既に複数のイベントによる2024年の予測をお送りしてきましたが、今回は更に的を絞って2024年のバンクーバー不動産業界の状況をお伝えします。今では北米商業不動産業界を代表する団体となったNAIOP(NAIOP Commercial Real Estate Development Association)ですが、年始に行われるこの朝食会は1年のトレンドを作り上げるとも言われている行事で毎回満席です。
【バンクーバー不動産市場の現状は。。。】
・急な金利上昇
・売買物件数の激減
・金利上昇による資金不足
そして、多くの不動産市場とは異なり、バンクーバー市場の性質は資産価値の高騰市場(キャピタルゲイン)であり、キャッシュフローベース(賃貸収益)の市場ではありません。これはバンクーバーが未だ成長過程にあることを示しています。
また、バンクーバーの慢性的な問題点は
・行政のキャパシティが限られていること。建築申請に膨大な時間がかかっている。
・資金不足。カナダの投資の主要な原動力は機関投資家の資産参加が大きいが、現在厳しい貸し渋りが起きており、投資家や起業家が投資できない状況が継続している。
・インフラ不足。人口増加に伴い、学校、病院、公園や上下水道などの整備が著しく欠損している。
・地価も近年で50%低下しているが、それ以外のコスト(建築費、保険、固定資産税)が上昇しており、総価格では変化なし。
・現在は世代的な投資チャンスと噂されるが、一般投資家には難解すぎるのが現状。IRR(内部収益率)もコスト高騰で低下傾向にある。
ブログアーカイブより: キャピタルゲイン:住宅リノベーションプロジェクト編
【住宅の需要は満たされる事はない!!】
NAIOPは商業専門の業界団体ですが、住宅がもたらす影響があまりにも大きな為、今回は特別に焦点を当てた話となりました。
・現在、カナダ全体で345万戸の住宅が必要であるにも関わらず、バンクーバー圏だけでも25万戸の住宅が不足
・その上、年間30〜40万人の新移民がバンクーバーに流入中
そんな中、
・家賃は高騰、
・供給は需要を満たしておらず、
・空室率は歴代レベルを更新中
しかし、価格上昇にも限度があります。平均収入では住宅の購入は既に不可能になっており、近年の価格高騰で購買力が継続的に低下。よって、30年前は100万ドル(約1.1億円)で一軒家が購入可能でしたが、タウンハウスも購入出来なくなり、現在ではマンション購入も不可能です。賃貸でも、平均収入では2ベッドルーム(2LDK)の賃借は経済的に無理な状況です。
更なる問題は、住宅問題を深刻に考え、全ての行政(国、州、市)が関与しようとしますが、詳細を把握していない為、逆にボトルネックが起きています。(カナダは連邦政府制であり、国は主権を持たず、各地域行政が独自に対策。しかし、国からの援助が必須なため、連邦政府の関与が不可欠)
よって、住宅においては、冒頭で述べた慢性的な問題が解決されない限り、需要を満たすことは不可能です。
ブログアーカイブより: 今後の住宅投資戦略
【オフィスのチャンスは存在するが、忍耐と大きな懐が必要!!】
過去5年間、新規オフィスが竣工していないことから、空室率は減少傾向です。
しかし、オフィス業界の問題は賃借人を維持する費用が高額なことです。例えば、テナント工事負担やビル修繕などは定期的に必要ですが、回収には時間が掛かります。よって、現在は在宅状態が継続するため、知覚リスクが大きく、融資取付けが不可能な状態です。これまでは機関投資家が裏方の資金提供をしてきましたが、現在は高金利によるリスク高騰で貸し渋りが起き、代替の資金源(融資元)不足が業界回復を更に困難な状況にしています。
同時に販売価格に対しても値安感がない為、売買活動の停滞で業界活性が滞っている状態です。
→ 今後はプライベートエクイティーなどが代役をするかもしれない。
また、バンクーバーCBREの代表である進行役は、新規オフィスビルは売買されており、テナントもついていると説明。問題はB・Cクラスの中古オフィスビルに集中していると付け足しました。
ブログアーカイブより:北米オフィス不動産マーケットの状況
次回はインダストリアルとリテールについてです。
KM Pacificグループ代表取締役社長
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
アマゾン: 「家業を継げなかった三代目、継がなかった三代目」枡田耕治
楽天ブックス: 「家業を継げなかった三代目、継がなかった三代目」枡田耕治