最近リーダーシップについてや、香港の現状を通して海外で起きていること、考え方についてお話ししてきました。今回はそれをもうちょっと身近なものにして、日本国内に拠点を置く企業オーナーや海外と接点がない邦人企業が日本の現状や将来に危機を感じているが、今後どの様に対応すれば良いのか、どこから始めれば良いのかということについてお話をしたいと思います。このブログでは色々なご提案をしますが、やはり最終的には読者が「なにに対して危機を感じているのか?」、そして現状(社会的な問題ではなく、御社の経営構成や10年後の姿)について、「どう考えているのか」、「どうなっていたいのか」について自問自答する必要があると思います。上から目線で恐縮ですが、最終的には自己責任です。

また、実践的な情報収集方法については、弊社のYouTube動画にてお話ししてありますので、そちらも一緒にご参照ください。この動画を踏まえ、このブログでは、戦略的な考え方に重点を置いて、次の3点についてお話ししたいと思います:1)現状の把握、2)将来求める姿、3)その遂行方法。

1)現状の把握

では、まずは現状を把握する上でも、「なにに対して危機を感じているのか?」を明確にしなくてはいけません。「なんとなく」や新聞でそう読むからではなく、「自分の感じる危機感はXXであるが、その原因や要因としてZZがある。その上、YYという傾向がある為、XXという危機感を抱いている」という様にロジックを使って、ストリーを作り上げることが必要だと思います。

例えば(この例はあっているのかわかりませんが)、「洋服縫製の下請けの存続に危機を感じている」が現状であるXXであるとすると、原因や要因であるZZとしては、「仕事の海外発注」や「国内作業もAIの導入による自動縫製によるストリーム化(よって下請け工程の削除)」だとします。その場合、現在の影響要素となるYYとして「消費者の低価格商品嗜好」や「人間の作業の付加価値提供が不可能」などが挙げられるかも知れません。非常に簡素化された流れではありますが、考え方の流れは掴めると思います。

しかし、どの様な状況であっても(国内路線の継続もしくは海外進出でも)、この様に噛み砕いて、問題を簡素化し、ご自身なりの仮説を立てることが重要だと思います。その上で、業界の展望に危機感を感じる様であれば、国内での新規路線や他社とのコラボなどの可能性の考案や、海外への回避策を検討することも可能になると思います。

ただ、私の中では海外進出はゴールではなく、あくまでの一つの選択肢であるべきだと思っています。というのも、ご想像通り、海外に出るというのはとてつもなく大変な事です。金銭面から、市場開拓や、事業の移動や拡張など、考慮しなくてはいけない点は多くあります。しかし、弊社でも実践している様に、海外に出ることで新規選択肢が広がるのも事実です。ですから、海外進出がベストと思えるならば、それは良い決断だと思います。逆にベストでないのに海外進出を選択することは、失敗に繋がり、余計に大きな打撃を受け兼ねません。先ずは問題を噛み砕いて、理論的な説明をご自分にするべきだと思います。

2)将来求める姿

第二のポイントとしては、海外進出の結果はどうであれ、企業として(もしくはご家族という場合でも)将来どうありたいのか(ビジョン)という事を極める事です。今までの企業の歴史や文化ではなく、現社長が率いる法人が10年後どの様になっていたいのか、何を如何やって企業の存続を行うのか、経営者として把握する必要があります。そして、これが海外などの新規市場を対象にした場合には尚更必要不可欠なプロセスです。

私どもの例でお話しすると、元は日本で始まった家業ですが、今後10年以内にカナダのバンクーバーを拠点とした北米ベースの不動産投資会社に成長する事です。それも不動産という高額資金が必要とされるハイリスクハイリターンな業界という大海原で、弊社の様な小魚が生き延びる素手が必要です。弊社は今後自己資産拡張の為に、改築をベースとした短期組合プロジェクトを数多く施工して行きます。しかし、我々にはそこまで潤沢な資金がありません。よって、今後は現地や日本の投資家を取り込んだ、投資組合を組成して、プロジェクト数を増していこうと考えています。更にバンクーバーでは物件保持からくる投資リターン率は低い為、競合を避ける物件サイズで改築を行い、新規テナントを呼び込み、物件価値を最大化させ、売却して行きます。このサイクルから資金状況を向上させていきます。

