弊社の今後の方向性を先週のブログでお話しさせて戴きましたが、現在1254と1258 Frances Street物件について、今後のプランを検討中ですので、具体的な方向性が決まり次第また改めてご説明する事にしたいと思います。今週は今までとはまたちょっと違った視点で、「もしこれから起業を検討する場合」というトピックで、起業時の留意点や検討事項などについてお話をしたいと思います。起業と言う点ではどの市場においても、さほど変化はないと思いますが、このブログではカナダ・バンクーバーを取り入れてお話ししたいと思います。
私は不動産をしていますが、もし他の分野で専門性がある場合には、不動産での起業は避けると思います。私は不動産が大好きですし、遣り甲斐があり面白く夢がある仕事だと個人的には思っています。しかし、皆さんもご理解頂ける様に、資金面でとてつもなく桁が大きく、時間もかかる仕事です。バンクーバー市場の場合、物件サイズや資産のレバレッジなどを考えると、自由にプロジェクトに取り掛かるには$10MM(約8億5千万円)を最低必要資産金額として考えるべきです。$10MMスケールだと、個人投資家には少々大きすぎ、機関投資家には小さすぎる値なので、ニッチ(隙間)として、活動することが可能になります。同時に、複数のプロジェクトが遂行可能になり、再開発の場合でも投資家抜きの自己資金のみで着工が可能になります。また、バンクーバーの様な売り手市場(最低でも現状は)の場合には売り物件が希薄ですので、贅沢を言っていられないのも現状です。また、この熟成市場では、参加者の経験は豊富で、多くの投資家の懐は深く、妥当なタイミングまで待つ事が可能な購入者も多くいます。よって、プロジェクトを成功させる為には、スキルや経験が求められます。しかし、歴史的には、空室率が高く、参加者が限られていた為に、提供物件の選択肢は限られており、バニラアイス味(工夫がない普通の物件)が多かったのも事実です。よって、私の様に不動産業界参加者にとっては、バンクーバーの不動産業はのり代幅がまだまだ広いチャンスある業界だと思います。
さて、少々逸れましたが、トピックに戻りたいと思います。起業する上では複数の判断重要点が存在しますが、今週はその中でも次の3点についてお話ししたいと思います。1)初期投資の少ないビジネス、2)アイディアにおける起業、3)少人数で対応可なビジネス。
1)初期投資の少ないビジネス
どの様な企業の起業でも、資本金が当初から豊富にあるケースはレアだと思います。よって、読者の起業家の皆さんも同じ意見だと思いますが、起業は小資本金で始められれば始められる程ビジネスプランとしては有望だと思います。必要資本金(=固定費)が少なければ、企業継続の可能性も高くなり資金調達に走り回ることも軽減できます。結果、事業に集中出来る様になります。例えば、コロナ前にオープンしたレストランのシェフとその頃話をしていたのですが、バンクーバーにおけるレストラン開業には約20万ドル(約1,700万円)かかるそうです。これはお店内の準備資金のみで、この上に場所や従業員の確保などにも資金を考慮しておく事になるそうです。もちろん銀行などからの融資が可能になりますが、レストランの開業以前にメニューも受け入れられるかもわからない状況でこの様な高額の資産投資には相当な覚悟とコミットメントが必要になると思います。例えば、20万ドルのうち、70%を借入できたとして(実際のところ何%借り入れ出来るのかも分かりませんが)、5%の金利では、月々の返済が$3,400になります。各客が$40払うとした上で、40%のマージンと考えると、月々約210組必要になります。24日間の営業と考えれば、それほどの負担ではないかも知れませんが、これはブレークイーブンする(家賃、材料や従業員のソフトコスト前)金額ですので、初期投資が多い場合の影響が少しでも見えてくるのではないでしょうか?起業当初は事業の軌道載せと安定化が優先事項になると思いますが、資本注入額が大きければ、同等にもしくはそれ以上に返済方法に焦点が向いてしまい、起業の意味を失いやすくなってしまうと思います。もちろん、軌道化と支払いは同線上に存在する項目ですが、返済重視になる事で、長期的経営重視ではなく、短期的経費支払いに視点が行ってしまうかもしれず、目的が混乱しかねないと思います。
