今週から不動産投資についてもう少し深く入り込みお話ししたいと思います。ここでは特に各業者との関係や内事情についてお話ししたいと思います。購入、売却ともに複数の業者と関わる事になりますが、今回はその始めとして仲介業者についてお話ししたいと思います。

私の不動産人生の中で、アメリカ、カナダ、日本において、複数の仲介業者と関わってきましたが、やはり最終的には仲介業者個人の人間性がプロジェクトの成功へ導いてくれると思います。今までの経験上、一般的に親身になって対応してくれる業者に恵まれてきていますが、引き継いだプロジェクトや長期交渉になってしまった案件では、本当に人間性を疑う仲介業者もいました。

例えば、弁護士が我々大家の立場を守ろうとする事で、交渉が延びたり座礁に乗り上げそうになった事で、我々サイドの仲介は弊社の顧問弁護士を怒鳴りつけ、喧嘩を始める不祥事を経験しました。終いには引き継ぎしたばかりの私が、仲介を宥める始末でした。本当であれば、仲介独占契約(Exclusive Leasing Agreement)を解約したかったですが、契約書の内容に解約してもこの会社に同金額の仲介費を支払う義務があったため、100歩譲って解約は留めました。また、全く連絡してこない仲介もいました。結局は飛行機に乗り込んで現地入りし、物件の状況を確認した上で、仲介業者のオフィスに乗り込み、その場でその業者との契約を解除したこともあります。同時に他の仲介業者は丁寧過ぎる程に丁寧な報告書を常にオンタイムに持参し、自ら状況を説明してくれた担当者もいました。

私の経験上25年前の仲介業者より現在の仲介業者の方が礼儀が正しく丁寧になったと思います。25年前に比べ、現在は仲介業者を管理する不動産協会の法律も整備され、倫理やモラル面でもだいぶ向上したと思います。

1)信頼出来る関係の構築

では、「どの様に信頼出来る仲介業者を見つけ出すか?」ですが、やはりそれは同じ様に信頼出来る業者からの紹介だと思います。例えば、私の個人的なケースをお話しすると、10年前に日本での職務を辞め、カナダに渡った時には日本の元雇用先企業が使っていたCBREの日本支社にバンクーバーの人間を紹介してもらいました。日本のCBREにとってはAMB Property Japan(現プロロジス)は市場資産価値でも世界で二番目の重要な顧客であった為、バンクーバーの機関投資家用トップブローカーを紹介してくれました。しかし、私がバンクーバーで取り扱おうとしていた物件タイプは全く違っていたことは言うまでもありません。でも、そのブローカーに私の考えや求めている物件などを説明し、私のニーズに合ったCBRE内の人を紹介してくれました。この新たに紹介して貰ったブローカーからカナダの第一プロジェクト物件を購入しました。この場合にも、限られていたネットワークの中から業者の評判を確認することで、信頼性と信憑性を得る事ができました。

しかし、「どうやって新たに伝のない所から信頼出来る仲介業者を探すか?」という問題はまだ残っています。この場合には、各仲介業者が出している物件リストをホームページなどでみて、どの様な人間が担当しているのかをまず確認する事だと思います。殆どの場合、担当者の顔写真が出ていますので、それをまず確認する事。そして、電話して話してみる事。若しくはその担当物件の所有者が分かれば、電話で対応や満足度を確認してみると良いと思います。同じ仲介業者の中でもウマが合わなければ、違うブローカーとアポを取って会う事はこちらでは日常茶飯事です。やはり高額物件の買い物ですので、仲介の選択は慎重に行うべきです。

2)仲介会社の選定

また、不動産投資は通常一回で終わるものではないので、将来的な関係を考慮して担当者を決めることは重要です。もちろん毎回担当者や仲介業者を変えることも出来ますが、市場内での投資家としての信頼や仲介業者間の評判は冴えない結果になりかねないので、ご注意ください。

