今までカナダのビジネスチャンス、海外投資への理解と触れて来た日本からのファンドレイズについてのトピックも、今回は運営や構造についてお話ししたいと思います。特に、構造上の仕切り、税的理解と運営上の理解という3点に絞って、お話ししたいと思います。これら点については、北米内でもアメリカとカナダでは違いが存在し、カナダのシステム上の難しさと考え方の違いが浮き彫りになると思います。

3-1)構造上の仕切り

カナダではSPC(特別目的会社)などを取り入れた投資方法が盛んです。SPCは設立が容易な上に、税法面でのメリットも多い上に、運営やメンテナンスも簡単である事がメリットです。しかし、組合をSPCとして取り入れる場合には、組合参加者が全員税法上カナダの住民である必要があることは既にお話ししました。実際の居住地は海外も可能ですが、投資家として出資する場合には、現地BC州に法人を設立してそこから投資する必要があります。海外投資慣れしている投資家にとっては、ごく一般的な現地投資会社の設立ですが、海外から直接投資が出来る地域も未だ多い為、成熟した市場へのアクセスは未だ仕切りが高いと思います。また、海外から直接投資が出来ると言うことは、現地当局への登録や納税義務の執行が困難になる事ですので、投資家勧誘の目的は金融的収益の徴収ではなく、国内の発展目的になりがちです。

カナダの現状については既にお話しした通り、国内への有益性を強調している為、有限組合などでも税的徴収を厳しく行なっていると同時に、投資家保護制度などのシステム的に安定した投資市場の構築を強調しています。よって、会社の設立や継続はとても簡単に作る事が可能なのですが、現地会社を組ませるプロセスは大きなハードルとして多くの投資家に残ってしまいます。

また、SPCと言っても、投資家募集条件などでは日本同様いろいろな枠組みが存在します。例えば、各ファンドのサイズでも49名以下の組合の場合には、簡易募集方法の適用が可能になり、証券取引委員会への申請義務も省略されます。また、募集対象者も経験ある投資家対象であれば、一定の条件をクリアする投資家を募る事で、報告義務が免除されます。よって、これらは日本の組合組成や募集条件と似ていることがわかると思います。

3-2)税的理解

既にカナダについてのブログでも軽く触れましたが、カナダでは現地企業である事で多種多様な税的優遇制度が適応する事が可能です。日加租税条約上の税的優遇制度も適応する事により、合計利益の75%は即還金が可能になります。そして、残りの25%についてはCanada Revenue Service(カナダ国税局)に於ける審査の為に一度徴収されます。事業上の利益なのか、投資上の利益なのかによっても、徴収される税金額は変更しますが、一年から一年半後にはこの金額から租税条約の5%を除いた金額は投資家が指定した日本の口座に振り込まれる仕組みになっています。また、租税条約適応金額ですので、カナダ税務局に支払った5%分の租税条約上の徴収金額は日本における確定申告の際に調整される事になります。

これは投資からの利益分ですが、もちろん投資元本や融資の場合の元本は即全額還金が可能になります。融資の際にも、源泉徴収が徴収され残高については日本への送金振り込みが適応されます。

またCanadian Controlled Private Corporation(CCPC)と言う売上50万ドル以内の企業に対しては、州政府の税金も大幅に控除され、通常は12%の州税も2%になります。よって、連邦政府レベルの税が現在15%ですので、BC州における小規模企業の税金額は17%になります。これは組合にも適応され、組合員の中でCCPCに適応する組合員に対してはこの条例が全員適応され、減税に繋がります。よって、この構造を可能にする為にも、日本に住む投資家にもBC州にて現地投資会社を設立してもらう必要があるのです。海外の仕組みを理解するだけでなく、自分の手の届かない所、完全な理解が得られない環境で会社を設立するコミットメントはいくら投資機会が現在の日本の環境では得られないものであっても、納得して頂くには非常に困難なポイントです。

3-3)運営上の理解

通常の海外投資では一任管理案件が多いですが、一任勘定で管理される海外の投資案件に参加するのは塀が高いと感じる投資家も多い様です。現在の日本初海外の投資案件に於いては、国内のポイント企業が組んでいる事が多いですが、一任管理案件の領域を超える投資家からの連絡が多く寄せられるのも事実です。一任管理の投資家理解を得るのは事業者としてはとても重要で、多くの細かい質問に対応する事で管理費が高騰してしまい、投資家の利益に食い込んでしまう事になります。もちろん、事業者もこの様な状況を見越して、フィーを設定していますが、この労力にかける労務が省けることで投資家への還元が増す事は言うまでもありません。

また、北米で投資組合が融資を受ける際、海外から直接参加している投資家がいる事は大きな懸念事項となります。これは書類提出までに時間が掛かったり、債権者の指示を拒む投資家がいる事が大きな理由です。指示を拒むという事については、投資家の投資先社会の理解がなかったり、融資獲得や返金の際の流れについて理解が乏しいのも一つの理由です。この様な理由からも上記で述べた現地企業からの参加が融資条件になる事が多い為、海外からの参加は実質上不可能である事が殆どです。

また、すでに述べた源泉徴収の納付についても、投資家が海外からの直接参加者である事で、組合の手続き負担が増えてしまいます。例えば、現地企業の投資参加の場合には、利益を全額カナダ国内の投資家に配当する事ができますが、海外からの投資家がいる事で(もしくは海外への送金依頼が起こることで)、組合の責任としてカナダ税務局への申請と納金が必須になります。また、海外の投資家がいることで、毎年の税務局への報告書の量も増えます。組合のメリットの一つは源泉徴収の報告義務は各投資家に移行され、各投資家の源泉徴収と共に組合からの利益分も納金される事になるので、税的オフセットが出来る事です。よって、投資家が税的観点から海外参加になる事で、減少してしまいます。

この他にも海外投資を行う上での投資家の理解が必要になる項目は存在しますが、北米の様な成熟された市場では短期のゲインを狙うのは難しいと思います。よって、成熟された市場(特に不動産を使った投資の場合には)長期的な投資戦略を描く事が重要になります。海外投資が長期戦略として含まれていない投資家には、長期観点での戦略構築の必要性の説明を理解頂き、その上で北米における不動産投資のベネフィットをご理解頂くのは投資というもの自体の考え方を変更する様なものなので、事業者としてもハードルは高いです。

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