5年以内にはカナダ内で得た資金で米国市場へ参入し、運用不動産にて事業拡張して行く予定です。よって、カナダをベースとした改築業とアメリカベースの運営事業で二本立ちして行く予定です。

この様な大まかな路線図と、さらなる調査から具体的な内部用数値を作り上げることは大切だと思います。しかし、皆さんは既に企業のトップという事で、各市場を観察する事で、ニッチや満たされていない需要が見えていると思います。

よって、我々の例を使うと、不動産事業で「何」が示され、今後5年や10年間の計画から「如何やって」が示され、北米ベースの不動産投資会社を作り上げる(「ビジョン」)が構築され達成できる様になると思っています。

御社の考えは如何でしょうか?

3)遂行方法

多くの場合が、日本での拠点を残して海外事業を拡張しているのが現状です。バンクーバーの飲食でも日本の営業が軌道に乗ったので、バンクーバーに出店したというお店もあります。もちろん、日本の現状に危機を感じている場合には時間の余裕もないかも知れません。しかし、現地でのネットワークや、クライアントが既についていない限り、日本の基盤を捨てて海外で再出発を始めるのはよほど勇気がいる事だと思います。日本の基盤の上に海外展開を行う事で、将来的には経営の比重を海外に向け「日本危機」を防ぐという選択肢も可能になると思います。

しかし、問題はもっと初歩的で重要な海外への第一歩を如何するかです。

冒頭でも弊社の同場については触れましたが、弊社の例を再度取り上げると、アメリカ進出に向けて既存の業者ネットワークを使って、これから準備をしていく予定です。それは、弊社が使っている仲介会社に我々のターゲット市場の同企業の仲介業者を紹介してもらう事です。建築家も現在のチームの業者の紹介で既にあてが見つかりました。弊社がメンバーであるビル協会の現地オフィスを通じて現地人材を紹介してもらう方法も一つだと思っています。私も日本からバンクーバーへ移ってきた時には、日本で紹介してもらった業者をつてにネットワークを構築していきました。

1970年代の話になりますが、枡田の先代は当時海外展開をしていた東京銀行に現地職員を紹介して貰い、そこを最初のつてにしてネットワークを広げていました。現在では海外展開をしている邦銀も少ないかも知れませんが、銀行以外にもJETROや海外進出経験者などにヒアリングをするのもオプションだと思います。

しかし、これらは手順とも言えるような方法であり、それ以上に大切な御社の資産(文化、社員、考え方)存続は如何するのかを考える必要があると思います。日本人同士でも、価値観が似たもの同士を見つけるのは困難になりがちです。海外に出れば、日本人の絶対数は激減し、その様な中で価値観や人生観が似ている人を探すのは至難の業です。私自身も経験を持ってこの難しさを実感してきました。私は社員が企業では一番の資産だと考えていますので、事業の行く末を決めるのも良い人間との廻り合いによると私は思っています。よって、日本から社員を連れていくのも一つだと思います。または現地で新たに探すのも一つだと思います。しかし、どちらの選択肢の場合でも、考慮する点は多々存在しますので、念入りな準備が必要になります。

ここでは人材を取り上げましたが、御社の文化や資産はもっとあると思います。製造業であれば、御社独自の製造・作業方法や技術(特許)。商品性能や商品の需要など、色々な要素を考慮し、それら各ポイントを如何するのか、会社の方向性や営業基盤についても検討する必要があると思います。また、それら技術が海外市場でもまかり通るかはまた違う検討事項です。

海外へ出るという事は前途多難な事ですが、私自身日本の将来に危機を感じていますので、どうか方法を見つけ出して成功して頂きたいと思います。

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