先週まではカナダを中心としたコロナの状況についてお話をしてきましたが、今週はこのコロナに対しての政策や対応策で見えてきた各国の人間性について感じたことをお話ししたいと思います。今回もいつもの様に私の個人的客観的な意見ばかりですが、カナダ、アメリカと日本の3国についてはメディアから伝わってくる違いについてお話したいと思います。
1)カナダとアメリカの違いー政府の支援
日本から見ていると、アメリカの存在が大きい為にカナダとアメリカの文化や風習的な違いが明確では無いかもしれません。アメリカ人にはよくカナダはアメリカの53番目の州(注:アメリカには50州ありますが、それにワシントンDCとプエトリコ地区を足してます)とか「北の庭」など言われる事もあります。しかし、今までのブログでもお話ししてきた様に、カナダという国はイギリス的風習を多く含み「輪」を強調する古き良き田舎国民という感じです。それに対して、アメリカは多くの方がご存知の様に、個人の権利や自由が社会の繁栄の前に強調される国です。これら歴代的差は今回のCOVID-19(コロナ)に対する対応策では大きな違いが出ています。例えば、政府の政策面から話すと、アメリカではCOVID-19関連の助成金はなく、あくまでも個人の成功は個人の自由と責任からという考えを再認識させている感じがします。よって、通常は現金収入リッチな企業であっても、今年の状況では現金の収入も減少し、政府からの助成金なしでは経営が困難な状況に追い込まれている企業も多い様です。
例えば、私の知人はアメリカ西海岸の某都市で市内を一望出来る人気の観光船会社を営んでおり、客船も数隻所持し、数十億円相当の売り上げを毎年安定して稼ぐ企業でした。しかし、今年のCOVID-19の影響で強制営業停止や観光客の激減により、政府からの助成金もないまま企業精算に追い込まれてしまいました。今までの経営実績は瞬く間にすっ飛んでしまいました。弊社は彼の観光船会社に比べると断然小さく、彼の会社ほど大きな収入もありません。しかし、カナダの場合には、連邦政府からの助成金も以前のブログでお話しした様に複数提供されており、これら支援策により経営的にも問題なく継続できています。また、弊社の場合には長期不動産融資を活用していない為に申請不可能でしたが、カナダでは不動産融資における金利分の支払い免除や減額のプログラムが連邦政府主導で導入されています。
アメリカ政府の努力もフェアにお伝えする為に、小企業や従業員への財政的支援策は提供されている様ですが、インターネットを調べる範囲では雇用に対しての助成金だけで企業への運転資金の補助金などはない様でした。カナダでも過去のブログでお話しした様にCanada Emergency Wage Subsidyなどで従業員への給料援助政策が提供されています。同時に、カナダにおける雇用の場合には、毎年「離職年金」の積立を行うか、離職時に同額の支払い義務が発生します。現在の状況下でレストランなどでは、積み立てをせず一括現金払いをする所が多いそうなのですが、この金額が払えない為に、解雇ではなく一時的な「休暇」を与える形を取って時期を凌いでいる雇用者が多いそうです。しかし、長期間における「休暇」処置で従業員の生活が脅かされる事から、長期「休暇」は退職とみなされ、退職金の支払いを命じる報道がこのほど発令されました。これにより、被雇用者の生活はある程度守られましたが、レストランなどは一層深刻な状況に追い込まれ、過去のブログでお話しした通り、閉鎖に追い込まれるレストランやリテール店舗が増しています。カナダでは他の助成金が存在しますが、レストラン業界などは助成金への申請が不可能なお店も多く、メディアでは遅すぎた役に立てないプログラムとして批判を受けた一面もありました。
2)カナダとアメリカの違いー国民性
私生活面でも違いは明らかだったと思います。人口の差から来る感染患者数の違いは存在しますが、多くのカナダの都市(大小様々)では非常宣言が発令され、行政を含む全ての街の機能が中断しました。アメリカでもニューヨークなどを始めとする大都市では外出禁止令が発令されましたが、アメリカとカナダではコロナウィルスに対しての考えでも根本的な違いが出ていたと思います。例えば、マスクの着用ですが、アメリカでは個人のマスクを付けない自由(選択の自由)が優先されていたと聞いています。カナダの中でも装着していない人もいましたが、基本的には社会的責任や感染の制限と言った、社会的国民の責任が報道でも優先され取り扱われていたと思います。
この様な「個人」対「社会」という面では、ナイアガラの滝の観光船の乗船数もインターネットで大きな話題になりました。ナイアガラの滝はアメリカ側とカナダ側の両方からそれぞれ観光船が出ており、各国側から滝を見られる様になっています。観光船の大きさも殆ど同じで、人気度も同じです。しかし、アメリカ側の観光船は50〜60人ほどの通常定員数で運行されていた様ですが、カナダサイドの観光船は政府の制限発令も含め、一隻に6人のみ乗船させていたそうです。ビジネス的に元が取れていたかは別として、この結果的なアプローチの差には国民性が出ていたと思います。
バンクーバーに一番近いシアトルでも、レストランや店舗は営業を再開できる様になっている様ですが、バンクーバーや日本同様にテーブル間の間隔を保つことや、買い物の場合はマスクの装着を義務付けているそうです。
カナダとアメリカの国境は継続して閉鎖しており、必要物資以外の出入りは基本的に不可能な状況になっています。これにはカナダからの要請が強い様に思えます。そしてカナダとしては当分の国境再開は拒否しています。
カナダの現状は4段階中3段まで回復しており、夏の観光シーズンを迎えると共に、行楽地への人も多くなっているのも現状です。4段階目の完全復帰にはコロナ克服が必須になります。よって、完全回復は当分見込めない状況です。しかし、秋口から冬にかけて、COVID-19の第2波の到来が懸念されている中、少なくとも過半数のバンクーバー市民は再度の完全閉鎖を支持すると世論調査結果が出ました。アメリカの世論傾向は分かりませんが、日本の場合ではすでに街の完全封鎖は必要ない(もしくは不可能)とされている様に思えます。日本の場合には、人口に対しての感染者数が低いという結論の様ですが、行政のリモート勤務や自主隔離促進とは裏腹に、リモートのマイナス影響などと題したメディアや記事を目にする感じがします。しかし、そう言いつつも、日本の現状は多くの人がマスクを被っており、距離に気をつけて、外食なども大きく控えられている様に感じます。
3)まとめ
今回のCOVID-19(コロナ)の影響は世界全土に出ており、カナダをはじめとするアメリカや日本でも深刻な対応がされている様に思えます。今回は表面的な状況をお伝えするだけに留まってしまいましたが、各国の違いについてお話ししました。この先の秋口ごろから懸念される第二波の到来を考えると更なる深刻な対策を虐げられる可能性もあると思います。多分、来年の春口にワクチンが開発されるまでは、慎重な体制が継続するのではないかと考えています。
皆様もご自愛下さい。
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第105話「COVID-19の影響とバンクーバー不動産市場への影響」
第106話「COVID-19の影響と仕事の現在と将来」
第107話「COVID-19の影響と各国の違い」
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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