昨日(4月25日)バンクーバーで恒例の不動産討論会(Vancouver Real Estate Forum)がありました。今回はその討論会からの意見や今後の流れについて、お話ししたいと思います。

結論的には、バンクーバーの不動産業界は、今後も引き続き注目を浴びる市場であるだろうとのとの事でした。それにはもちろん経済的や政治的要因や不動産業界のパフォーマンスなどを検討した上での結論です。

1)経済的根拠

カナダにとっての一番の問題は対米貿易と米経済状況です。近隣で経済大国の対米貿易比率は大きく、特にBC州にとっては、70%以上の輸出がアメリカ方面に流れています。両国間の貿易比率では一方的な黒赤貿易状況はなく、長年安定した動きになっています。その上、両国内での貿易関連雇用数も毎年約3%で成長しているとの事です。一時期はNAFTA(北米自由貿易協定)撤回の動きも見せたアメリカですが、ローヤルバンクの主任経済学者によれば、NAFTA条約が撤回されても、カナダへの経済的影響は4%の税金率の上昇と1%のGDP低下で収まると説明していました。

内示需要では、個人消費も継続的に増えており、ポジティブ・センチメント(精神的安定感)を生み出しています。特にBC州では、IT関連業界の成長がマイクロ経済の飛躍に貢献しており、FacebookやAmazonを始めとした、アメリカ系IT企業の継続的カナダ支社拡張は現地雇用(もしくは新移民の流入)を生むと同時に、バンクーバーの個人消費水準を促進させています。さらには、事業促進によるアウトソーシングなどから、現地IT業界の業績を向上させる結果にも繋がっています。

住宅ローンを含めた個人負債率は現在約170%ですが、上記同経済学者は、安定した雇用状況により融資支払い率も安定しているので、問題はないだろうと説明していました。ただ、今後はカナダ中央銀行の金利上昇や特別外国人住宅購入税や空き家税などの行政指導を主にした需要制限政策だけでは、市場のコントロールは出来ないと語り、新規物件の導入を強く促していました。

2)政治的影響

やはりネックなのは、トランプ政権の今後の動きです。NAFTA(北米自由貿易協定)の一時的撤回宣言もそうですが、アメリカ国内の経済回復だけをみている大統領の政策には、統一性がなく、四方八方に銃を打ちまくり当たったところを攻めるという矛盾で無謀な戦略に思えます。その結果が現在メキシコに対して及んだ政策だと思います。カナダ中央銀行においても、複数ある国内の金利据え置きの理由の一つとして、米大統領の一貫性の無い政策を問題点として挙げており、大統領自身が経済に対してブレーキ要因となっており、積極的な金利上昇策は不必要とコメントしています。

しかし、政治的要因の全てが悪影響を及ぼしている訳でもありません。討論会とは別案件ですが、BC州と米ワシントン州はこの度バンクーバーとシアトル(そしてポートランド)までを繋ぐ、高速鉄道建設調査を開始すると合同発表しています。これにより、現在の3時間半程の道のりは、40分ほどの通勤圏内に収まる予定です。2025年着工を目処としたこの政治的合同プロジェクトは、膨大な経済効果を齎し、西海岸を一層世界の経済ハブにのし上げる事になります。

参考:Cascadia Rail

3)不動産業界の状況

どのセグメントにおいても、一番の問題は供給量です。オフィスで4.6%、インダストリアルで1.7%、賃貸住宅で0.7%という空室率は驚異的で、市場の安定面から見ても依然として危険な状況が続いています。年内の金利上昇も噂されている中、カナダ中央銀行はオーバーナイトレートを1.25%に固定しており、今後も経済の拡張準備を見届けるのは中央銀行の役目と発表しており、低金利継続を促しました。よって、今後も不動産への資金流入は継続し、需要が供給を上回る実態は継続するものと見ています。

その様な中で、インダストリアルでは日本でも主流の複数階建てのディストリビューションセンターの建設が今回初めて現実的な話として取り上げられました。国境を超えたシアトルでも、プロロジスが北米最初の施設を竣工させましたが、賃料や施工上の問題などから、バンクーバーではまだもう少し時間がかかると思われますが、インダストリアル用用地の在庫に限界が来ている為、近い将来に対応しなくてはならない切実な課題です。しかし、バンクーバーの場合には、埋立地が多く建設上の金銭的施工問題で難航しています。

オフィスにおいては賃貸よりも区分所有が今後も主流という結論で話が進んでいます。しかし、バンクーバーの着工申請は時間がかかり、ここ3~4年主流になりだした、区分所有のトレンドにはまだ供給が追いつけていません。よって、ダウンタウンの新築区分所有物件では、予約販売時点で平米170万円という前代未聞の破格がついたほどです。これに駐車場は一台850万円で別売されたほどです。これは極端な例かもしれませんが、金利状況や供給不足が続けば、大幅な価格上昇は継続するだろうと議論されました。また一般企業も自社ブランドの見直しや市場性向上を狙い、高級オフィスに転入していると説明。しかし、一方的な供給時代は終わっており、ランドロードとしても、如何にテナントの業務を理解し、共存する姿勢を見せれるかが鍵と話しています。これからもテクノロジーが不動産業界の発展に大きな影響をもたらすとして、注目する項目としています。

今回は現地不動産専門家たちのコメントを交えた、バンクーバーの現在について書いて見ました。バンクーバーは価格が「高い、高い」と言われ続けていますが、これからも継続して向上する見通しです。

今週もみなさんと一緒に海を挟んで切磋琢磨していきたいと思っています。良い一週間をお過ごし下さい。