト地区化した住居環境が目立ちます。よって、需要は各地域で異なり、価格や将来的展望も各地域で変化してきます。住宅購入にはこの様な各地域のリスクや将来的展望を見分ける必要があります。
この面では商業物件にも似ています。物件の大きさにもよりますが、商業不動産も一般的には各地域に特化し、各サブ市場内に既存するテナントを呼び込むことが一般的です。しかし、住宅と異なる所は、行政との関わりが増え、購入前の事前調査が大幅に複雑になる事です。
例えば、売主から物件の図面を得たとしても、行政が保管している図面と異なれば、行政の持ち合わせている図面が「正式」図面となり、建築申請提出時に違いが表面化すると、申請以前に是正請求されてしまいます。また、環境汚染などに対しても厳しくなり、購入後に発覚した環境汚染問題は全て購入者責任になり、状況是正が求められる事になります。
2)住宅物件と商業物件の違い ②
さらに、各新規テナント入居時には通常大掛かりなテナント工事が発生し、行政のみでなく、テナントの建築家や業者とのやり取りも必須になります。そして、市場の状況にもよりますが、多くの場合大家側からテナントにテナント工事補助金を出す事もあります。もちろん、この補助金は賃貸期間で減価償却する事になりますが、住宅の賃貸では、この様な工事をする事も稀で補助金を出す事はありません。この様な負担金が出ることで、賃貸借契約の交渉も複雑になり、入居時までの時間も工事期間などを考慮すると長引いてしまう事になります。
契約タイプにもよりますが、住宅の場合には一回入居したら殆ど大家とのインターフェースが無くなりますが、商業物件では最低でも1ヶ月に一回は物件に足を運び、物件状況やテナントの活動状況を確認するのが当たり前の管理事業の一環になっています。また、複数テナント物件では建物の清掃や修繕作業などがあるだけでなく、資本工事を予算つけする事も貴重な作業になります。
さらに一般論としては、住宅は安全なリスクが低い不動産セグメントと位置づけされていますが、商業不動産のリスクがマクロ的経済状況によりテナントへの影響も大きく増える為、リスクレベルが増します。よって、経済の流れや各市場の経済変動も把握しておく必要があります。
3)まとめ
この様に各セグメントによっても投資手法やアプローチは異なります。特に住宅投資から拡張して商業不動産を視野に入れる場合には、難しさが出てくることは上にお話しした通りです。しかし、他セグメントから商業不動産投資へ参入する場合には、商業不動産に長けたアドバイザーや信頼できる管理会社を事前に探す事だと思います。彼・彼女から学びながら、細やかな体制で挑む事で、物件取得や運営管理も可能になるかもしれません。北米市場はサイズが大きな分、各セグメントで大きな可能性があります。それらを可能にして成功を収められることを切願します。
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KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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