前回では高校留学についてお話ししましたが、今回は大学留学についてお話し致します。私自身の経験がアメリカの大学(大学院)ですので、ここではアメリカの大学についてお話しします。

1)大学概要

システム上でアメリカの教育が優れている所は、転校や編入が出来る事です。特別な試験等はなく、在学中の大学の成績表がベースになります。よって、最低でも一学期の勉強を終了している事が条件になりますが、詳細は各受け入れ側大学によって異なります。二、三年前の情報になりますが、寄宿込みの学費は一年で約USD50,000~65,000(550万円〜700万円)でした。アメリカも二年制と四年制の大学があり、それぞれ私立、州立、地域(コミュニティー)に分かれています。現地学生ならば、州立大学はとても経済的ですが、留学生に対してはこの様な優遇制度はなく全額負担になっています。学校や専攻によっては奨学金が可能な場合がありますが、日本人留学生には日本からの奨学金や世界的団体(例えばロータリー等)からのものに限られてしまうのが現状です。

なお州立大学であるUniversity of WashingtonのMBA及びExecutive MBA(共に2年間プログラム)の留学生用の年間学費はどちらも約USD110,000(12,000,000円)だそうです。これに生活費がかかります。また入学条件も厳しくなり、EMBAの場合には最低10年間の職務経験と現職が最低でも中間管理職についている事が条件になっています。ただ、入学金についてはほとんどの生徒が企業支援留学でした。

2)大学の教育システム

大学にはサイズや専門学科などの特徴も多く、小さな大学では1,000人もいない大学も存在します。同時に州立大学などでは、数万人の在学生がいる大学も多くあります。

大学の教育システムは一般的に単位制で、各クラスに与えられる単位が異なります。そして、殆どの大学では1〜2年生時を一般教養に充てており、最低振り分け単位を満たさないと3年生の専攻過程に進む事が出来ない様になっています。一般教養には英語、経済学、会計、歴史、宗教や哲学などが含まれています。

成績面では通常C-(約70%)が最低合格成績とされており、このレベルに達成しなければ単位が取得出来ません。この合格成績は各大学レベルによって異なり、各大学の「色」になります。例えば、C+(約77%)やB-(80%)を最低合格点としている大学もありました。

授業にもバラエティーがあり、一般教養の中には体育学部の一環で「スキー」や、芸術学部として「陶芸」という授業もありました。インディアナ州立大学のPurdue大学は航空宇宙学が強くニールアームストロングをはじめとする多くの宇宙飛行士を生み出して来た大学ですが、航空宇宙学部管轄のPurdue大学空港を使いプロペラ機操縦免許が獲得出来る授業がありました。またIndependent Studies(自己研究)という授業もあり、これは担当教授を生徒が選び、一つのテーマについて一学期間(15週間)自己学習(リサーチ等)を行い、最終的にはレポートを提出する事で「合格」「不合格」の成績が与えられます。私の場合には丁度ベルリンの壁崩壊時やソビエト連邦崩壊時にヨーロッパで交換留学をしていた為、「ドイツの統合における商業不動産への影響と今後の課題」と言うテーマで、ベルリンの東西統合における不動産市場への影響を取り上げたペーパーを書きました。ただ、私の場合には、一学期間だけの自己研究は一年間において書き上げるものになってしまい、単位も一科目分だけ取得する事になってしまいました。

大学には年齢制限はなく、高校生の年齢からリタイア後の趣味として大学へ通い直す生徒もいます。聴講制度を利用して知識を習得する学生もいます。

また、出席確認は各授業で行われ、3回以上の欠席は成績を1/3グレード下げられてしまう規則でした。よって、4回休むと、その時にA(94%)を習得していても、A-(90%)に落とされてしまうという事です。1〜2年生の一般教養の場合には、一授業数百人とクラスが大きい為、宿題を提出する事で出席確認になっていた為、友人などに提出してもらう事で対応が出来ますが、選考授業では、10名ぐらいから30名程が一般的な大きさなので、代役を起用することは不可能になってしまいます。また、最低でも私が通った大学では全て、各授業への率先した参加(有意義な発言や自主的事前リサーチ)も成績の一部になっていました。よって、不得意なクラスでは教授に呼ばれ注意を受けた覚えもあります。

3)大学院の授業

大学院(特にEMBA)の授業内容は学士レベルとはかけ離れたものでした。6人チームに分けられ、2年間を過ごしますが、プログラム合格者説明会では学校より具体的なプログラムの流れや授業の説明があります。特に警告された事は各自の家族との時間がなくなる事でした。代わりに、自分たちのチームが各「夫」や「妻」、「彼氏」や「彼女」に成り代わり、更には家族との時間がなくなる事で離婚も現実問題としてあるという事でした。実際、2年間の勉強で家には寝に帰っただけで、他は仕事と自分の勉強(週約15〜20時間)とチームでの勉強時間(週約15〜20時間)でした。この上に週一回は早朝から夕方まで朝食付きの授業が行われていました。離婚面では53名のクラスで2組が離婚しました。

各授業への予習としては、テキスト(50ページ前後)から理論を勉強し、教授が用意したパワーポイントで授業の進行を把握し(疑問点をまとめ)、ハーバードビジネスレビューのケースステディーを1〜2件読んで討論に備えるのが日課でした。そして復習としては、再度学んだ事を復習し、ノートをまとめていたのを覚えています。

大学院での一日は朝8時半から夕方4時半(各3時間半)の間に午前と午後の授業があり、お昼は通常大学が用意したものを食べる事になります。そして、その1時間もほとんどの場合がスピーカーやプレゼンがあり、昼食を取りながらの聴講になります。でも、「放課後」は毎週近くのバーなどに教授を含めたほとんど全員が集まり、交流を深めていました。他にも、週末の空いた時間には、級友とその家族を呼び合ってパーティーをしたり、とても濃い2年間であった事はこれ以上言うことも無いと思います。

教授軍も日々教えるだけではなく、全国的に企業コンサルを行なっている人たちですので、現在進行形の情報が入ってくるだけでなく、彼らも自分達の「時間単価」を理解してコンサル的に教えます。よって、「熱の入った」意見交換や議論がない場合には、自分の「時間のロス(無駄)」をクラスに訴え、授業を常に活発なものにしていました。全員とてもプロ意識が強い教授軍でした。

4)振り返って

よって、私の学生人生の中で、EMBAほど勉強した時期はなく、理論や定義から各企業のケーススタディーを使った応用という事では、これ以上使える知識を習得し、人生での相談役(チームメート)を得られた機会はないと思っています。卒業は2005年でしたが、チームメートをはじめとする級友とは今でも繋がっており、チャンスがある度に集まって親睦を深めています。

余談になりますが、卒業後に入社したAMB Property Japan, Inc.(現Prologis Japan)では週80〜90時間働いていました。しかし、大学院直後だったせいか、これら時間も気にする事なく、率先して職務に没頭出来ていました。機関投資家という視点での業務はとても役に立ち、得るものが豊富にありました。現職の小さな投資事業者としても怖いもの知らずでいられるのも、この経験が役に立ち機関投資家の内側を知った事が大きな役割を果たしていると思います。

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