今回のブログでは「海外投資への理解」についてお話ししたいと思います。日本と海外では投資家が「常識」としている習慣もかなり違う様に思います。ここ4年間の我々の活動では、それらの違いを埋めるのに苦労したのは事実です。例えば、投資案件への考え方、投資期間、リスクと法的違いなどは特に大きな違いだと感じました。もちろん、既に海外投資環境に慣れている投資家の間には違いは存在していないのも事実です。私共としてはこの様な海外投資に対して理解ある投資家とのネットワーク及び、バンクーバーの不動産の醍醐味と可能性を知って頂く為の活動をしてきましたので、投資家と言っても一括りで纏まらないことも理解しています。
2-1)投資案件への考え方
西洋の観点で見る投資では、他の投資家が知らない投資案件に価値を感じますが、日本の投資家の間では安全性という意味からも既に知られて「安全性」のある投資案件が好まれる様です。例えば、一昔前(今でも人気がある様ですが)東南アジアの大型マンション開発への区分所有投資が人気でした。その際にも年間15%ほどの平均投資利益率が謳われていたのを覚えていらっしゃる方もいると思います。この際も平均市場ではこの様な利益も確保できた様ですが、大型案件で一斉に投資が開始され、同時の竣工と売却を通して出口を望む事で、投資家同士が購入者を競う事になり、多く投資家が期待していた利益を失ったそうです。
他の投資家が参加している事で精神的な安心を得る事は出来ますが、同時に競争率を上げ、不動産開発の様な出口が決まっている投資案件では、次にお話しする期限という要素を考えると、勝ち抜ける事が困難になってしまいます。
我々の対象市場であるカナダの不動産投資に対しても、「知らない」、「他の投資家がいない(=人気がない)」という理由で候補として見られてきませんでした。
これらは決して日本人の投資に対しての考え方を非難するものではありません。しかし、各投資案件の詳細と仕組みを理解する必要はあると思います。また、カナダを始めとする北米のベンチャーや投資機会の斡旋では、投資チャンスは「限られた機会(仕組みや投資口数面において)」を謳い文句にします。なので、他の投資家が参加する事で、投資家が増え、自分の利率が水回ししたり(上記大型マンション投資の様にリスクが逆に上昇したり)、利益が下がる事に対して懸念を抱くのが一般的です。よって、ベンチャーや不動産投資でも、最初に参加する投資家グループへの利益率はその後参加する投資家への利益率より高く設定してあるのが普通です。
2-2)期間
一般的な経験では日本人投資家は許容投資期間が北米投資家より短いと思います。我々のヒアリングにおいても、多くの日本人投資家の許容期間は3年まででした。特に不動産のクラウドファンディングなどでは、1年から2年の期間が多く、事業者(デベロッパーなどファンドを組成した企業)は複数回の投資家の入れ替えを想定してファンドを組んでいるそうです。期間が短いという事は投資家にとって、早期資金の回収が可能になりますが、その分事業運営経費がかかり、投資家への利益が減るという事になります。よって、多くのクラウドファンディングでは一桁台半ばの投資リターン率になってしまうそうです。
弊社のプロジェクトは改築なので、3年以内という期間はクリアー可能ですが、多くの不動産の場合は通常の収益は確保出来ても、投資の本来の醍醐味である資産価値の上昇は3年間ほどでは得られないのが現状です。逆に運営型不動産投資で3年以内に売却すると保有期間が短過ぎることから、次の購入者に足元を見られ、売却価格アップが不可能になる場合も多くあります。
これはベンチャーファンド等でも同じで、どの資産募集時に投資を行うかにもよりますが、5年から7年ほど掛かるのは通常です。弊社でも幾つかの第三者のベンチャーファンドに参加していますが、シリーズAで既に5年が経過しており、この案件についてはさらに数年かかる見込みです。
2-3)法的環境の違い
さらに日本と海外で大きな違いは「投資家保護」の定義にあると思います。これは投資の詐欺行為が多発している事からでもあると思いますが、日本では「投資家保護」は大きく括ると、失敗した投資に対しては投資家の投資資金を保護するという意味が含まれていると思います。そして、多くの場合には経営破綻など投資経営上の失敗であっても、投資家の自己責任ではなく、事業者責任が問われてしまう様に思います。投資というものは本来リスクを伴い、自己責任が各々の調査を行い判断するべき事業です。しかし、日本の場合には、投資家の判断責任を問う事が、とてもおおらかに設置されていると思います。
北米では投資はリスクが伴うものであり、各投資案件への参加は投資家の自己責任になるというのが一般的考え方です。そして、北米での「投資家保護」というのは、事業者の明らかな詐欺行為や刑法的違法行為が働いた場合のみに適用されます。よって、一般的な事業者の経営上の破綻や廃業では投資家保護制度は適用されません。
もちろん稀に詐欺目的で投資資産を募集する事業者もいますが、これらは刑事事件となり捕まるのがオチです。その様な中、事業者はその先の投資資産募集チャンスも考え、詐欺目的で募集する事は、自らの信頼を失い、企業を倒産に追い込む事になるので、騙す様な行動はほとんど耳にしません。
それ以上に厳しくなっているのが証券規制法やそれに関連する条例です。カナダにおいても「投資家保護」を重視する上でも、事業者に対しての法令やプロセスは年々厳しくなり、事務的行政処理に追われてしまいます。そして保護を重要視する結果、事務的作業や報告義務が強化され、経費が高騰し投資家への利益を圧迫してしまいます。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
アマゾン: 「家業を継げなかった三代目、継がなかった三代目」枡田耕治
楽天ブックス: 「家業を継げなかった三代目、継がなかった三代目」枡田耕治