今回は、前回に引き続きIWGの仲介担当であるBell氏にバンクーバーにおけるシェアオフィスの価値や展望についてインタビューしました。さまざまな国のオフィス市場を実際に見て渡り歩いてきた彼の目に、バンクーバーのシェアオフィス市場はどう映っているのでしょうか?

KMPI: シェアオフィス(フレックスオフィス)業界はどの様な構造になっているのか?例えばビルオーナーとの賃貸借契約、ユーザー(顧客企業)との契約、その他典型的オフィス賃貸契約書には異なる点はあるのでしょうか?

最大の利点は経済的スケールでしょう。例えば、台所、受付や会議室は共有する方がそのスペース分の賃料を払って多くの場合を空にしておくより生産性が高まると思います。多くのサービスの様に、不動産管理会社に外注しておく方が事務方にインターネット、電話、コーヒーメーカーの修理や契約を任せるより経済的です。

契約面においても商業用賃貸借契約とオフィスサービス契約(シェアオフィス用)では大きな差があります。オフィスリース契約は長く専門的で、契約まで弁護士が入る事などで時間がかかります。賃貸借契約書が締結された後の内容変更は困難で費用がかかります。よって、ビジネスのニーズに対応していません。サービス契約は携帯会社との契約の様に簡単で柔軟です(北米の携帯電話契約の場合です)。

オフィスサービス契約は一定の不動産に固定させるのではなく、サービスセンター内もしくは別のオフィスサービスセンターへ移動(市内、州内、国外でも)できる自由と柔軟性を提供します。ユーザー企業は12ヶ月の契約で2週間しか経っていなくても、需要が変更すれば、我々(IWG社)のポートフォリオ内のオフィスであればどこにでも2日間ほどで移動できます。よって、柔軟なビジネス対応が可能になります。

同時にIWG社はビルのオーナーと直接賃貸借契約を締結し、各スペースもしくはビル一棟借りを行います。このプロセスは複雑でフレックスオフィス契約の方がはるかに簡素化されています。

一般的オフィス賃貸借契約書は長く通常では考えない様な条項も多く含まれています。用途、テナント工事、財務的健全性、工事期間、入居者権利やスペースへのアクセス権、頭金など通常の契約とはかけ離れています。また、ビルオーナーとの契約交渉の前にIWG社内でも厳密な市場調査を含めた審査が行われます。

KMPI: シェアオフィス業界の今後について。なにが変化をもたらしているのでしょうか?

Bell氏: まず始めに、典型的なビルオーナーとの直接賃貸借契約は変化しています。現在の需要から見てもIWG社は今まで以上に早い展開を繰り広げる必要があります。しかし、世界的にも大きな不動産ポートフォリオを拡張するのは簡単な事ではありません。今後は各ビルオーナーと利益シェアリングを取り入れたフランチャイズ展開も考える必要があります。

コロナ禍は大きな変化をもたらしました。IWG社のサービスで変化をもたらした例では、個人単位のスペースへの需要を考慮し、大きなチームスペースを縮小しました。

更に商品展開にも変化が見られます。例えば、フレックスオフィス会員制度はすごく人気です。これはオフィス利用回数券の様なもので、オフィススペースを必要な日だけ使うシステムです。またこのシステムは世界中のセンターで使えるので、リモート社員が1箇所のセンターに縛られる事なく、世界中どこにでも動ける様になっています。

ユーザーのオフィススペースの使い方にも変化が見受けられます。弊社のDesign Your Office家具プログラムでは多くのユーザーが個別のデスクより、心地良い会議用家具を取り入れ、社員のRTOを促している様に思います。ユーザー企業による各社のコミュニティー環境を構築する試みが伺えます。注目点は社員同士の共同作業やコミュニケーションを重視しているところです。私的ですが、ユーザー企業の社員は既に各自家で仕事をして来ているので、出社時はフェースツーフェースの関係を築きたいんだと思います。

KMPI: 業界の10年後への展望は?

Bell氏: 弊社は成長し続ける事間違いなしです。バンクーバーを始めとする小規模都市でもフレックスオフィスの占める割合が今後10〜15%程まで上昇すると見ており、世界大都市(ニューヨーク、東京、ロンドン、上海)でのトレンドを引き継ぐ形になります。IWG社の様なフレックスオフィス提供者は継続して顧客ニーズに合った、カスタムされたサービスを提供し続ける事が必須だと思います。もちろん競合相手や新規サービスも出現してくる事でしょう。そして、仲介業界やビルオーナーの位置付けも変わると思います。

シェアオフィスが入居するオフィスビル自体の変化を含め、提供商品やシェアオフィスセンターのデザインは「働く場所」がメインコンセプトではなく、引き続き「ライフスタイルの支援」が大きなテーマであると思います。ビルオーナーとシェアオフィス提供者は売り上げを折半する事を含めた協力をし合い、各企業の従業員のRTOを可能にしていかなければいけません。よって、商業不動産施設としてのアメニティー、共同スペース、人々の接点やイベントを更に重要視していく事になります。私点では、人々は自宅外での生活基盤を取り戻したいのだと思っています。人々は人間同士の関わりを求め、不動産としても社交的、技術的で将来的環境を求めていると思います。

交通網や通勤手段がもたらす都市開発や新規オフィスビル開発への影響には驚いています。自動走行車やカーシェアにより、CBDでは車重視ではなく歩行者重視の環境が提案され、建物とアウトドア間の流れも変化していくと思います。

さて、Bell氏へのインタビューはいかがだったでしょうか?我々も日本とアメリカに進出した際には、当初シェアオフィスの利用を検討しています。フレキシブルな働き方やコストを抑えることができると同時に、ワンフロアにさまざまな職種の人たちが働いており、普通であれば接点のない彼らとキッチンなどで気軽に談笑する中で新たなアイデアやコラボレーションの機会が生まれるなど、シェアオフィスの可能性は大きいと思います。これらもBell氏の言う「社交的、技術的で将来的環境」ではないでしょうか?

日本の関東部では雪が降っているところもあるそうですが、みなさま風邪などひかれませんようご自愛ください。
それではまた、次回のブログでお会いしましょう。

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