ワシントン州シアトルのマーケット情報
基本情報
ワシントン州、及びシアトルの概要
経済が躍進するワシントン州のエース、シアトル!
経済状況
ロシアのウクライナ侵攻によるアメリカ国内のインフレ率の上昇、金利の上昇、サプライチェーンの混乱はシアトルの経済成長へのシナリオをより予測しづらいものにしています。
2019年からのCOVID-19によるレストランや観光関連業への打撃は凄まじいものでしたが、2020年から2022年にかけて連邦からの3億2200万ドルの財政支援(City Budget Office)がシアトルの地域経済の回復を支えました。フィッチレーティングスもシアトルは高度な教育を受けた労働力と、ダイナミックなソフトウェアおよび航空宇宙産業によって支えられており、長期にわたる強力な経済成長および収益成長への期待がもてるとして、2022年の4月にAAAの格付けを発表しました。
また、Seattle-Bellevue-Everett地域の失業率は改善を続けており、COVID-19の影響で2020年の7.15%をピークに増加した失業者数も2022年には3.9%に低下し、景気は回復方向に進んでいます。(米国労働統計局)
人口に関しても、米国国勢調査2022年ACS(American Community Survey)5年調査によると、74万の総人口のうち13.2%と最も多い割合を占める年代は25歳から29歳で、30歳から34歳はそれに続く11.5%でを記録しており、労働力となる若い世代が全体のおよそ4分の1を占めています。
シアトルとアメリカ(全土)の平均世帯収入比較 2009-2019
世帯収入のトレンドも2011年から継続して上昇しており、アメリカ統計局によるとシアトルの世帯収入中央値は2021年時点で約97,000ドル(比較:NewYorkは約67,000ドル、サンフランシスコは約120,000ドル)です。粗利益率の高いIT企業とアマゾンがシアトルで多くの従業員を雇用していることも収入中央値を押し上げている要因の1つだと考えます。
ちょっとここだけの話
シアトルには公立のワシントン大学があります。一番人気の学部はコンピューターサイエンスだそうです。ワシントン大学のキャリア就職センターによると、多くの卒業生が卒業後も州内に残り、卒業後の雇用先トップ10にはAmazon、Microsoft、Boeing、Deloitte、Facebook、Googleが名を連ねています。職種では1位、2位をソフトウェアエンジニア、ソフトウェア開発エンジニアが占めています。
つまり、ワシントン大学のコンピューターサイエンスを学ぶために州内外からシアトルに学生が集まり、優秀な人材は卒業後にITのメッカであるシアトルの大手IT企業に就職もしくは起業をして高収入を稼ぎ、収入中央値が引き上げられ、その家庭の子供たちは高い教育と良い職に就くという良い循環があり、これは経済成長が今後も続いていくと予測できる1つの要因だと思います。不動産投資においては、大家としてもトリプルネットでこれらテナントから相対的に高い家賃収入が得られるというメリットがあります。
シアトルの経済状況
オフィス不動産市場
将来的な展望はポジティブ
シアトル CBD クラスA 賃料 (米ドル)
*データ:Colliers
空室率は2019年のQ1から2022年Q1にかけて10%から20%と緩やかな上昇推移を辿りました。ダウンタウンは依然としてビジネスの主要拠点ではありますが、金利の上昇を受けてオフィスへの投資はCOVID-19前ほど積極的には行われなかったと見ています。その代わり、ダウンタウンのクラスAの募集賃料については2020年Q1からの2年間で$55から$60の間で下降と回復を見せています。他のPioneer Sq、Belltown、Lake Unionエリアが軒並み下降トレンドを見せる中でダウンタウンのクラスAが堅実な募集賃料の推移を見せているのは、それらスペースの主なテナントがCOVID-19下で業績を伸ばしたITやライフサイエンスであり、さらに不動産や金融などが継続した需要でこれら募集賃料を支えたということです。また、Colliersによると、開発中の物件の76%がすでに予約契約済みもしくはすでに賃貸契約が開始されています。
シアトル CBD クラスA 賃料 (米ドル)
*データ:Colliers
