今週からまた不動産の方に焦点を戻してお話しして行きたいと思います。私共としては、不動産も家業のアドバイザリーやリーダーシップ育成などと同じ様に根底には人間が鍵を握ると思っていますので、今後も色々なトピックでブログを提供していければと思っています。なので、「こんなトピックを!」というものがあれば是非ご連絡ください。
今週は1270 Frances Street再開発を目的に購入した3つの物件(1270, 1258, 1254 Frances Street)のひとつである、1270 Frances Street物件についてお話ししたいと思います。この物件は2020年9月11日に売却が終了しました。価格は$4,250,000で、購入価格の$3,850,000を上回る形で売却を終了する事が出来ました。この物件の売却プロセスはとてもシンプルなものでしたので、今週は1270 Frances Streetを通じて一般的な売却プロセスについてお話ししたいと思います。
1)準備
どの場合でも同じですが、売る場合にはまず仲介に連絡をして、物件の市場査定を行い、販売価格を確定することです。もちろん売主自ら市場査定を行い、売却価格を決める事も可能です。売主が仲介に代わって販売することで、販売手数料の3%が節約出来る事になります。例えば、3百万ドル(2.55億円)の場合には、約9万ドル(765万円)にも及ぶ金額になり、金額的な節約は大きなものになります。ただ、仲介のネットワークを取り入れて販売した方が、幅広い購入候補者に宣伝が可能になる上に、仲介の方が一般的に市場情報や価格に精通しています。また、仲介を使うことで、買主や買主側仲介にも安心を与えることに繋がり、物件としての魅力も上がるのは事実です。実際のところ、商業不動産取引では殆ど(もし全案件でなければ)の場合に仲介業者が入り、行われています。弊社も10年の間で仲介のついていない物件に遭遇したのは、一度だけでした。この場合にも、信頼性や作業スムーズさを考え、この物件を購入候補から外しました。
また仲介業者を取り込む理由には、マーケティングは材料費などを含め全て仲介業者負担が一般的です。そして、業者として専門のマーケティング部を抱えている場合が殆どですので、構成や仕上がりも納得がいく高品質な販売資料が用意されます。勿論マーケティング材料は外注してもそれほど費用がかかるものではないかもしれません。ここでの仲介を使う利点はその手間と仕上がりもそうですが、配信先のネットワークが常にアップデートされていて、我々の情報網にはない配信先情報を仲介業者は持っているというところです。
弊社の今回の販売にはいつも頼りにしているColliers International社に依頼をして販売作業に挑みました。1270 Frances StreetではCOVID-19(コロナ禍)の最中ではありましたが、3月9日に仲介と独占販売契約を結び、3月21日には今回の購入者からオファーが入っていました。仲介業者がパンフレットのデザインと作成、一斉のチラシ巻き、問合せに対しての対応やフォローアップを行い、我々は随時マーケティング活動の状況報告を受け取るだけでした。
今回の契約に対してのネックになったのは、引き渡しまでの期間でした。コロナ禍もまだ始まりだした頃だった3月では、行方が明確でなく、物件調査なども出来るのか状況がはっきりしていなかったこともあり、デューデリには3ヶ月かかり、その後のクロージング(引き渡し)までには2ヶ月間が投与される形になりました。以前のブログでもお話しした様に、通常は1ヶ月・1ヶ月の計2ヶ月が一般的期間ということを考えると、今回は本当に長かったです。しかし、その時には今後の状況が全くわからなかったので、同意するしかなかったというのが本音です。
2)デューデリジェンス
売主側としてのデューデリ作業は殆どありません。弊社も今回は今までの書類を準備し、それを買主側に提供するのがデューデリ作業でした。北米の物件売買の場合には、物件の床面積を売買契約書に書き入れる事はしません。こちらでは買主の自己責任で執り行う作業の一環になっています。なぜ書き込まないのか?それは、もし床面積が違っていたら、全契約書が無効になってしまうからです。放棄出来る事が場合によっては都合の良い時もありますが、その様な状況を加味して、契約書には、双方が契約を放棄できる条件と期限が記載されているのが一般的です。
脱線しましたが、デューデリの話に戻ると、この期間中には買主の方から色々な問い合わせや情報開示要望が来ることも多々あります。しかし、ここでも仲介の方でまず対応することになっており、我々売主にまで当初の書類引き渡し以降の情報開示依頼はほとんど来ません。今回も数件あったそうですが、全て仲介の方で契約書に則って開示するべき情報だけを開示した旨を伝え、対応してもらっていました。(これも全て後日の話で報告を受けただけに終わっています)
よって、売主にしては、この期間はひたすら待つだけになります。
3)クロージング(引き渡し)
引き渡しまでの期間においても、売主で行う事は少なく、殆どが弁護士間の作業になります。よって、以前の不動産バブル絶頂期ではクロージングも2週間というディールもよく聞きました。以前のブログでもお話ししましたが、弁護士が全ての書類を用意できるのが10日間ほどかかってしまう為、経済上の条件というよりは弁護士間の業務上の必要日数という意味で2週間は最低限期間として暗黙の了解があります。
この期間までに弊社としても全ての支払済勘定を弁護士に渡す必要があります。例えば、固定資産税の払いや賃貸契約書上のテナント工事や仲介手数料に対しては、売主に(減価)償却されていない部分が払い戻しされる事になります。今回は空き家状態での引き渡しでしたので、払い戻しは固定資産税の未償却分だけでした。
また、今回は銀行融資の返済と融資の一部継続ということが行われました。今回は再開発を目的とした購入だった為、1270 Frances物件の融資は隣筆の1258/54 Frances物件と合わせて融資契約されていました。しかし、幾ら地価の上昇が著しいバンクーバー市場であっても、2年間で地価が倍になる事はあり得ません。よって、今回の返済では販売価格の90%を返済に当て、残りの融資額を含めた融資額割り回しをしてもらいました。ですから、この場合もビジネス上の交渉はなく、弁護士間での契約書のやり取りで決め纏まりました。
よって、クロージング(引渡し)では、不動産売買面での弊社と購入者との引き渡し、そして売却に伴う融資の返済を行う弊社と銀行間の取り交わしという、2つの部分から成り立つ引き渡しになりました。また、実際の引き渡しは前日までに金銭の入金を確認してから行われます。アメリカの様なエスクロー会社を使うシステムではなく、当事者間(弁護士間)で金銭の動きを確認するのがカナダの方法になります。その上でも、弁護士の働きと存在は重要になります。
一度全ての書類に署名すると、当日の入金を確認し各弁護士が双方の署名を確認した上で、弁護士が不動産登記内容の変更申請を行い、売却プロセスは終了します。また、登記簿申請は即日には認められないので、数週間後登録変更が確認出来た所で弁護士がクロージングドキュメントを全て纏め、売主に送ってきてくれます。これにより、売却プロセスは終了する事になります。
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第62話「Frances Streetプロジェクトのアップデート – 投資家に対してのマーケティング」
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第64話「Frances Streetプロジェクトのアップデート – 投資プロジェクトとしての中間報告」
第97話「Frances Street Projectの状況」
第115話「1270 Frances Street売却について」
第116話「1254・1258 Frances Streetの売却プランについて」
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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