今までカナダを中心に書いてきましたが、読者の中には、日本やアメリカの不動産については理解はあるものの、カナダのことは知らないという方もいらっしゃると思います。そこで今回はカナダとアメリカの不動産業界について(特に融資について)比較をしたいと思います。

基本的な融資をつけて物件を購入する、レバレッジの有効活用では、北米両国において考えは同じです。ただし、違いを一言に纏めるのであれば、アメリカの方が「柔軟」という事でしょうか。アメリカの金融市場が不動産を金融商品と捉え、多数の不動産金融商品が生み出されてきたのは皆さんもご存知だと思います。しかし、その反面で、商品には国民性も反映し、アメリカの不動産関連金融商品は柔軟性がある反面、リスクを伴い、自己責任の追求が、カナダより一層増していると思います。

では、一歩下がって基本的な違いから抑えていきましょう。主な違いは、1)市場性、2)社会性、3)安定性です。

1)市場性

市場性としては、アメリカの金融市場の方が投資家にとっては、都合が良く、提供されている商品の幅も大きくあります。例えば、アメリカでは購入に対しての融資率(Loan to Value率)は、商業物件に対してでも、70~80%という物もあります。もちろん、融資率が高くなるほど、金利も高くなりますが、カナダの場合には一般的LTVの上限は60%なので、この様な商品が存在するということが大きなメリットだと思います。また、カナダで60%以上の融資率を獲得するには、相当な信頼と実績がある企業でなければ無理ですが、トップレーティング企業でも、70%を超える事はありません。また、アメリカではノンリコース・ローンが主流ですが、カナダではほとんど全ての融資がリコースローンで、債務放棄をする事も出来ません。その上、非上場企業に対しての融資には個人補償が伴うのが普通です。

また、メインからの資金調達率が低い分、カナダではメゾニン若しくは個人富裕層が集まって出来た融資グループなどが、第二融資を提供する事も多くあります。アメリカでもメゾニン融資はありますが、元から融資率が高い為、メゾニンは「超」ハイリスクローンとみなされますが、カナダでは60%以上80%未満ぐらいの銀行がカバーしない範囲を一般銀行金利の倍ほどの率で短中期取り付けてくれます。これらメザニンローンは二番手になりますが、銀行などもメザニン参加に慣れているので、参加を許可してくれるのが一般的です。

2)社会性

また、カナダではアメリカの様に債権回収に対して、積極的ではありません。債権者も自主的にリコールし、資産を処分して、融資額を取り戻すというのは、懸命なビジネス・プラクティスとしてみていませんし、金融機関の株主に対しても、同じ考えです。それ以上に、回収は社会的にもイメージダウンと考えられています。カナダでは事前審査と融資率を下げる事で、債務者の満期支払いを求める形を取っています。結果、債権者による自主的債権回収は全体の5%ほどに留まっています。よって、カナダでは、貸す方にも、借りる方の返済の能力を見分ける義務があると考えています。

また借主としても、債権者に迷惑をかけてはいけないという、ちょっと日本的な考えが根付いています。もちろん、債務不履行では、次回から貸してもらえないという可能性を危惧しての考えもありますが、人間としての「借りたものは返す」という考えも強くあります。これはカナダがつい最近までイギリス領土であった事が大きく関連していると思いますが、イギリスの「紳士的な振る舞い」を強く求める姿勢が反映していると思います。その証として、昨年中国の金融機関が、融資を踏み倒してカナダに逃げてきた中国人債務者を、BC州最高裁で訴えた件では、BC州最高裁は習慣を原点としたCommon Lawで、債権回収のための債務者所有物件の強制売却を認めています。余談になりますが、現在も多くの中国マネーはグレー若しくはブラックでカナダに入ってきている為、今後はこの様な裁判が多く出てくるだろうと、関係した弁護士事務所は話しています。

3)安定性

上記からもお分かりの様に、カナダのリテール融資市場はとても保守的で安全性第一に掲げたものだと思います。融資率が低い分、支払いを確実にし、流動性を維持しています。これには1980年代のハイパー金利時代が歴史に残っており、その頃の18%ほどまで上がった金利で、債務不履行になった債務者も多く、カナダには金融市場としての魅力が全くありませんでした。その教訓から学び、現在のカナダの信用格付はS&PでもAAAを維持しています。(BC州もAAA)また、リーマンショック時も、カナダ中央銀行は数時間内に膨大な資金流入で国内金融市場の安定を図りました。その結果、アジアやアメリカで起った金融危機は全く起こらず、安定した市場の継続を可能にしています。

現在の融資市場は活発で、60%までのLTVで既存物件の購入であれば、プライム+1.0~1.25%(約4.5~4.75%)で5年の固定金利の借り入れが可能です。また、申し込みから約3週間ほどで現金受け取りが可能です。

次回は不動産物件レベルでの違いについてお話ししたいと思います。今週も皆さんに新しい知恵とチャンスが到来します様に。

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