今週はNAIOPの年末オフィスキャストとして行われた、2020年年末のバンクーバーオフィス市場のまとめをお送りしたいと思います。このウェブキャストは四人の不動産専門家の懇談会の様な形式で行われ、四人のうち二人は機関投資家(Oxford PropertiesAllied Properties)の不動産所有者で他の二人はオフィスの仲介業者(CBREColliers)でした。

1)バンクーバー市場の現状

今回のウェブキャストはバンクーバー市場を中心に意見交換がなされましたが、結論は同市場は健全で今後もこの状況は継続するという見解でした。そして現状のCOVID-19(コロナ)の影響は一時的との見方が主流でした。機関投資家のエビデンスとしては入居率が90%である事や家賃支払い率が90%を超えている事、そして新規賃貸家賃は殆ど変化なく貸し出せている事を挙げています。しかし、これらはAAAやAグレードの高級オフィスビルでの現象で、決して総体的テナント状況を示すものではないと思います。

では、一般的な市場はどの様になっているかと説明しますと、サブリーススペースは全供給スペースの50%を占めている中、空室は100〜120日の間で新規テナントがついている状況です。この日数は通常の賃貸期間とさほど差はありません。それに伴い、内覧件数も著しく減少していますが、現在内覧しているテナント候補は真剣に探していて契約する準備がある企業ばかりだそうです。

また、賃借人の間でオフィスへ戻っている率は16〜40%との事です。この率はダウンタウンの中心街オフィスビルであればある程低くなり、郊外の低層オフィスビルであれば60%ほどまで上昇しているそうです。その上、賃借人の賃貸支払い能力は依然として困難な状況が続いている様に思います。Hudson’s Bay Companyという老舗デパートでは、複数店舗に於いて家賃支払いの滞りで裁判にまで発展しています。弊社のテナントを見ても経営状況は依然として難しく、家賃サポートを行政に申請しているテナントが殆どです。よって、家賃は継続して支払われているものの、経済が通常に戻っていない事は明らかです。

2)状況の変化

また、上記の機関投資家も今後の新規賃貸では賃料の現状維持は可能でも、そこへたどり着く状況は変化していると話しており、今後はテナント工事に対する補助金を出すのではなく、スペースをスペックでも作り上げ、それを市場のテナント候補に提供する流れが主流になるだろうと話しています。よって、現在のテナント工事補助金は1平方フィートあたり$50が主流ですが、完全に作り上げるとこの金額は$130〜150まで高騰すると思われます。よって、各スペースからの投資リターンも著しく減少すると思われます。

北米の一般的賃貸期間は10年ですが、テナント工事を完全に大家側で負担する事で、テナント工事の減価償却についても今まで以上の償却が発生します。通常は賃貸期間中に完全償却するものですが、場合によっては金額が多く、各決算期の利益に大きく影響してくる可能性もある為、上記機関投資家などでは、耐用年数ベースなどに償却期間を変更して影響を最低限にする試みを考えている様です。

3)ホーム or オフィス

因みに今朝のアメリカの新聞では世界中の上場企業のCFOの大半は不動産関連コストの大幅な削減を掲げており、これら削減努力は本社オフィス費用に留まらず、支店、コールセンターやデータセンターへの削減や見直しが急務と各株主総会や投資家報告会で訴える傾向にあると報告しています。この流れが一時的なものなのか、またはリモートワークやホテリング(デスクスペースの共有)が主流になるのかは、今後のワクチン摂取率や効果の定着に大きく影響されるものだと思います。

しかし、カナダの税法ではホームオフィスの使用は個人の所得に対する減税項目になる為、この控除を取り入れる為にも、リモートワークは継続して好まれるだろうと思います。

同時に、今後のオフィス需要が継続する説では、1)オフィスの存在目的の変化、2)ビデオ会議のための仕事増加を含めた精神的な疲れや、3)同僚との交流を求める動きが挙げられています。1)オフィスの存在目的の変化としては、これまでの四半期レポートなどでも触れてきた様にオフィスが単に仕事をする場所から、アイディアを出し合いまとめる創作の場に変化していることが大きな要因だと思います。弊社でもリモートワークを継続する中、1週間に一度はオフィスに集まりフェースツーフェースのコラボレーションやアイディアの出し合いを行っています。コンピュータースクリーンを共有した作業でも可能ですが、シナジー(相乗効果)や作業の効率という面ではリモートでは賄えない効果が存在していると思います。2)また、今回のウェブキャストでも話されていましたが、ビデオ会議の為の仕事が一般的に増加している様です。オフィスでの会議ではカバー仕切れない動作のニュアンスや2分で済む確認事項などに対しても予約を入れたりする作業などが効率を著しく低下させ、精神的なプレッシャーが社員を追い込んでいるそうです。3)そしてオフィスの必要性を話す上では、最もよく話題になるのが、人間の「集団的生態」です。人間は集まり、人との交流が日常的にも必要条件になっている事を挙げ、今後もこの観点でオフィスの需要は維持されるとしています。前四半期に行われたアンケート調査でも、一般社員は週2〜3日はオフィスに出て、同僚たちとの時間を大事にしたいという回答が纏められています。

またもう一つは、リモートの家庭環境では仕事に集中出来ない事情が挙げられると思います。読者の皆さんもリモートで働いていらっしゃる方が多いと思いますが、中にはお子さんもリモート勉強されているご家族もいると思います。我が家では娘の学校は再開しており、娘も学校で日々勉強していますが、日本語学校などの放課後活動ではリモート授業になっており、親からの補助も必要になります。この様な状況が日々継続してあれば、仕事の効率も低下してしまうと思います。

4)まとめ

これらを合計して、今回のウェブキャストにおける2021年への見解では仲介会社のCBREは楽観的に見ており、当初のリモートワークが「新ワーキングスタイル」にはならないと纏め、さらにダウンタウンでおいては30,000平方フィート以上のテナントが入れるスペースがない事を挙げています。機関投資家のOxfordやAlliedも好感的で空室率が3%以下である事や先に述べた「集団行動」への渇望で今後もオフィス需要は継続すると話しています。両機関投資家に於いては今後もバンクーバーの物件ポートフォリオを増やしていくと話していました。

これらが実際に起こるかは今後のワクチンの配布・摂取状況やその影響を見守る必要があると思いますが、バンクーバー住民はコロナへの恐怖感はあるものの、自由に外出などをして仕事を含めた日常生活を謳歌したいと言うのが一般論です。

皆さんの周りや仕事場ではどんな状況でしょうか?

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