前回のお話では考え方、そして弊社のYouTubeの海外進出時の情報源についてお話ししましたが、海外進出は思う以上に複雑で未知の点が多いのは読者ご自身も既にご理解されていると思います。今回は弊社の米市場進出をケーススタディーにして、踏み込んだ進出方法についてお話ししたいと思います。その上で、次の3点に焦点を置いてお話ししたいと思います:1)市場内での状況を把握する為のSWOT分析を行う、2)実際の物件情報を得て市場を理解する、3)利益抽出方法を検討する。もちろんこれ以上にも複数の重要なポイントは存在しますし、検討するべきです。例えば、マクロ的には、市場構成やサイズ、参加者、需要やトレンドなどがあり、マイクロ面では、御社の会社の構造、税金や資金繰り、人事などが考えられます。ただ、これらはブログ内でカバーするには幅が広すぎ、SWOT分析が多くをカバーする(関連する)と思っています。ただ、今までにも部分的にはこのトピックにも触れていますので、多少のダブりがあるかも知れませんが、ご了承ください。

1)SWOT分析

SWOTとは、各検討案件のS = 強み(Strength)、W = 弱み(Weakness)、O = チャンス(Opportunity)、T = 脅威(Threat)を書き出し、状況を把握し、対策や戦略立案に繋げるツールです。SWOTを作成する上で、書き出されるポイント数が少なければ、市場構成や御社の状況などを更に調べる必要が出てきます。よって、上記でSWOT以外でも検討すべき点が何かというのも、ここで概ねカバーされると思います。SWOTは業種や状況に限定される事なく活用できるツールです。

例えば、弊社がアメリカ市場への進出を検討する上でのSWOTは下記の通りになります:

マクロ面 マイクロ面
強み ・業界の構造が同じ
・テナント需要が類似している
・類似物件が存在する
・実績がある事
・ネットワークを持っている
・投資プロセスを理解している
弱み ・当初の為替が高い
・機会ある市場の探索
・各州の行政プロセスが不明
・企業としての基盤がない
・チームの構成
・各市場内の知識
チャンス ・市場が分散している
・可能市場数が多い
・物件が多い
・価格が安い
・投資期間が短い
・投資戦略が増える
・運営も可能になる
・リスクの分散化
脅威 ・知識不足からのミス
・財務的な限界や無理
・各経済状況からの打撃
・人材不足
・市場無知による投資の失敗
・信頼できる人材が確保出来ない

弊社の場合にもこれらはほんの一部の例にしかなりませんが、ここでの重要な事は考えられる全ての項目を書き出す事です。そして、如何に強みとチャンスを多くし、弱みと脅威を最小数にするかということです。これら点を挙げることで、「何をしなくてはいけないのか分からない」が解明され、調査を開始する目処が立ちます。マイナス点も即無くならないと思いますが、競争上の優位性を得る為にも、今後の克服検討への種まきになるのではないでしょうか?

2)市場を理解する

第二のポイントとしては、進出先の市場について知る事です。「知る」というのもここで文章するほど簡単なものでないのは私も経験を持って理解しています。ましてや、言葉や文化の分からない異国の市場を理解するのは大掛かりな事です。この頃はインターネットのお陰で色々な情報がアクセス可能になってきました。無料の和訳機能もアクセス可能です。よって、これらから基本的な情報だけでも入手可能になるのではないでしょうか?

市場を知る上で私が大切にしている事は、各業界や市場における習慣です。例えば、弊社の不動産であれば、適切な規模の米市場を見つけるだけでなく、市場内における物件数や規模、テナント構成(成長テナントの業種、地域の需用内容や平均賃貸期間など)や行政関連マター(申請期間やプロセス費用など)が一例です。またこれらは現状を示すものですので、今後のトレンドについても把握する必要があります。我々はハイテク、医療研究やクリエーティブ企業を主なテナント候補としているので、市場内の大学や専門学校などの学校数や生徒人口、近年のターゲット業種の成長や市場の人口成長率なども注意して調べます。

もちろんネット上では調べきれない必要情報もあります。弊社の場合では、各市場の住み易さです。上に申し上げたテナント候補は一般的に高級取り業種になりますので、生活環境などを配慮している場合が多く、それらを求める従業員も多いのが傾向です。よって、ポテンシャル市場が絞り込めた時点で、現地を訪れ、生活環境上重要なスーパー、レストラン、娯楽施設(バー、映画館などだけでなく自然環境におけるスキー、ピクニック、ハイキングコースなど)の状況も調べます。ただ各市場の長期的ポテンシャルを判断する上で、スーパー、レストランやマンションなどは数年あれば変化可能な項目です。よって、長期投資ポテンシャルを検討する上では、変えられない項目(自然環境)や、大きな土地を必要とする新規大学などの誘致可能性や大掛かりなインフラ整備の可能性などを検討する様にしています。そして、現地入りする前には、必ず「誰」に「何処」で「何」を聞くか把握しておきたいものです。

3)利益抽出方法

進出市場を査定する上で一番重要なポイントは利益を抽出出来る経済環境と事業構築が可能かを判断する事です。読者企業の現在の強みが海外に進出したときに、そのまま活きるのか、収入に貢献出来るのかは大事な判断項目だと思います。ただ、私はこれが一番の難関で一番把握するのが難しい項目だと思っています。不動産でもそうですが、古い物件が多いから、弊社の様に改築専門会社に優位な市場かといえば、常にそうではありません。例えば、古い物件が多く存在するのは、1)現地の経済基盤が形成されておらず、改築した後の家賃が現市場では負担不可能であったり、2)ターゲット企業は我々の知らない所で市場に問題があると思っている(よって企業数が増えない)、3)行政的にハードルとなるプロセスが存在するなど、見えていない部分が存在するかもしれません。しかし、この点が把握出来なければ、利益が抽出可能か把握出来ません。ですから弊社としても、米市場へ進出する為には時間をかけて、複数の弊社の条件に合う市場へ出向き自分たちの足で調査してみて回る事が必須だと思っています。

そして再三申し上げておりますが、弊社のプロジェクトに参加してくれる「チームを形成する」ことは一番大きなハードルだと思っています。彼らの参加が各プロジェクトを成功に導くことになりますので、考えや気の合うチームを構成することは私にとっても最重要任務です。既にバンクーバーのチームからの紹介などを受けられる様に段取りをつけましたが、それら紹介がうまく進むとも限りません。ですから、バンクーバーに渡った当時と同じ様に、紹介を辿って人選していくことになると思っています。紹介があっても実際どれだけの時間が掛かるかは、やってみないと分からないと思っています。ですから、我々がアメリカ市場へ進出できるのはまだ3〜4年先の事だと考えていますが、次のプロジェクトが終わる2年後にはその先のアメリカ市場について具体的なプランを立てて人材発掘を始める必要があると考えています。

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