前回は次世代育成する上での目的やシステムについてお話ししました。その上で、今週はここ十数年人気で流行にもなっている、海外教育について取り上げたいと思います。具体的な学校や教育システムについては次回お話しするとして、今回は海外教育を行う目的や考え方についてお話ししたいと思います。
まず最初に申し上げたいのは、他のブログや著書の中にも書きましたが、海外で教育を受ける(留学)というのは、本人には過酷なストレスがかかるという事です。そして、今でこそ留学生の人数から受け入れ側でもカウンセラーなどを準備して、留学生の心のケア対策を行なっているところも出てきましたが、受け入れ側としては未だ「留学生」と言う一括りで対応される事も多く、日本人の文化性や各生徒の家庭環境に焦点を置いた支援は存在しないのが現状です。だからこそ、留学目的、本人の意思や留学後の考えなど事前に話し合っておく必要があると思います。
1)目的
留学を考える上では、目的、そして誰の意志であるかをはっきりさせておくべきだと思います。お子さんの年齢にもよりますが、親の提案で子供だけが留学する場合には勉学だけでなく、生活や精神面まで配慮したプランが必要です。例えば、各休みの使い方や親との時間の共有方法など。そして誰もが通るホームシックの時にはどの様に遠距離の子供をサポート出来るのか?これらは一握りの例ですが、身近にいる経験者からのヒアリングを含め、ご両親も準備しておくことはお子さんの留学を成功させる為にも大切です。
留学が語学留学の場合には、日本での慣れた生活環境が途絶えた日々の中、周りに他の日本人がいる事で、日本語中心の生活が延長され、留学の目的が果たせなかったなんて言う事もよく聞きます。ですから、留学を検討する際には、その最終的な目的(現地四年大学からの卒業など)も考え、お子さんと理解を同じにしておく事は良いと思います。留学で大学の一般課程を受ける場合には、語学問題だけでなく、授業内容を理解して宿題をこなし、一定の成果を継続する必要があります。ですから、私の友人などでも日本から直接きていた学生は遊ぶ時間もなく、ひたすら勉強をしていました。
また、ちょっと前までよく聞いた目的には、「帰国子女で良い学校(大学)に入れる為」も多くありました。日本の社会で生きていく為には、良いのかも知れませんが、これは目的が矛盾しており、親のエゴにしかならないと私は思っています。結果的に受験では不可能だった学校に入れる事はお子さんのためなのかも知れません。そして短期間でもお子さんが海外を体感できた事は良かったのかも知れません。しかし、多くの場合、精神的ストレスや現地に馴染めない事から得るものも決して多くはありません。若しかしたら、嫌な思い出ばかり集めてしまい、帰国後にも一緒に遊べる日本人の友人はできても、留学としてはなにも習得しないで帰国するというケースもよく聞く話です。ですからこの様なシナリオでの留学はコスト的無駄になる事が多く、お子さんへの影響も多大ですので、真剣に考えるべきだと思います。
そこで今カナダでも人気があるのが、親子留学です。多くの場合がお母さんですが、母親が一緒に留学する制度のことを言います。親子留学は子供の精神的ストレスなども多く回避でき、子供のためにも良い対策だと思います。
2)家族の生き方
留学は多面において本人の一生を変える経験だからこそ、ご家族の生き方がお子さんの教育にも浸透されている事は大切です。具体的に何を言っているのか申しますと、留学を考えていても家族が海外未経験だったり、異文化との交流経験がないのでは、親がサポートを与えられず、子供の苦難を理解してあげられなくなり、子供が精神的にも孤立してしまうということです。もちろん、お子さん達は生き抜くでしょう。しかし、理解し合えない事が家族の人間関係に与える影響は大きいと思います。留学を検討する時には、家族全員の為にも、海外の生活へのハードルが少しでも低く見慣れた光景である方がいいと思います。
そして、留学後の成長を支援する上でも、ご家庭の環境が海外環境を支持する姿勢は大事だと思います。もちろん全てのご家庭が海外慣れしているとは思っていませんし、それは多難なことでもあります。しかし、私が申し上げたいのは、経験がなくても、親もお子さんと一緒に、もしくはお子さんの経験を自分の事として学ぶ姿勢が必要だと言う事です。留学後に帰国してきても、ご家族のサポートや支援がなければ、その後の日本での生活の方向性や、学校の選び方などにも支障が出てきます。よって、留学は「子供が行きたがっていたから行かせる」イベントではなく、家族全員でお子さんの将来を考え支援するライフプロジェクトであると言う事です。
また、出発時期や滞在期間にもよりますが、異文化の価値観の違いから来る葛藤やアイデンティティークライシスや生き方が分からなくなる事もあります。ご家族が事業を営んでいる場合には、日本文化に基づいた家業の社訓や文化はお子さんが海外で学んで来た思想と異なるかも知れません。そしてお互いが理解出来合えない事から、人間関係や事業承継案に亀裂が発生すると言うケースもあります。私の家庭環境がそうでした。父親は自分が海外慣れしていたと思っていました。しかし、実は隋まで純の日本人で我々の現地人化する考え方や生活習慣には耐えきれませんでした。そこから亀裂も起き、これだけが原因ではないですが、最終的には枡田の家業継承は失敗に終わっています。そう言った面でも、留学は「子供たちの生き方」だけとして終わりにしてはいけないと私は強く思っています。
じゃあ、この様なマイナス要因をどの様に払拭できるのか?それは先ほど申し上げたように、考え方だと思います。「お子さんの勉学」ではなく、「家族としてのライフワーク」とする考え方やお子さんを精神的に支援する姿勢を持つ事で、柔軟な対応策を生み出せる事になると思います。
3)まとめ
北米の成功する生活環境の一つには、親子が一緒になって家族としてお互いをサポートし合い努力する姿勢があります。ですから、各々がお互いの日々の生活の一部であり、家族という団体なのです。それは夕食を一緒に過ごしたり、家族旅行を必ずしたり、共通する趣味を持ち、親子の時間、夫婦の時間などの時間を大事にしています。そうする事で、お互いの絆が強くなり、家族としての絆が強くなります。この様な関係が作り上げられれば、助け合い、支援し合う家族関係が成り立ち、留学も「お子さんの勉学」だけに止まらない、「家族のライフワーク」になる訳です。
今の日本では文化的、環境的にも難しいと思います。しかし、留学というのは、今までない文化の中に足を突っ込む事です。日常の日本の生活環境では対応不可能なのは当たり前なのではないでしょうか?各ご家庭の将来を担うお子さんの人生だからこそ、家族全員で拘る事ではないでしょうか?
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KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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