前回はバイ・アンド・セルでも一棟丸ごとの売却シナリオについて話しましたが、今回は区分所有に構成した物件の売却方法を出口戦略とした場合のシナリオについて、お話ししたいと思います。
1)区分所有投資シナリオ
この場合、先週の一棟丸ごと売却との差は、プロジェクト当初の区分所有用開発申請とそれに伴った法的申請がありますが、それ以外は売却営業の時点まで殆ど変化ありません。先週のブログでは取り上げませんでしたが、一棟売却の場合でもどの時点で売却するかによっても(躯体のみなのか、内装も完了させ賃貸契約後か)、最終的リターンに変化が出てくるのは、いうまでもないと思います。区分所有の場合のフィニッシュは躯体及び最低限の内装になります。よって、空調設備は設置するが、ダクトは取り付けられず、その費用も考慮するような事はありません。また、照明も法律上の最低限しか取り付けず、全て購入者の負担になります。よって、一階丸ごと購入される場合には、トイレなども設置されません。またその反対に、一階未満のスペース購入社にはトイレ設置代も上乗せして販売する事になります。ですから、区分所有と言っても、購入者にとっては、販売価格に自社の内装工事費が上乗せされる事になります。
しかし、現在の低金利、市場の満床状態を考慮すると、将来的資産の構築や、安定した事業所の確保が可能になり、家賃を継続して払うよりベターなビジネス判断と見る企業オーナーも多く存在します。もちろん、この際にもマイナス点は存在し、転売や又貸しも可能になりますが、一箇所しか選択肢がないという事で足元を見られたり、市場性にも乏しい為、短期間の投資目的で行うには、リスクレベルは相当高くなります。では、区分所有投資シナリオをデベロッパーの観点から見てバンクーバー市場に当てはめたいと思います。
2)バンクーバー市場の区分所有投資
先週も申し上げた通り、現在弊社で行っているプロジェクトは区分所有のフレックス・オフィス(ロフト的で天井が高いオフィス・スペース)プロジェクトです。ターゲット購入者は、ハイテク、医療研究企業やインダストリアル的な用途を必要とする企業です。この6月に購入が完了したばかりですので、再開発申請許可まで約1年半から2年弱かかり、1年半の建築期間を想定しています。またこのプロジェクトは投資家を募ったプロジェクトですので、申請許可発行まではゼネラル・パートナーの弊社が全ての費用を負担する仕組みになっています。(もちろん経費は全て組合購入費に反映されていますが) そして、申請許可が降りる前の仮許可発行時点で、既存物件の解体と掘削が可能になります。そして、申請と同時に販売営業が可能になり、弊社の予定では、着工前までの数ヶ月で殆どのスペースが売却予定済みになる想定です。建築融資条件としては、約50%の仮契約の締結が必要となるので、着工期間までには予定通りに進められると考えています。
この際、建築工程や業者数などには先週の一棟売りと変化はなく、弊社としては竣工と同時に、本契約の締結を行い、それまでに第一回区分所有組合議会を開催する事で、デベロッパーとしての管理責任を所有組合へ移行し、弊社の関わりはマイナーな補足工事以外は終了する事になります。また、契約締結時には全ての販売代金が納金されますので、管理責任や当初建築プランに付随する補足工事完了後には、投資配当金が各投資家に支払われる事になります。そして、この投資組合も完結となり、解散されます。
購入後の管理や補修案件は、所有組合が自主運営する事になりますので、そこでの判断で、各業者との契約で行われる事になります。
3)投資検討項目とバンクーバー市場
区分所有投資プロジェクトの場合の投資検討項目は、通常の投資案件と同じです。一般的な市場状況では、区分所有目的で販売すると販売価格が賃貸物件と競合する事になるので、価格の頭打ちもあり、現在の様な高額設定は出来ないと思います。しかし、現状のバンクーバー市場全体の賃貸物件における空室率は4.6%と、満床状況である事、そして低金利で購入意欲が盛んである事から、可能な投資シナリオだと思います。また、市場に出ている売り物件数が極端に少ない事から、価格的プレミアムが存在すると同時に、購入物件を見つけられない状況にあります。そして、弊社購入物件の価格帯で商業プロジェクトに携わる企業も少ないのも現状です。(現在殆どの開発はマンション等の複合住宅になっています) よって、弊社の様な商業を専門とするデベロッパーにも物件を探すのは困難になっていますが、戦略と出口という意味では、すごく魅力があり、以前として需要が満たされていない投資セグメントだと思っています。
よって、現市場状況を考慮した上では、バンクーバーにおける区分所有プロジェクトはとてもやり甲斐が有り、投資利益的なメリットも多く存在するセグメントだと考えています。
では、次回はバイ・アンド・ホールドのシナリオで、バンクーバーの市場を説明していきたいと思います。
日本では暑い日が続いていますが、お互い頑張りましょう!
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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