現在弊社でもバンクーバーとシアトル用の四半期市場レポートを作成中ですが、大手不動産業界団体のNAIOPがオフィス市場の現状についてレポートをまとめ出版したので、それらについて今回は取り上げたいと思います。

1)北米オフィスワーカーの勤務状況

全米のオフィス市場は相変わらず、厳しい状況が続いています。コロナ禍が始まってから3年経ちますが、企業はやっと新勤務状態を考案し手探りで実践し出しています。業種によっても多少の差は存在しますが、ハイブリッドRTO(Required Time Off)が主流で週2〜3日の出勤を義務つけている会社が全体の約65%に達しているとの事です。同時にNYCのマンハッタンでは52%、ワシントンDCでは54%のみが定期的に出社しているとの事です。マンハッタンの場合には5日間毎日出社している従業員は全体の9%に止まっているとの事です。

2)コロナ後のオフィスに求められるもの

しかし60%の調査回答者は物理的環境が仕事の成功に影響しているとし、オフィスの重要性を強調しています。ただ、勤務時間の変化もあり、今までのような9−17時の定時勤務環境は「昔の事」と考えられ、社員の要望に沿った勤務時間スタイルが受け入れられつつあります。また、勤務環境のニーズも変化しており、今までの「あったらいいね」環境は既に「必須」条件になっています。その一つに、今まで仕事は「日々行く場所」であったのが、今では「する事」に変化しており、「目的地」というコンセプトが排除され「作業」として括られています。その中でも大きな必須条件は、場所と時間だとNAIOPリサーチは訴えています。現在の「新しい当たり前」環境では、仕事の為に1〜2時間かけて出社する時代は終わり、時間の有効利用が強調されています。また、場所という面では、アメニティー(設備的福利厚生)が強調され、レストランやジム、買い物や交通の利便性の提供が必須になっているとの事です。

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勤務環境面でも大きな変化が求められており、新ノーマル環境では個人のスペースとプライバシーを重視した環境が求められています。その一つにセルフケア施設の重要性が掲げられており、上記のフィットネスジムや女性用の授乳エリアをはじめ、瞑想用エリアやアウトドアラウンジなどが含まれています。

よって、雇用企業としても「仕事なのだから、与えられた環境で働くのが当たり前」という考え方は既に過去になり、社員も心地よく働ける環境を求めています。例えば、オフィス内のキュービクルではなく、ホテルのロビーの様な環境で心地よく働きたい要望が多く出ているとの事です。

3)賃貸借契約への影響

これを賃貸借契約の交渉時限に移すと、今まではテナントエリア内の工事はテナント主流で行われてきましたが、新規流れではテナントの期待も変化し、ビル所有者がデフォルトとしてアメニティースペースやテナントスペースを完了させる動きが進んでいるとの事です。テナントスペースのプレ工事は各テナントニーズが異なる為、どうなるか分かりませんが、バンクーバーにおいても共有アメニティーや設備の更新は大々的に行われてきています。

今後のオフィスの目的や必要性はさらに変化していくと思われます。

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