弊社の四半期市場ニュースレポートに於いても定番になっている商業不動産価格の継続した高騰と需要と供給のアンバランスな現状は、残念ながら当分続く模様です。よって、バンクーバーの商業不動産市場の現状は、1)2016-2017年間で約2百万平方フィートが現在の36百万平方フィートの在庫に加わりましたが、90%前後が竣工前に契約済になっています。その上、2)どのサブ市場においても、地価が通常の賃貸用再開発を不可能にしており、唯一可能な再開発は区分所有を目的とした売却用開発です。
1)供給の波
2016-2017年の間に竣工されたオフィス物件については、このブログでも何度かご説明しましたが、殆どがAAAやAクラスのトロフィー物件ばかりです。それも前回の導入から30年経っていますので、今回の竣工の波は待ちに待った結果となり、需要は供給を大幅に上回りました。また、ドミノ効果の様に空いたスペースには次のランクからのテナントが入り込み、結果AやBクラスのダウンタウンオフィスビルではテナント収穫のための改築が盛んに現在も行われています。しかし、需要面から、今だに貸し市場であるバンクーバーでは、空きスペースにおいても、テナントの希望にマッチするサイズがない事や大家からのテナント工事などのアメニティー負担が殆どない状況で、テナントの期待を「再教育」する必要が出ています。そして次の新規供給波は2019-21とされており、現在6棟のAAA/A高層ビルが予定もしくは申請中です。結果、全てが着工すれば、数年後には約150万平方フィート(15万平米)の新規ビルが竣工する予定です。このダウンタウンの波とは別に、ダウンタウンの周辺市場では、新規物件の竣工は約4万平方フィート程(4,000平米)に収まり、ハイテク企業や医療研究業界からの需要は多く取り残される結果になりました。また、郊外においてもダウンタウンとほぼ同量の新規供給が予定されていましたが、ダウンタウンでの需要に負けたり、建築費などの高騰から投資リターンが伴わずに着工されなかった物件も多く出ました。
現在注目を浴びているMt. Pleasant(ダウンタウンから南部)やRailtownにおいても新規再開発が予定されています。しかし、地価の高騰と建築費の著しい上昇に伴い、賃貸用物件は投資リターンが見合わない場合が増えて来ており、賃貸より区分所有プロジェクトを検討する場合が主流になってきています。例えば、Mt. Pleasantエリアでは地価が建築容積につき約$300-360/平方フィート、Mt. Pleasantを追っているRailtownにおいても$200-240/平方フィートで取引されており、その上に建築費として約$300-340/平方フィートが掛かる概算です。この計算ですと、Mt. Pleasantの場合では、約$65以上の賃料が最低必要になり、この価格はダウンタウンのAAAクラスの最高級賃料も超える価格になります。
2)区分所有への流れ
よって、現在は区分所有が唯一の不動産取得選択肢として残っている感じです。それでも価格は天井を突き抜けた高価格で取引されています。上記と同じMt. Pleasantは製造用インダストリアル物件が主流で家賃的には$25/平方フィートが平均ベンチマーク価格でした。しかし、現在の新規区分所有物件の販売価格は$950から$1,000を超えており、賃料からは計算不可能な価格になっています。Railtownにおいても、同じような状況が起こっています。新規物件の平均売り出し価格は約$750-800程で落ち着いています。しかし、購入可能物件が現在存在しない為、この平均価格も憶測価格でしかありません。実質の所、最終販売価格は$850-950ぐらいまで達するのでは無いかと思います。
これら恐怖的トレンドには、三つの主な理由が存在します。1)上記でも説明した様に、賃貸可能物件が不足している事、2)外国人投資家が住宅購入に掛かる外国人購入税を防ぐ為に商業物件を購入始めた事、3)オーナーユーザーの低金利によるリスクヘッジを含めた、資産確保・拡張戦略の遂行です。1)の理由はすでに上でも述べているので、説明不要だと思います。2)については、以前にも書いた住宅購入用外国人購入税の導入により、住宅購入が著しく高くなったことが原因です。よって、外国人でも税が掛からない商業物件購入に中国などの個人投資家が便乗し、現在購入意欲を注いでいます。香港系投資家などは、リテールを含むオフィスやインダストリアル物件購入には投資メリットがあると判断している様です。3)は今までもお話しした低金利状況からくる投資意欲の上昇と長期的資産の構築意欲からくるものと見られています。
よって、区分所有への需要もこの先継続するものと見ており、今後は特に中国系外国人投資家による住宅への投資が減る分、商業物件(竣工物件)を購入する動きが目立つと思われます。
では今週も皆さんのお仕事が捗る一週間になります様に。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
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