先週から「起業するなら」というトピックでお話を始めましたが、今週は起業した事業の継続を見据えた上での起業についてお話したいと思います。私が考える上で、事業継続上の重要点は、マーケットシェアの拡張、社内体制の確立と資金繰りだと思います。もちろん、ここに挙げる点が全て網羅している訳ではありませんが、何かのお役に立てればと思っています。これらの点を考えた上で、今週は次の点についてお話ししたいと思います:1)市場に左右されない、2) 見えるマトリックス、3)収入とのり代について。

1)市場に左右されない

この世の中にはいろいろな商品やサービスが存在していますが、どれ程が市場や各社会の文化に影響される事なく浸透する事が出来ているのでしょうか?例えば、レストラン業界でも多数の異食企業が(ローカル、グローバルに関係なく)各市場に出てサービスを提供しています。バンクーバーのモールなどでも、ハンバーガー系はもとより、中国系からインドや韓国系など幅広く提供されています。また、日本のユニクロはまだ進出して日が浅いですが、既に人気ブランドの一つに定着している様です。雰囲気的には「何処(どの国)のブランド?」というより、消費者の生活に役立つもの(需要を満たすもの)なのかが購入判断の様です。よって、同店のサイズ基準やデザインや、フードコートの味付けもそうですが、現地化(どの市場でも受け入れられやすい)していると思います。

また、IT(IoT)企業などでも物理的市場に制限なくサービスやシステムが提供されています。不動産でも細かいところでは各市場によって異なりますが(例えば融資条件や賃貸契約書の内容など)、基本的には西洋ベースの市場であれば進出は可能です。この様に地域に関係なく進出出来る業態(もしくは順応性があるビジネス)はビジネスの継続と成長には必須だと思います。また、この様な順応性はリスクヘッジとしても役立つので、多市場対応型ビジネスを作り出す事は継続上の安定を提供してくれると思います。

2)見えるマトリックス

企業成長で重要な点は、社員の満足度と正当でフェアな人事評価だと私は思っています。その為にも人事評価やプロジェクト評価には全員が明確に分かるベクトルで記されるべきだと思います。上記の様に他市場に進出する場合は、文化や人種的にも異なった従業員に対しての評価を行う可能性も出てくる事から、項目もフェアでビジネスライクに留めておく事は必須です。カナダではそれほど聞きませんが、アメリカの場合には人事評価や個人の尊重(性的、人間性などなんでも)がされていないと感じられれば、すぐ人事マターになり、裁判に発展しやすいです。30年ほど前、シアトルの枡田のオフィスでも同性愛者の女性に対して年配男性上司がハラスメントまがいなコメントをしたために弁護士が関わる羽目になったと聞いています。そして、この様な状況では、雇用者側が自分の立場を守るための立証義務を追われてしまいます。

話しがネガティブになってしまいましたが、私は人事評価というのは、社員の成長を促す為の確認方法だと思っています。そして社員が企業で最も重要な資産だと考えている為、その人材を最も有効的かつ効率よく働いてもらう為にも、評価マトリックスは社員が納得するフェアなベクトルで行われる必要があります。各自が納得しやすい方法とは「見える」評価です。

3)収入とのり代

第3の企業成長と継続の為には、業態に十分なのり代が存在する事だと思います。例えば、IoTなどの様に大きな利幅見込みが存在したり、不動産の様に賃貸からの収入と物件売却からくるキャピタルゲインが可能である事だと思います。または、通常の運営からくる利益の成長が可能で、そこから店舗や市場の拡張を可能に出来る事業体制と業種選びが重要だと思います。その点、弊社も不動産業務を営んでいますが、デベロッパーはプロジェクト遂行中、基本的に収入がありません。2年とか3年後には大きな収入が見込まれるものの、その期間中の収入がゼロというのは、残念ながら時間と金銭がフル活用出来ていないと思っています。本来は冒頭の様に、賃貸収入からの現金収入と開発プロジェクトからのキャピタルゲインの両立が好ましい姿ですが、弊社の現状ではさらなる投資と事業拡張を可能にする為に、キャピタルゲイン戦略に集中していますので、両立はまだ可能な状況でないのが現状です。また、不動産は資産集約度が高い為に起業には選ばない業種だと先週申し上げたばかりですが、キャピタルゲインを可能にする資本源を確保するのも起業したてのビジネスには難しい事です。

製造業やレストランなどのサービス業でも、設備は減価償却と共に目減りしていくのが通常です。減価償却は会計上の項目ですが、資産価値と機能面でも修繕などによる継続した資産の注入が必要になります。よって、事業拡張にはこれら項目を見据えたのり代を確保する必要があります。また、グローバル化が進む中、懐が深い起業の方が柔軟性や行動力も持てる為、起業したての企業がグローバル市場に参入して市場の確立を挑むのは至難の技です。起業社の財力のみならず、経営力やニッチ(隙間)の確立も重要な事業継続のポイントだと思います。

資金面では日々の収入が経営を安定化するだけでなく、常に将来的成長を可能にする財務基盤とのり代が重要な項目だと思います。これを可能にする為にも業種の選択は重要だと思いますが、経営手腕なども大きく問われるポイントです。最終的には、すべてを総合的に見て将来的成長ののり代が確保できるのだと思います。

今回は起業したのちの成長と継続を可能にするという視点から私の意見をお話しさせて頂きました。読者の皆さんは他にどの様なポイントをお考えでしょうか?

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