今我々は住宅業界の専門家ではないですが、今週はこの頃の気になる記事を読んで今後の流れで思うことを書いてみようと思います。バンクーバーという街は、まだまだ車がないと生活が不自由な街です。しかし、公共交通インフラも20年前に比べればだいぶ向上してきたものの、日本のような便利さには比べられないと思います。
生活拠点のサテライト化が進行
その様な中、以前のブログでもお話しした様に、バンクーバーでは生活拠点のサテライト化が進んでいる様に思います。サテライト化というのは、居住地域を基準とした生活行動範囲を調整する事と私は考えています。よって、日本の様に主要都市近郊のベッドタウンなどに住み、1時間電車に乗って通勤するという考えはマイノリティーな考えだと思います。もちろんここにも東海道線(すみません、私が関東の人間なので自分の日本での生活環境をベースに話してしまいますが)の様なダウンタウンバンクーバーに乗り入れする近郊電車はありますが、現在はWest Coast Expressという東西70kmを75分で繋ぐ路線一本に限られてしまっています。因みに、ネットで調べると、2019年では毎日1万人ほど(年間260万人)の利用者がいた様です。JR東日本の情報によるとこれは群馬県の前橋駅とほぼ同じ乗車数の様です。金額的にも片道現金で約800円相当なので、乗車時間的に見ても日本のJRに近い感覚だと思います。しかし、この電車は通勤時に特化しており、朝近郊ベッドタウン都市からバンクーバーに入り、帰宅時にバンクーバーからベッドタウンへ運行するだけになってしまっています。
同時に近隣の市などへは地下鉄路線が発展し、日常生活範囲内ではバスも渋滞することが殆どないので、だいぶ信頼できる交通網が構築されて来ていると思います。
同時に近隣の市などへは地下鉄路線が発展し、日常生活範囲内ではバスも渋滞することが殆どないので、だいぶ信頼できる交通網が構築されて来ていると思います。
バンクーバー郊外 ミッションでの大規模開発
その様な中、需要がベースか供給が要因となっているのかはいまいち不明ですが、上記West Coast Expressの最終駅であるMissionという地域では大型な住宅開発が発表されました。このプランはこの人口38,000人の小さな町に40,000人の新しい居住者を足す計画で、住宅だけでなく商業施設や学校なども含まれており、本格的な都市計画事業を掲げています。BusinessInVancouverという地元経済誌では、これは4,400エーカーのエリアを巻き込んだ大きなプロジェクトと報告しています。因みに、東京ドームが5エーカーとなっている為、このMissionのプロジェクトは東京ドーム880個分になり、皇居でも東京ドーム25個分の大きさな為、このプロジェクトがいかに大きいかご想像頂けるのではないでしょうか?
プロジェクトとバンクーバーが抱えている問題
ただ、これにはまだ問題があります。環境改善という面でも、BC州では段階的な完全電気自動車の導入を進めており、2040年までには全ての新車は完全電気自動車である必要がある法律を導入しました。これは一旦導入が開始する事で、経済的問題(インフラ問題も含め)は解消され、電気自動車への乗り換えも徐々に定着して来ると思いますが、複合住宅では設計的に充電ステーションの導入が困難な物件が多く、巨額な資金注入は近年のマンション管理団体の不動産保険金額高騰により、準備出来ない組合が過半数を超えるのではないかと思います。
導入不可能な事によるマンション価値の低下(もしくは暴落)も検討する必要があると思います。住宅価格の低下は新規購入者にとっては、または高騰し過ぎた不動産市場を調整する為には、好都合ですが、既にBC州の一般家庭の債務値が137%程になっている現状では、急激な価格変動は個人資産に多大な影響を与え大型個人破産をうみ、経済混乱に繋がる可能性もあります。よって、環境保全に対するこの電気自動車導入政策も、片方では人の動きを低下させ、経済促進を妨げていると思っており、州政府が考えているほど簡単な移行ではないと私は感じています。
また、カナダの行政システムは連邦制である為、バンクーバー圏内の市町村でもポリシーの差が出ており、それが間接的に経済やビジネス斡旋と人口の流動によるサテライト化に繋がってしまっています。これら政治的ポリシーの温度差や壁を取り崩していく更なる共同運営方針が育まれる必要があると思います。
バンクーバー市においては、更に緑化イニシチェブを促進させる為に、ダウンタウンと東西主要幹線道路であるBroadwayに車での乗り入れを有料化する政策を可決しました。詳細は今後の調査で決められて行きますが、バンクーバー市行政は車の乗り入れを少なくする事で、環境への汚染を制限する試みでいます。しかし、今までにもお話しして来た様に、コロナ禍におけるリモート勤務と外出自粛から既にダウンタウンの日中人口は激減しており(日中人口はコロナ前のピーク時比で約16%〜20%まで激減)、バンクーバー経済は商業を始め激減しています。また、明日竣工ではないものの、上記Missionのプロジェクトを含み、郊外での数多くの住宅開発プロジェクトから人口のバランスがさらに傾くと思います。これにより、更なるバンクーバー離れが促進し、今後はさらに「持っている者」用の街になり、近隣市町村地域とのバランスは保てなくなり、共同政治運営は依然難しくなってくると危機感を感じています。
そうなると、財務的調整も困難になり、2020年のコロナ禍対策で大赤字に転落したバンクーバーの市財政は今後も回復が困難になるものと思われます。
今回のブログはMissionにおける新規都市計画についてのみお話しする予定でしたが、現在バンクーバーが抱えている問題にまで話が進んでしまいました。バンクーバーは現在も今後の方向性を確認しようとしている真最中だと思います。しかし、この様な一世一代の成長にはバランス良く考えられた政策と試行錯誤が今後の成功に導く方法だと思います。私はその先にはバンクーバーとこの地域の更なる繁栄と成長があると思っています。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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