前回までは日本から組合員を募集する上での難しさについてお話ししましたが、今回は組合運営事業者からの観点で組合を成功させるための要因についてお話ししたいと思います。組合の「成功」の定義についてまず触れ、その後に事業者観点からの成功として:1)戦略、2)運営、3)ポジショニングについてお話ししたいと思います。もちろんこれは弊社にとっての成功の定義ですので、各組合への投資をご検討される場合にはその内容がそれぞれ異なる事をご理解ください。

1)事業者としての「成功」とは?

では、まず事業者としての「成功」とはなんなのでしょうか?それは、まず第一に事業者としての収益最大です。投資家の皆さんを前に言うのも恐縮ですが、事業者としての収益確保が今後の事業展開を可能にし、更なる組合組成を可能にします。これなしには事業者としても組合を組成する事はないでしょう。その上で、どの様なフィー構造になっているか、どの様なものに対してフィーを徴収しているかは投資家として把握し見比べる必要があります。

フィー構造(利益分配)上典型的なのは1)利益の一律、2)利益率に応じたフィー率が存在します。一律の場合には20%あたりが日本国内の妥当な数字の様です。また、利益率で変動する場合にも、投資収益率(Return On Investments: ROI)で計算される場合と、内部収益率(Internal Rate of Return: IRR)ベースで計算される場合があります。弊社の場合では内部収益率ベースで提示し、利益率に応じた段階的徴収構造にしています。しかし、IRRは時間との競争になりますので、不動産の様に中長期に渡るプロジェクトでは、IRR換算は組合の投資リターン率にマイナス的影響を及ぼします。また、IRRは一般投資家間では使い慣れていない事も多いので、計算の簡素化(よって理解の向上)という意味でも、ROIベースの利益換算方法を使ったりしています。運営型組合などでは特にROIベースが多くなります。

フィー徴収項目についてですが、これも各組合によって異なります。典型的なものとしては、物件購入に対してのフィー(Finder’s Fee)、購入事前調査に対してのフィー(Due Diligence Fee)、融資確保に対してのフィー(Mortgage Obtaining Fee)、工事管理者費(Construction Management Fee)、年間管理費(LP/AM Management Fee)、売却に対してのフィー(Disposition Fee)、事業者報酬(Promote Fee)などがあります。この他にも物件管理を誰が行うかによって、物件管理費(PM Fee)や仲介費(Brokerage Commission)などを徴収する場合もあります。PM Feeはテナントへ請求する仕組みが多いので、組合の利益には影響しません。(トリプルネットの場合) フィーの項目も複数ありますが、大事なのは、これらの合計割合と事業者及びその関連会社(事業者は殆どの場合特別目的会社になるので内容が存在しません)からの投資参加比率です。

組合の投資戦略も大きく影響しますが、有限組合員(limited partners: 各投資家)以上に事業者が儲けるのは如何なるものかと思います。よって、事業者としても十分な収益を上げる為には、フィー率や項目を増やしたり、複数の組合を同時進行させたりしています。ただ、現環境における不動産運営組合では二桁利益を排出するのは至難の業になりますので(日本を含める北米、欧州などの発展市場では)、やはり投資家利益が圧縮される場合が多い様に思えます。弊社においても、カナダ・バンクーバーにおける通常の一般的運用利益率は3%前後(現金投資の場合)になってしまう為、望ましい事業収益を得る為にも、改築や再開発事業を通してキャピタルゲインを狙う事にしています。また、改築によってキャピタルゲインが発生しても、その後運営目的の保持で運営期間が長引く分当初のキャピタルゲイン益は水回しされてしまいますので、短期収益を最大化する為にも弊社では早期売却を出口としています。組合利益を二桁台などで提供する事で、有限組合員からも納得して頂ける様な投資利率を可能にする分、弊社では事業者収益を徴収しています。

ただ他の組合及び弊社の今後組成する組合に対しても中立な立場で居続ける為に申し上げますが、投資利益が高くなれば、それだけリスクも高くなると言う事です。そして不動産投資は流動性観点からもリスクが高い投資案件です。ですから、その上にリターンが高いと言うのは、リスクレベルも高くなると言う事です。ただ、不動産は消滅しない資産(土地)がついていると言うメリットは存在します。よって、弊社のキャピタルゲイン狙いの組合においては、バンクーバーの様な右肩上がりの市場条件がマッチした状況のみ適応可能になります。今後弊社が狙う米国北西部においての投資においては、改築型も進めて行きますが運用型が主になると見込んでいます。そして、随時の改築を施しながら、運用物件として利益率を向上していく手法を狙う事になると思っています。

2)その他のポイント

また、事業者観点からの「成功」と言う意味では、上記の他に継続した組合組成が可能であると言うことがあります。これには投資家の満足度が大きなポイントだと私どもは考えています。この中には投資期間やターゲットリターンが当初の投資目論見書からかけ離れていない事や投資事業内容が常に明確で情報が随時開示されている事などがあると思っています。また、弊社のプロジェクトの場合には、海外である事も不安やリスクの一部になると思っていますので、当初の説明が重要だと考えています。ただ、海外や不動産と言う投資案件に対しての投資家の知識不足は通常存在しないリスクや問題をさらに起こす事になりかねないので、弊社のプロジェクトでは入り口の参加価格を現在は高額に設定する事で、経験者やそれだけの資産準備が可能な方を対象とする事で、出来るだけのリスクを軽減する試みを行なっています。

同時に事業者の投資戦略や投資理念に対して共感して頂ける投資家を募る事は長期組合の組成と成功にも大きな影響をもたらすと思っています。投資ですので、全てのプロジェクトにおいて目論見書通りに達成する事は現実的な考えではありません。ですから、投資利益の金銭額の追求のみに固執するのではなく、長期な事業者の思いや戦略と方針に対してご理解頂き共同でそのゴールに向かって歩んで頂く姿勢が弊社は大切だと思っています。よって、弊社の組合では不特定多数の投資家を募る様な事は現在行なっていません。ただ、弊社の考えの一環である、日本の皆様に国外における資産運用による資産蓄積の安定化の実現という目的が御座いますので、今後多くの投資家様対象に商品を提供できる様に商品をご提案していきたいと思っています。

今回は事業者にとっての成功という定義で終わってしまいましたので、次回さらに詳しくお話ししていきたいと思っています。

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