現在今後10年間とその先のビジネスプランに相当な時間を費やしているのですが、その上で何度も何度も戻って来てしまうのが「自分にしか出来ない仕事」です。結局は「なぜこの仕事を自分がするべきなのか」「他の人にできないものを提供しているのか」という事をすごく考えます。これは自分のエゴという観点だけでなく、「First Mover Advantage(先行者利益)」を継続すると同時に、ブルーオーシャンの位置を継続する経営上のリスクヘッジ目的も兼ねています。
1)システム構築
先行者利益を考える上で大事な点は、システムを作り上げる事だと思います。最近、前田裕二さんの「人生の勝算」を拝読しましたが、海外に長年いる事で忘れていた点をリマインドされた様に思いました。それは「アメリカ人はシステムの構築に長けている」という事です。本当にそうだと思います。私の北米での教育においても、いかに独自性を取り入れた新たなシステム(プラットフォーム)を作り上げるかという事は耳が痛くなるほど、聞かされて来た言葉です。ビジネススクールでも先行者利益(First Mover Advantage)は何処にあるのだと、すっぱく教授に言われたものです。この先行者利益は既存の案に独自のシステムや可能性をつける事でも良いと思います。ただオプションなどの既存の商品への付け加えは、既存の商品のサービス向上にしかならない為、新規バリアーの破壊には繋がりません。よって、それは残念な事に新規プラットフォームの構築にはなりません。
そしてまた、このプラットフォーム(フォーマット)を作り上げる事のメリットは、独自のルールを設定する事が可能になる事です。そうやって後から来る人には自分のルールに従ったものを作って使ってもらう。そうするとそこには自分のサポーターを増やすことになり、自分のポジションや商品の強化に繋がる。前田さんも触れていましたが、結局これってどこの大手のアプリやサイトがやっている事で同じ事ですね。フェースブックやGoogleというバックボーンがあり、そこに新規アプリや付属サービスが足される。もちろんこれには問題なく、経営拡張としては良い考えだと思います。ただ、残念な事はこれだと自分が主導権を握れない。流れを変える事が出来ないという事です。
2)先行者利益と経験値
ではこれを踏まえた上で、我が社が取り扱っている商業不動産についてはどうなるのか?私としては、20数年の北米での不動産経験があり、流れや業界のインサイドなどを理解しています。また、日本の不動産もREITに在籍していた事や、家業の関わりから理解していると思っています。その上で、北米日共にネットワークも構築されており、必要な時に必要な情報を得られる事が可能です。よって、カナダのバンクーバーなど地域的市場では、先行者利益は確保していると思っています。そして米国市場においても情報を基にした先行者利益は獲得していると思います。
ただこれは情報や経験値であり、システム(フラットフォーム)ではないと思っており、長年苦闘して来ました。正直、情報や経験だけでは先行者利益にはならないと思っています。そしてこれがここ数ヶ月ずっと考えて来ている今後の戦略を組む上で多大なハードルとしてのしかかって来ていました。ですから、「自分にしか出来ない仕事」はなんなのかという事が明確に描けず悩んでいました。私の中では、不動産投資だけではどの市場においても独占性に欠け、確実な先行者利益にはならないと考えています。我々不動産投資会社としての位置付けは、市場参加者としてもそうですし、投資家斡旋の営業面でもシステムとしてはなんら変わらない一不動産会社の試みと考えてしまいます。
3)システム上の差別化・独自性
ただよく考えてみると、システムも一生手を付ける必要がなく、先行者利益を継続出来る物はないと思う考えが生まれ、システムという先行者利益はなくとも、自分たちのマーケットポジションや提供商品(投資利回り、投資物件、期間)などにより、独自性は常に出していける(そして現在も既に高投資利益を叩き上げ続けられている)と視点を変えてみる事にしました。さらに、地域性や投資戦略にも差別化が出来ている事に気がつきました。当初は「選択では」なく、その投資方法しか生き残る素手がなかったのが事実ですが、市場内の成長を考えた許容地域のフロントラインを狙った改築や再開発を行う事で、同市場内の物件からも差別化を獲得しました。そしてその差別化に比例する結果を出して来ました。
しかし、正直に申し上げると自分の中では自分の存在と試みをダウングレードして簡単な逃げ道を作り上げてしまった様に思ってしまい、腑に落ちていません。私の中では、上記の様な差別化戦略を用いたとしても、それはシステム上の差別化ではないため、最終的に賃貸活動や売却努力の際には、市場内の物件比較上の有利さ(デザイン、設備、使い易さ等)以外には、システム上の独自性を用いていない事にすごくリスクを感じています。私としては、不動産事業の川上から川下までを一貫したサービスと括り、システムとして新たなサービス事業にするのが本来の「プラットフォーム」的立ち上げだと自負しています。その上でも、弊社の様なブティック投資会社(小規模会社)が機関投資家を始めとする資産が潤滑した相手と競合するためには、なんだかの独自のシステム化をベースとしたバリュープロポジション(価格提案)が必須と思っています。不動産事業の包括的リポジショニングによるシステム構築(よって独自のルールで業界内においても左右されない存在位置の確立)は弊社が今後も弊社であり続ける為、そして日本の不動産会社が北米などの既存のルールが存在する市場の中で新風を巻き起こす上でも必須事項だと考えています。今は未だ答えは出ていませんが、今後も継続してシステム構築からの独自性を追求し続けていこうと思っています。
4)弊社が今出来る仕事
では弊社が「今出来る仕事とは何か」を考えた際には、提供可能案件は多いと思いました。それは弊社が家業として設立者から80年培ってきた生き方(継続する為の必須価値)や30年を超える個人的北米と日本国内不動産投資の知識ではないかと思っています。そしてその蓄積が実績(物件の市場内立ち位置や投資利回り)として出て来ていると思っています。ここ10年間だけでも、改築などのリポジショニングから年率30%を超える投資リターンを弾き出し、今後の安定運用物件でも10%+-の運営利益が出せると思っています。それらを考えると、我々の価格提案は不動産を使った現実的資産運用だと自負しています。
日本国内に於ける不動産投資では数%しか利益がない中、海外展開における資産運用で数倍の展開が可能であると言う選択肢を提供する事が弊社のミッションではないかと思っています。不動産事業と言うのはとてもリスクのある動性の低い投資商品です。売買や売却にも時間が掛かり、年間リターンもベンチャーキャピタルの様な100%を超える売り上げは存在しません。だからこそ、不動産投資ではリスクに見合うリターンを得る事が必須になります。正直日本の上場しているREITリターンが4%ではリスクが高過ぎると私は個人的に思っています。
世界中の投資家は何処でも節税に関心を抱いて、その対応に追われている感じがします。しかし日本国と国税局の考えは「御上への献上」がメインテーマになっており、現状における日本国内からの有意義な資産運用は困難だと思います。よって、弊社が海外にある存在意義の一つは、投資家が国外に移動された後の資産運用サポートだと私どもは考えています。そう言った意味でも、遺産相続や贈与税が存在しないカナダに弊社の本部を置く事は今後も重要な役割だと考えています。
弊社は今後もさらなる飛躍を試み挑戦し続けていきます。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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