2)アイディアにおける起業
「アイディアにおける起業」と言っても、分かり辛いのですが、ここで申し上げるポイントは既存事業(システム)の改善ではなく、独自のアイディアをベースとした起業です。既存製品やサービスのプロセス向上(改善)における起業も機会は存在すると思いますが、この場合の競争上の優位性(Competitive Advantage)は常に改善を迫られ、既存の市場シェアの割合をどうやって増やすかになります。また、発案者の商品コピーなどの戦略では常にフォロアーになり、ご自身の企業の将来性も第三者に委ねることになってしまいがちです。その上、特許や企業秘密などが存在する場合には、戦略的にも痛手を負ってしまいます。もちろん、Blue Ocean(新たな市場)を既存の市場から作り上げる事で、これら問題を回避する事は可能になり、新規市場の構築に繋がります。
しかし、自分のアイディアであれば、商品やサービスの研究努力は常に必須になりますが、フォロアー企業に対しての先行者利益が存在する為、成長カーブ上でも優位になるはずです。また、上でも触れたBlue Oceanを既存のシステムから開発も、発明者であれば、他のフォロアー企業よりは容易に出来るのではないかと思います。ですから、起業当初の自社が軌道に乗るのも大変な時期に競争相手を避けれるという意味でも、プロセスの向上からくる起業ではなく、アイディアをベースとした新規事業立案の方が将来的継続と安定を可能にしてくれると思います。
3)少人数で運営可能なビジネス
各企業において人件費は固定費の中でも大きなシェアを取っています。なので、起業当初の一番事業が不安定で資産の維持が重要視されるべき時期に人件費が多い事は、開業の妨げになってしまいます。北米企業でも人件費は固定費の約50~60%前後(税金や福利厚生費を含め)を占めています。そういった面でも、少数で起業出来る事業は固定費削減が可能になるので、資金繰り上とても魅力的です。例えば、起業当時は創設者が睡暇も惜しんで長時間勤務する事で資金への負担を軽減し、企業を軌道に載せるなどよく聞く話です。余談ですが、私の場合、かれこれ9年間人を雇うことを拒みました。従業員を雇うのは簡単で、事業の一定の成功の証になるかも知れませんが、継続して働いて貰う、そして継続して給料を支払う責任がとてつもなく大きく、最大のプレッシャーでした。ですから、実質上は数名分の仕事量で80時間近く働いても終わらない勤務体制でも、全て一人でこなしてきました。今となっては、助けてくれる社員がいることで、あの一人の時代はどうやってこなしてきたのか不明な程です。
また、ITなどでは当初はコンピューター一つでプログラムを書いたり、運営は他社のサーバーを借りたりする事で、事業負担を軽減することが可能です。バンクーバーでも一目を浴びている業種のIT(IoT)などでは、多くが自分の家で一人若しくは数人で起業し、事業の存在を可能にしています。
経営面上からも少人数体制は企業管理面でも大切だと思います。急成長し過ぎたIT企業が業務管理不可能と言うことで、閉鎖すると言うのもよく聞く話です。当初は自分たちの仕事が多忙すぎて、社員の仕事まで管理する余裕がないのが現状です。もちろん、成長にも制限を植えつけてしまいますが、統一した企業を運営していく為にも、人材管理と業務管理が行き届いた状況を構築するのは(よって、少人数体制)、将来の成功と企業継続の為にもとても重要なことだと思います。もちろん、この様な管理体制導入のための雇用かも知れませんが、それでは冒頭の人件費の高騰になってしまい目的が矛盾してしまうと思います。
今週は起業する上での最初のポイントについてお話ししました。少しでもヒントが得られる内容であれば嬉しく思います。
関連ブログ
第101話「起業について: 北米で新規企業を起業するなら 1」
第102話「起業について: 北米で新規企業を起業するなら 2」
第103話「起業について: 北米で新規企業を起業するなら 3」
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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