この度次期物件購入に向けて準備をし出しましたが、今回は組合を組成し投資家を募る事にしました。物件は弊社の方で購入してから組合を開始するので、リスクは大分軽減されるとみています。その上で2年間前後の改築プロジェクトを考えている為、それなりの2桁リターンが狙えると考えています。前回の1270 Frances Street再開発においても組合を取り入れましたが、今回は現地のカナダ投資家のみならず、日本からの投資家も募る方向で動いています。今回の数億円相当のプロジェクトにおいても、過半数は現地バンクーバーの投資家が参加する事になりますが、数名の投資家は日本から参加して頂ける事になりそうです。

そこで今回は我々の過去4年間の経験を振り返り、「日本からファンドレイズする難しさ」と題して色々お話ししてみたいと思います。今回のブログはまさに現在進行形のトピックですので、我々としても学習曲線(Learning Curve)はまだ急勾配です。読者の皆様からの意見やアドバイスを頂ければ、今後のために役立てたいと思いますので、宜しくお願い致します。

投資募集と言ってもトピックの幅は広い為、今回は次の3点についてお話ししたいと思います:1)カナダの知名度、2)海外投資への理解、3)事務手続き上の理解です。

1)カナダの知名度

弊社の中で最も大きな壁はカナダという市場の知名度でした。そしてこの知名度問題は現在も継続して直面している問題です。今までの営業活動の中でよく聞くのは、「カナダには家族旅行で行った事がある」もしくは「子供(孫)が留学した事がある」という事でした。そして皆さんには毎回カナダにまつわる経験についてとても楽しく有意義にお話しして頂きました。よって、カナダという国についての知名度も全くないわけでは無いと思っています。

しかし、カナダやバンクーバーをビジネス拠点や投資先と考えると、理解は一変する様です。今までにお話しさせて頂いた方々から最もよく聞くのは、「カナダってどんな国?」もしくは「カナダの経済って何?」などという基本的な理解度が薄い事でした。その都度、経済、税、生活面についてお話しする事で、カナダやバンクーバーについての理解を得て頂きましたが、この基本的情報の説明が不必要だったミーティングはなかった程に、カナダについては知られていませんでした。読者の皆さんにはカナダがビジネス拠点としてのイメージは湧きますか?何が足りないからそのイメージが湧かないのでしょうか?

この点については、東京在カナダ大使館や政府経済窓口などにも問い合わせ、カナダの方針や広報活動について確認した事があります。結果的には、カナダは「来るのは歓迎するが、去るのも自由」という営業努力ゼロという受け身のものでした。よって、東京のカナダ関連機関でも、目立った企業や投資誘致活動は一部の鉱山資源に限られており、個人レベルでは留学支援のみになっているとの事でした。世界の舞台第一線で活躍する姿勢はなく、大らかな国柄と国民性が象徴されている様でした。

私からみるカナダも、正直投資先という面では限定された市場になってしまうと思います。今までにもお話ししてきた富裕層に対しての贈与税や相続税がない事もその一つですが、現地法人を設立させ税法上居住者としてみなされない限り、投資利益に対しての税金は高額についてしまいます。また、日本への利益の完全還金を試みる場合では、当初に納める源泉徴収の回収を含めると、一年ほどの時間が掛かってしまいます。(利益の75%までは即送金が可能です)よって、一般的には、中長期投資目的で資産を工面する事ができる投資家の方が有利になる仕組みになっています。ですから、実質的な居住地は日本であっても、カナダに法人設立が出来る個人(企業)でないと、カナダの税制や経済政策を十分に使いこなす事が出来ないかもしれません。ただ、現地法人設立といっても、バンクーバーのあるBC州では同日中に設立が可能で申請及び管理費も年間で$2,000(約16万円)以内で済みます。また、カナダで支払った税金は租税条約に基づき、日本国内で支払う税金と調整できるのはカナダのメリットかもしれません。

カナダの政策は左寄りの為、振興事業に対しての支援は手厚いです。例えば、映画やテレビ制作及び関連事業に対しては、誘致のための支援だけでなく、人材雇用目的の支援もされています。また、ハイテク(IT、環境、新技術)や医療関連事業に対しても政府からの支援と関連金融機関であるカナダ開発銀行などからの支援金が準備されています。この様に、カナダは個人としての金融商品に対する投資には歓迎的ではなく、カナダという国を活性させる可能性のある業界レベルでの事業者に対して手厚い支援をしています。だから個人レベルでの投資家には、カナダの知名度が低いのかもしれません。

ただ、カナダ(バンクーバー)の経済効果も知名度が低い理由なのかもしれません。例えば、アメリカとカナダの国内総生産額(GDP)を見比べても、カナダがUSD1兆7360億に対して、アメリカはUSD21兆4300億と約12倍の差が出てしまいます。下記不動産の供給量を見てもカナダとアメリカの市場サイズの差は一目瞭然です:

都市名 不動産供給量 特徴
トロント 250,344,000万平方フィート(23,257,000平米) カナダ金融中心都市
ニューヨーク 456,428,000平方フィート(42,403,000平米) トロントの約2倍
バンクーバー 72,412,000平方フィート( 6,727,000平米)
シアトル 147,801,000 平方フィート(13,731,000平米) バンクーバーの2倍

そして比較として東京と比べてみると:

都市名 不動産供給量
東京都(港区、中央区、千代田区/3区のみ) 512,684,000平方フィート(47,630,000平米)

人口においてもその差は歴然です。カナダの全人口の37百万人に対して、アメリカの人口は328百万人と約10倍の差があります。やはり数値から見ても、カナダがアメリカの北側隣国として位置している事は投資先アピールとしても難しいのかもしれません。

ただ、カナダにも投資手法としての魅力は存在しており、不動産のキャピタルゲイン税率は13.75%と低く、インカムゲインとキャピタルゲインの相殺が未だ可能です。よって、アメリカの旧中古木造アパートの減価償却政策の取り入れなど、日本の資産に対してのグローバル税戦略はカナダでは困難ですが、国内資産を取り入れた税政策にはメリットがある節税方法が存在します。

今回は全てのポイントについてお話ししていく予定でしたが、一番の問題点であるカナダの知名度で大幅なスペースを取ってしまった為、他のポイントについては次回に持ち越したいと思います

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