もちろん、仲介業者は一人でも多くの顧客を見つけようとする為に、自己紹介を兼ねた営業電話を頻繁にかけてきます。この様な電話ともうまく付き合うことは、閉ざされた不動産業界で成功する鍵でもあります。頻繁に業者は市場の情報を提供してくれますので、それら情報を基に最新情報集取だけでなく、仲介業者の性格や仕事への姿勢も理解できるはずです。情報は貰うだけでなく、自ら知っている情報やプロジェクトなどについても段階的に開示する必要があり、情報収集はツーウェイです。

我々が仲介業者を判断していると同時に、向こうも顧客候補の「相応さ」を判断しています。これら新規開拓の情報は業社内の仲介会議でも報告される為、電話営業の噂はすぐ拡散されてしまいます。この「報告」目的は、一仲介会社から複数の業者が同じ顧客候補に連絡をしないためのものでもあります。ですから、逆のことを言うと、違う仲介業者と話してみたい場合には、自分から行動を起こさないと、既に連絡があった会社からは掛かってこないと言うことです。

また、対象仲介会社がご自分のターゲットとしている物件タイプやサイズに対応していることを事前に確認しておく事は、言うまでもなく必要な事です。そして、北米の仲介費は売主(大家)が支払う事になっています。よって、テナント専属(買主専属)仲介であっても、専属仲介担当者と話した情報が相手方に筒抜けになる事がありますので、ご注意ください。

仲介会社を決める上でもう一つ必要な点は、仲介事業以外で提供されているサービス内容です。大手仲介会社であれば、物件管理業務も提供されていますが、それ以外にも建築工事監督業務や不動産査定価格申し立て業務など、どの様なサービスが提供されているかは決める上でも大切な点です。また、今後の展開を考え、他の市場へのアクセス(支社、提携仲介会社の存在)などポートフォリオの分散化を考える上でも必要なポイントだと思います。

3)仲介会社との契約

雇う仲介会社が選択出来たらば、次は契約です。会社によって多少の違いは出てくるものの、下記のポイントは代表的な提示項目です。

• 期間は決まっているが、自動更新
• フィーは売買で3%。賃貸の場合には当初の5年間は3%(場合によっては〜5%)で、後半の5年間はその半額。税金は別途請求
• 契約一部の効力は失効後も一定期間継続する
• 仲介が紹介・登録した候補が契約を締結した場合の仲介料支払い義務には猶予期間がある
• マーケティング費用は仲介会社負担
• 守秘義務

地域特有の条項も存在する場合が多々あるので、各契約書については弁護士に相談することをお勧めします。

また、仲介業者の仲介料受け取り権利は、「Willing and Able (to pay)」なテナントや購入者を見つけた場合に成立します。よって、厳密に言えば、ビジネス条件で折り合いがつかず契約が決裂した場合でも、テナントに支払う意欲があり、支払いキャパが存在した場合には、仲介費受け取り権利が発生しますので、ご注意ください。また、入居後一定の期間が過ぎて、テナントが破産した場合にも、通常は仲介業者や仲介会社には払戻の義務は存在しません。しかし、業者としても今後の関係を継続したい為にある程度の交渉には応じてくれるかもしれません。この様な場合は全てケースバーケースになります。

4)仲介業者のテナント入居後の役割

仲介業者にはテナント入居後(売却後)には何も責務は発生しません。よって、入居後の問題によくある、「そんなこと聞いていない」、「これは入居前に伝えてある」ということが起きても、通常仲介業者や会社は立ち入って援助する事はありません。カナダでは特にですが、アメリカの殆どの州でも不動産契約に関わる事項は全て書面で交わされなければなりません。よって、書面以外で合意された条件等は執行効力が存在しませんので、充分注意する必要があります。

今週は仲介業者について業界のインサイドストーリーをお話ししました。次回は他の業者についても話を進めていきたいと思います。

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