吸収率については2020年にマイナス90,000平米を記録してから2022年にマイナス35,000平米まで回復を見せたものの、まだプラスには転じていません。2021Q4から現在に至るまで新規供給も行われておらず、賃料は$50台を維持していますが(1)金利上昇、(2)部分的なリモートワークの継続、(3)オフィス復帰の兆しに伴うIT需要の鈍化の点から、将来的なオフィス市場の展望はポジティブであるものの、シアトルダウンタウンでの活発なテナント誘致や需要回復にはもう少し時間がかかると予想しています。
*Colliers:Q1 2022 Seattle Office Market Report
インダストリアル不動産市場
質の高い物件に需要あり
過去3年のインダストリアル市場
*データ:Colliers
ピュージェット湾エリアのフレックス倉庫のトレンドですが、過去2年でどのエリアも賃料は上昇傾向にあります。総供給量の小さいPierce Countyを除いて、Seattle Close-in、East Sideでは堅実な需要が続いています。吸収量についても2019年には一時的にマイナス46,000平米を記録したものの、その後は新規供給量及び吸収量もプラスを見せています。
元々、知的産業が成長する前からシアトルでは製造業や小売業が盛んでしたが、そこへE-commerceの普及が追い風となり先進物流倉庫の需要も増えています。また、ライフサイエンスのテナントからは研究用途のスペースが求められています。そのため、彼らの需要を満たす質の高い物件の開発が望まれています。
過去3年のインダストリアル市場
*データ:Colliers
同エリアではおよそ68万平米(東京ドーム15個分)が建設中であり今後も需要に応えるように新規建設、もしくは既存物件への設備投資も継続して行われていくと予想できますが、Mortensenによるとシアトルの建築コストは2021年から2022年の1年で21.8%の上昇、材料費においては2年間で鋼材が37%の上昇、木材にいたっては152%の価格高騰が起きています。売却時、ダウンタウンにあるオフィス物件に比べると郊外の倉庫物件は相対的に土地価格が下がりますが、その分建物の価値が占める割合が増えます。これは我々のような改築専門デベロッパーの得意とするところですが、建築コストに圧迫されて起こるプロジェクトコスト全体の上昇は避けられません。利回りの高い改築物件、またはライフサイエンス等のテナントによる高い賃料によってこれら上積みされた建築コストの吸収は可能ですが、コスト吸収期間の長期化やプロジェクト期間中の更なる材料と労働者コストの高騰は高いリターンを求める投資家、デベロッパーの両者にとって重要な今後の課題になっていくと思います。
まとめ
オフィス: 豊富なテクノロジー企業に牽引され、良好なポジショニング。
オフィス市場の大部分を占める企業(アマゾン、マイクロソフト、メタ)は2022年Q1にフルタイム、もしくはハイブリッドでオフィスに戻り始めました。アルファベットとアップルはQ2から。シアトルオフィス市場の9.2%(約159,000人)に上ります。大企業の動きを見て、まだリモートを続けている中小企業も段階的に戻ってくることが予想されます。アメリカ全土の労働人口の3%がGreat Resignation(自主退職)したとAxiosの調査で示されていますが、将来的な労働供給予想では、シアトルはニューヨーク、ロサンジェルス、デンバー、ボストンの上にランクされており、豊富なテクノロジー企業環境の整ったシアトルのポジションは良好です。
インダストリアル: サプライチェーン問題にも関わらず力強い需要で空室率減少。限られた開発用地が課題。
ピュージェット湾の産業市場は、サプライチェーンの問題に関連する逆風に直面しているにもかかわらず、2022年に力強いスタートを切りました。この四半期に200万平方フィートを超えるスペースが吸収され、空室率は5.5%から5.1%に減少しました。現在建設中の最大のプロジェクトは、タムウォーターにあるコストコの110万平方フィートの建築物です。シアトルとベルビューの人口密集地の近くに新しい機能的な倉庫物件を建設するための土地が非常に少ないため、タコマの南、さらにはオリンピアでさえ開発が始まっています。スペースをめぐる競争の激化に対応して、倉庫/シェルスペースの賃料はシアトルクローズインで1平方フィートあたり1.30ドルに達し、前四半期から8.3%増加しました。