不動産投資家の皆さんは、各不動産投資戦略についてご存知だと思います。これから3回は各シナリオをバンクーバー市場に当て嵌め、各戦略の是非についてお話ししたいと思います。

短期間でキャピタルゲインを狙う方法

では、まず今回は、バイ・アンド・セル・シナリオで購入後、可能な限りの短期間で物件を売却しキャピタルゲインを狙う方法を、バンクーバーの現在の市場に当て嵌めた場合のケーススタディーをお話しします。なお、次回のブログで区分所有を使った売却出口について話しますので、今回は単純に物件全体を売るシナリオについてです。また、今回のバイ・アンド・セルの投資期間は約3年前後を期間としてみています。

今までのブログでも何度か説明しましたが、バンクーバー市場は現在も右肩上がり状態です。その理由は、次が大きな理由だと、私共は考えています。
1)世界経済が不安定である為、安全な投資先を探している(今後さらに不安定になっていくと予想される)
2)カナダの金融政策が安定していて、国家的に安心出来る
3)住み易く、環境的にも恵まれているので、移住を目的とした資産の流入が多い
4)内示需要が多く、今までも満たされていない既存の需要が存在する

貿易需要と投資資産の流入

もう少し付け足すと、カナダの中央銀行は意図的にカナダドルを下げ、貿易需要と投資資産の流入を行なっています。アメリカの連邦銀行は既に金利引き上げを行い、カナダ国内でも、今年と来年で4から5度ほどのレート上昇が見込まれていますが、同銀行総裁は、世界的経済の不安定さと、これからが中小企業の設備投資開始時期と説明し、現在もプライムレートは1.25%で据え置き状態にあります。これが、貿易と国内から経済への信頼に繋がり、消費は継続して上昇、雇用も安定して増えています。また、リーマン・ショック時の数時間という敏速な金融対応が投資家の信頼を現在でも確実に得ている上に、国、州、市のAAA信用格付けにより、資産の流入は継続的に起こっています。

バンクーバーとトロントの商業不動産市場

その中で、バンクーバーとトロントの商業不動産市場が著しい脚光を浴び、加熱状態にあります。しかし、各市場での投資家性質は異なり、バンクーバーにおいては、アメリカまで続く西海岸沿岸のハイテクベルト、医療研究、貿易、映画・テレビ制作産業が現地経済を牽引しています。しかし、バンクーバーの立地条件からくる制限を始め、現地投資家は一般的に控えめで、この頃やっと1990年代の世界的バブルからの痛手を乗り越え、積極的な売買と開発に進んでいます。よって、30年間放置されていた不動産需要は、一気に解放され、現在は竣工前の時点で、完売される物件が多数出ました。

バイ・アンド・セル戦略を選択した場合

こう言った状況の中で、商業不動産投資を行い、バイ・アンド・セル戦略を選択した場合は、基本的には問題なく売却益を出して出口を迎えられると思います。その上で、所有期間中にどのような策を施すかによっても、出口価格は異なります。例えば、何もせず、3年程所有した場合では、ここ2〜3年間で一般的に約15%ほどの土地価格上昇があった為、そのくらいの上昇は見込めると思います(もちろん状況にもよりますが)。しかし、更なる、改築や再開発を施す事での、リターン取得は可能になると思います。例えば、弊社が6月末にクローズした今後再開発を行う物件では、3年半の投資期間で約120%半ばのネット・リターンを見込んでいます(年率35%)。しかし、その分リスク・プレミアムも高くなります。現在は建築ラッシュ状況にあり、申請認可まで約2年弱掛かかり、資材価格の高騰と労働者不足から、建築費が高騰しています。建築費だけでも、5年前に比べ、1平米で約12万円相当上がっている計算になり、当時との投資リターン比率では著しく低下する計算です。

また、物件の大きさや場所によっても、売却相手層が異なってきます。例えば、個人投資家や一般不動産投資会社の場合には、ここ数年の価格高騰で枠が上昇しましたが、やはり25億円以下(CND30MM)が相場だと思います。そして、購入者の戦略にもよりますが、今後再開発を可能とする「土地」物件では、用途や建ぺい率制限、建築費用の上限から、売却まで時間がかかったり、求めている価格で売れない可能性も出てきます。弊社が今回購入した物件の一筆も、売主の過剰な「市場価格」が原因で、数ヶ月放置されたままでした。土地のみの場合には、必要再開発コストも更に考慮する必要がある為、20億円単位になると、相当なプロジェクトになると思われ、売却先も限られてくると思います。この様な土地物件の場合には、現地デベロッパーと組み、リスクを軽減すると同時に、収益向上を狙う戦略の方が、結果的にはバイヤーも見つけ易く、現在のバンクーバー市場には見合っていると思います。今回の弊社の物件でも、一層建の倉庫を5.5億円相当で購入し、建築融資などを取り入れますが、最終的には30億円相当の物件(区分所有)になる戦略絵図を書いています。

結論

よって、キャピタルゲインを狙った、バイ・アンド・セル方式は、バンクーバーの高騰した市場でも、大いに活用出来ると思います。その場合には、出口までの絵図を具体的に書く事で、出口の売却層や価格も把握できる物件を竣工することが可能になると思います。そして今回のブログでは話しませんでしたが、物件所有エンティーの構造も十分検討する必要があります。場合にはよっては、キャピタル・ゲイン税をゼロに出来る場合も存在しますので。その上で、最終的購入者の枠や予算も考えると、一棟丸ごと一組の購入者に売却する場合には、再開発を考えると、購入価格を5~7億円以内に抑えたプロジェクトになると思います。

次回は区分所有戦略を用いた場合の、投資戦略についてお話ししたいと思います。

今週も皆さんにとって、やりがいのある一週間になります様に。

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