今週は1270 Frances Street再開発を目的に購入した3つの物件(1270, 1258, 1254 Frances Street)のひとつである1258 Frances Streetと1254 Frances Street物件の今後の方向についてお話ししたいと思います。
これら二物件は同筆で登録されている物件です。元々は別筆であった為、行政に再度別筆する可能性を問い合わせしてみましたが、用途規制が変更され、元に戻す事は出来ませんでした。小ロット物件は販売価格的にも幾分のプレミアムを足すことが可能になり、買手層も増えるので、別筆販売の方が条件は好ましくなりますが、今回は1254 Frances Streetと同時進行で売却準備を行い、両物件を1パッケージで販売する事にしました。
1)1258 Frances Streetと1254 Frances Street物件
1258 Frances Streetは以前取りかかった704 Alexander Streetの様な8.25メートルの横幅に奥行きが38メートルと言う長方形の土地をフルに活用したシンダーブロック(建築用軽量ブロック)製の典型的倉庫物件です。築面積は約3,653平方フィート(約340平米)と704 Alexander Streetの約6分の一のサイズですが、事務所部(一・二階部から成り立つ1600平方フィート(150平米)と倉庫部分(2050平方フィート(190平米))で構成されています。割合的にはバランスの取れた製造工場的倉庫になっていますが、内装の一体感はありません。天井の高さ(タパ)は24フィート(約7.2メートル)あり、倉庫としての利用価値は十分存在します。その上、2階事務所内にはフル装備キッチンと休憩エリアが壁上部半面に取り付けられた窓に対面して設置されています。従業員の休憩場としては魅力あるエリアだと思います。洗面所にはシャワーも設置してある為、改築を行う時に義務付けられるであろう、身体補助が必要な方のための設備条件も整っています。
逆に1254 Frances Streetは表記写真からも分かるかもしれませんが、一番右の建物で、一見すると屋根もそれなりに高い感じに見えますが、実は天井の低い三角屋根構造になっています。その上、物件の後ろ半分は違法建築が施されており、この現状では最高額の利益を求めるのは不可能です。当初は再開発を前提にしていたので、この様な違法建築も解体する事で除外できると思っていましたが、再開発を中止し販売に重点を置くと、この状況は目の上のタンコブ以上です。
2)販売戦略
色々検討した結果、今回は1254 Frances Streetを解体して更地にした上での、倉庫と空き地のセットで販売する事にしました。通常では、更地にする事で、大きなコストがかかるばかりで、売値にマイナス影響を及ぼしますが、以前からもお話ししている地価の高騰が激しいバンクーバー市場では、この原理は値しません。逆に解体して、更地という複数の可能性を秘めた「土地」にする事で、購入者の使用用途は膨らみます。因みに、2017年から2018年には35%;2018年から2019年には25%の固定資産税用の地価査定の上昇が見届けられました。2019年から2020年はコロナ禍の影響もあり、6%に終わっていますが、同期間中のバンクーバー市内の物件の平均上昇率が-2%だったことを考えると、この東バンクーバー地区の需要は今後も継続するものと考えています。しかし、保持するだけで地価の上昇で稼ぐのでは、不動産投資屋の名が廃ると言うものです。我々としても面白くなく素直には喜べません。よって、柔軟性をいかして更に価値を上げる意味でも、今回は解体してオンリーワンな物件として売却する事にしました。
地価の高騰が激しい中で、バンクーバーの行政は如何なる改築や再開発でも駐車場の設置(確保)を義務付けています。再開発の場合には、取り壊して地下に掘れば良いのですが、改築の場合には既存建造物を壊して駐車場を確保することは不可能になります。また、この物件が所在する東バンクーバーエリアは未だ軽工業地区になっている為、更地の荷下ろし場や駐車場の需要が高く存在しています。また、これだけ地価が高い為(約$760平方フィート(694,000円/平方メートル))、更地は殆ど存在していないのが現状です。
さらに、1254 Frances Streetの更地に対しての価格は行政の固定資産税評価額を持ち入ろうと考えていますが、固定資産税評価額は一般的に市場価格より低下する為、販売価格としてはまだのり代が残っているのではないかと考えています。よって、多少の時間をかける事で、多種多様なマーケティングが可能になると考えています。
しかし、当初の購入融資はこの全二筆三物件に対して担保が掛けられた形になっており、9月半ばの1270 Frances Street売却では、全金額の払い戻しを請求され、ほとんどの融資支払いを済ませた為に剰余金が当初の予定ほど残っていません。よって、弊社としては、効率的に早い段階で1254・1258 Frances Streetを売却する為に、納得のいく価格設定で契約締結を進めていこうと考えています。
3)解体申請から分かった事
また、このプロセス遂行の為には、解体申請を行政に申し出る必要があり、再三にお話ししているバンクーバー市行政の遅い対応には時間がかかることが予測されます。よって、現在から準備を始めたとしても、申請許可が降りるのは11月になる見込みです。その後3週間ほどの解体期間が要され、最終的には12月後半(もしくは2021年1月)の完了になると見込んでいます。
この解体申請から分かった事は、電力供給が解体しようとしている物件に主供給線として入ってきており、そこから枝分かれして1258 Frances物件(2階建て倉庫)に供給されていました。よって、解体に備え、この配線を1258の方に移動する必要が出てきました。現状の供給電力システムは旧型で新規配電線にアップデートする必要が出てきてしまいました。現在は新規配電線を載せるキャパが物件に一番近い電力会社の分電盤には残っておらず、現在電力会社の方で移設を検討してもらっているところです。この物件では、一難去ってまた一難という感じですが、戦略変更がもたらす影響を目の当たりに日々学んでいます。
マーケティング的には、我々が考えている価格に理解を得る為と、この物件が唯一の稀な物件である事を市場に示す為にも、販売は解体開始後に始める予定です。解体を見る事で、我々の試みと市場内でのポジショニングも明確になり、さらなる魅力が生み出せるのではないかと考えています。
この物件では色々な問題も起こりましたが、最終的にはこの様にとても面白い状況と市場内の立ち位置で販売する事が出来る様になり、心を膨らましています。我々としても、この戦略と未知に興奮しています。
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第115話「1270 Frances Street売却について」
第116話「1254・1258 Frances Streetの売却プランについて」
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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