次のプロジェクトについてのブログのボーナスとして、現在のバンクーバー市場で一番高額を支払っている医療テナントを入居させる、または医療系企業に物件を売却する事を目標とした改築工事の内容についてお話ししたいと思います。今回のブログは既にお話ししてきた「次の不動産投資プロジェクトについて」と言うブログと少々被る所があるかも知れませんが、ご了承ください。その上で、物件の選択から始まり、改築内容、売却方法について簡単にお話ししてミニシリーズ最後の締め括りにしたいと思います。

1)物件選択

物件を選ぶ上で一番重要なのが、構造です。木造でもコンクリートブロックであっても、しっかりした建築工法に基づいた構造であれば、決して鉄筋コンクリートでなくても良いと私は確信しています。実際、バンクーバーでは近年の新築物流倉庫でない限り、鉄筋コンクリートで建設されたインダストリアル物件はほとんど存在しません。更に現在は木造建築が注目されており、弊社が着工しようとしていたプロジェクトも完全木造建築でした。

基礎がしっかりした構造物件である上に、改築工事の場合にはタパ(天井の梁までの高さ)が重要になります。医療研究でも高レベル研究を除けば天井高は12フィート(約3.65M)で足りると言われています。しかし、殆どのインダストリアル物件は最低でも15フィート(約4.5M)ほどの天井高が確保出来ます。そして、テナント誘致のセールス内容としても、15フィートは欲しいものです。

そして各ユニット用に搬入口が付いていて、数代分の駐車場が確保されている事です。やはりインダストリアル物件で特に医療研究などの場合には搬入資材も増え、セキュリティー面から搬入口のレイアウトには拘るテナントも多いです。また、トラックの荷台と同レベルの床設定になっている事がベストです。ロジスティック物件ではドックレベラーなどのトラックと倉庫床の高さ違いを調節してくれる設備も付いていますが、それ以外でドックレベラーが設置してある物件は少ないのが現状です。よって、高さが違う事で搬入用のスロープ設置義務が建築申請時に発生する事もあるので要注意です。また、搬入口数が足りないと、共用エリアが発生したり、物件使用上の効率が下がり、物件の魅力が減ったり賃料収入に繋がらなくなってしまいます。

2)設備

改築の利点は、デザインと工法によっては多彩な展開が可能になる事です。その中でも、一番重要なのが、供給電力です。製造業用の物件でなければ、既存供給量も低く、供給電力のグリッドに増量の余地もないかも知れません。しかし、電力会社との交渉で供給電力を増量してもらう(よって、市の変圧器のキャパを増量してもらう)事で、物件への供給電力は著しく増量することが可能です。でも市の変圧器を更新するには高額のコストが要され、数千万円相当の話になってしまいます。よって、数億円の小さな物件を購入してこの工事を行うのはメークセンスしません。このほかにも改築項目はあるはずですので、投資リターンが相当低迷してしまうと思います。よって、供給電力は一番重要な点であると同時に一番高額な項目でもある為、物件の選択時で要注意が必要です。

そして、具体的な供給量の話になれば、一パネルから最低400Wは欲しい所です。それも三相誘導電動機(3 Phase Supply)であるべきです。三相システムでは安定した電力供給が可能になりますので、現在のテナント層ではどの企業でも三相式の電力供給方法が「常識」になっています。一相(Single Phase Supply)である事で医療関連テナントを逃してしまう可能性は高いです。

また、各ユニット(スイート)内には、供給電力用のサブメーターを取り付ける必要があります。医療関連テナントであっても入居当初は面積需要が小さく一時的に又貸しする必要があるかも知れないからです。同時に電力関係ではコンセントや電力供給を各室内へどの様に供給するかは重要なポイントになります。最近多く見るのが、天井や天井をつたって設置されたラッキングに電源を繋げる傾向です。壁からでは距離が長く、通行の妨げになってしまいます。また床に埋めることは改築工事では相当のコストが掛かってしまうので、避けたい工法です。よって、一度供給パイプを天井の梁まで上げて、梁をつたって天井部から電源を各デスクや研究エリアに張り巡らせる直接設置法が好まれます。この方法では見た目もシンプルで整頓されたように見え、仕事の効率も向上しやすくなる様です。

建築コード上の義務だけでなく、シャワーや更衣室を設置するのはアメニティーを考慮するだけでなく、テナントの公的イメージ上昇にも繋がりますので、テナントには評価が高い設備投資です。特に医療や同等の高額賃料テナント(購入者)は若人で健康志向な社員の自転車通勤も多いため、シャワー付き更衣室は重宝される設備になります。そしてこれは賃料(販売価格)上昇にも繋がります。

3)売却方法

営業方法としても色々な方法があり、物件が大きければそれ相応のマーケティング予算を注ぎ込んで販売する事は可能であり、大事なポイントです。ただ、弊社の物件の様な10億円相当の物件では投資リターンが20%前後であっても高額な売却予算は避けるべきです。よって、20,000平方フィート(約600坪)の物件においては、物件の知名度を上げ、仲介業者を一人でも多く現地へ来場してもらう事が成功の鍵を握っています。なぜ仲介業者かと言えば、彼らが最終的な購入者を連れてくるからです。投資家が自ら弊社のドアを叩いて物件の購入を申し込んでくる事は滅多になく、仕事の効率としても望みは低いと思います。なので、弊社の業者も含め、仲介業者を重宝して対応することは販売の上で最も重要なことです。仲介業者は特にリレーションシップ・ビジネスですので、既存の関係は大きな意味をもたらします。

その為にも仲介業者のネットワークを使った営業活動、デジタル版でも構わないのでパンフレットと外観及び内覧のCAD展開を含めたビデオの作成は現実性をもたらす上でも必須です。

営業活動で一番大切なのは、相手に可能性と自らがそのスペースで働く姿を現実的に想像させることです。そしてそのスペースは購入者(オーナーユーザー)候補の将来的事業成功には必須である事を理解し納得してもらう事です。大袈裟な事と思われるかも知れませんが、全ては購入者の将来の成功という物語を作り上げることに掛かっています。

現実性を満たす為にもオープンハウスは必須であり、現地でスペースの対応性と可能性を醸し出す事です。その為にもオーナーは仲介業者を見極め、彼(彼女)らの人間性と創造性を見極める必要があります。

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