今回は前回の続きで事業者の観点から各プロジェクトの価格を最大限にする方法についてお話しして行きたいと思います。今回のブログでは次の3点についてお話しします:1)戦略、2)運営、3)ポジショニングです。
前回の弊社が考えるプロジェクト(投資組合)の「成功」をベースするとやはり、一番重要なのが上に挙げた3点になります。その上で戦略とポジショニングの違いをここでクリアにしておきたいと思います。我々の考える戦略とは、各投資組合の方向性と達成しようとしているゴールの姿です。簡単に言えば、賃貸運用型なのか、改築・再開発型なのかという事も含め、どの様な投資概要を用いるのか(ターゲットリターン率、期間、市場など)を検討するのが戦略だと思っています。
反対にポジショニングというのは、対象物件を販売(賃貸)する上での市場内での立ち位置を意味しています。よって、ポジショニングには対象販売先候補、賃貸先候補が入ってきます。弊社としては常に最終ユーザーの使い勝手を想像しながら考案して行きますので、プロジェクト自体のデザインや機能性もポジショニングの一環として考慮するべきことと考えています。販売・賃貸手法になる広告やオープンハウスの方法などもここに入ってきます。そしてメディアへの影響もプロジェクトによっては出てきますので、プロジェクトの立ち位置向上という意味でも検討しておく必要があります。
これら違いを明確にした上で上記の3点についてお話を続けて行きたいと思っています。
1)戦略
既に申し上げた様に、戦略というのはプロジェクトの概要になります。我々としては、概要が明確になる事で大凡の求められるべき利率(Expected Return)の検討がつきますので、その時点で考案事業の妥当性について精査できる様になります。よって、概要だけでは数パーセントぶれる可能性はありますが、このブレは10%を超越するものではないという事です。また、Expected Returnの評価が通常の範囲から大きくぶれる事で(例えば改築は通常年率15~20%が取得可能なのに、5%しか見込めないなど)各プロジェクト自体の妥当性も精査できる様になります。その際の「妥当性」については、過去の経験値や市場の熟知度などで精査できる様になります。
通常の数値を理解している事で予算などについてもさらに細かい分析が可能になり、プロジェクトの成功性を高くすることが可能になります。例えば、プロジェクトの予測上の「大幅なずれ」や「通常以上の低利益率」などの原因は、購入価格が高価過ぎること、改築などの費用が通常の範囲を超えている事などが挙げられます。また、逆にExpected Returnが高すぎる場合には、出口の販売価格が寛大(甘すぎる)すぎる事が挙げられます。これには、予想賃貸価格が高額過ぎたり、賃貸関連価格(TIや誘致期間)が少な過ぎたり、物件価格計算上の値(キャップレートやディスカウントレートなど)が低過ぎたり(よって価格が高くなりすぎる)などが挙げられます。
弊社では、この様に現市場ベースで数値を出すことで、まずは1)予測数値が外れていない事が確認でき、2)初期段階での戦略の精査が可能になります。ここには仲介やゼネコンからヒアリングした数字も含まれますので、さらに弊社の予算や工事範囲からくる価値上昇の最大化が賃貸価格や販売価格に比例されるかが見極められ、プロジェクト自体の妥当性や是非の判断が可能になります。
不動産プロジェクトは時間がかかりますので、どの様な状況も今後2〜3年間継続するとは限られません。よって、現状をベースとして、過去を振り返り、今後のトレンドを予測する事で、戦略が見極められます。現状をベースとした将来的不動産物件価格の最大化を図る事が可能になる事で、価値の最大化が現実可能になります。
2)運営
一旦プロジェクトが始まれば、よほどの場合以外には後戻りは出来ないので、現場での管理を含めたプロジェクトの運営が将来的鍵を握る事になります。特に予定通りのスケジュール、資材の調達価格、業者の現場入り予定などの確認を頻繁に行うことがプロジェクトとして竣工を延滞させることなく、完了するポイントになります。これをお読みになった読者の中には、契約されている事なのだから全て滞りなく進めるのが当たり前とお考えになる方もいらっしゃると思います。大きなゼネコンで毎プロジェクトごとに業者の入札を行う場合には、このような厳格なスケジュール管理も可能なのかもしれません。また、北米の文化がそこまで厳格に動くものではない為、延滞する原因は日本以上に存在します。例えば週末の作業は基本行われません。また、諸事情により、下請け業社が現場入りしない事も良く聞く話です(他の仕事がおしている、作業員に欠員が出たなど)。よって、この様に厳格な姿勢(契約書ありきで押し付け)をとる事でゼネコンを始めとする下請けの見積もりが高騰し、関係も悪化し、表面化しないコスト高騰がプロジェクトとしての成功をミスする原因になりかねません。
また弊社のプロジェクトが改築をメインに考えていますので、現場入りして実際に建物を解体してみないと現状が把握できないという状況が実在します。なので、ハンズオンな現場入り体制は各段階で速やかな判断を行う為にも必須です。これにより、その先の工程の変更や、最悪の場合にはデザインチェンジなどへの対応が可能になり、ロスを最小限に抑えることが可能になります。同時に、解体を行っていく上で、資材の節約や工程を省く事も可能になる場合も出てきます。これらの場合にも現地入りしていなければ、時間的節約と敏速な判断は不可能になり、せっかくの節約も現実化する事が不可能になってしまいます。
3)ポジショニング
各プロジェクトを高利益で遂行させる為にも、そして戦略を定める上でも、各プロジェクトのポジショニングは大事な要素です。既にお分かりかも知れませんが、プロジェクトではポジショニングは出口に値するので、戦略を決める上でも最初にポジショニングを確定する必要があります。
まずは出口と最終的な姿を確定させ、その上でデザインと行う改築の内容や導入する設備を定めます。この時点で大まかな改築の内容や予算の確定が可能になり、工期の目処も立つようになります。その上で、建築申請が建築家によって行われ、建築許可書発行と共にゼネコンによる業者の選定が行われ、改築工事に入っていく事になります。
やはりこのプロセスで重要な事は、将来的入居者(ユーザー)を明確にした上でデザインと求められる設備を検討する事です。現在の弊社の出口は売却ですが、売却価格はユーザーの入居意欲によっても影響しますので、我々の出口は売却であっても、あたかも継続的に所有し運営していく前提で全てを考える必要があります。このように一貫した考えを持つ事で、買主にもストーリーが描け、付けた価格に対しても納得して貰いやすくなります。売却する上でも価格や条件の交渉に時間がかかるのは避けるべきポイントですので、シンプルでストレートなストーリーは成功への近道とも言えると思います。
今回挙げた3点以外にも各プロジェクトを高額へ導く方法はありますが、弊社では戦略、運営とポジショニングがキーだと思っています。今後もこれらをフォーカスしたプロジェクト遂行を行なっていきます。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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