これまでの２週間は、物件売却を投資出口として話をして来ましたが、今回は長期保有と運営を通じて、バンクーバー市場についてお話ししたいと思います。
１）長期保有戦略
インカム・ゲインと将来的キャピタル・ゲインという意味では、長期保有は良い戦略だと思います。バンクーバーにおいても古くからの土地所有者が多く、巨大な富を築いています。余談ですが、バンクーバーの大富豪層はとても控え目で、新聞のヘッドラインを飾るような人たちも少ない為、実際どのくらいの巨額の富がバンクーバーに眠っているのか、誰も知らない状況です。（巨額の富がある事だけは事実ですが。。。）
この様な長期所有の場合には、融資期間や割合、家賃の変動を見越しての賃貸期間の選別などが必要になります。また、資産項目の減価償却と老朽化に伴う、修理や交換も計画的に盛り込む必要があります。その上で、インカムリターンを最大限に持っていく必要がありますので、長期運営の方が難しい事は言うまでもないと思います。特に、既存物件を購入する際には、屋根を始めとする資産項目の保証や耐久年数の確認、新規テナントを入れる場合に必要になる、過去の建築申請や内部改築申請が法令に則って行われて来たかも、重要なディーデリ事項になります。弊社の場合でも、購入前のデューデリで判明しましたが、第一物件では中二階の建築申請が提出されていなかった為に、立て直しと床面積の減寸をされる結果となりました。ただ、ロフトは老朽化の為に立て直しは必須だったので、予算に入れていましたが、床面積が約10平米ほど減ってしまいました。本来ならば、350平米全て撤去対象になるはずでしたが、これには弊社の建築家が持つバンクーバー市建築課との太いパイプに感謝するばかりです。また、バンクーバーの一般的賃貸期間は10年間の為、賃貸契約見直しまでの期間が長く、経済や戦略の読み間違えは致命傷になる恐れがあります。
２）融資とバンクーバー市場
カナダで融資を得る為には、殆どの場合に個人保証する必要があります。これは借主が企業であっても、最高責任者の個人保証が必要になります。ただ、アメリカでは支払いが滞ると、担保物権の強制売却を通して、融資元本のリコールを即座に行いますが、カナダの場合には、先ずは金融機関の協力のもと、支払いを可能にして行きます。そして、債務不履行を防ぐ為にも、融資比率(Loan to Value)は60~65%を上限としています。しかし、65%の融資率を得るには、相当の信用が必要になります。これ以上の融資を求める場合には、Mezzanineローンや富裕層からの個人融資(Private Equity Lending)となり、金利も2~3倍跳ね上がります。 この様な理由からも、カナダの不動産投資（商業物件）は、専門職になり、ある程度の資産を保持している企業のみの参加に限られています。
現在のバンクーバー市場においてのインカムプレーからのリターンは、約2~4%です。場所によっては、この数値を下回る場合もある上に、現在の融資金利が約5%ですので、融資をつけてまでの投資メリットはなくなります。よって、ホールドの為に現在物件を購入している人達は、殆ど全員が現金で購入する投資家で、多くはレガシー・ファンドや極めて長期運用が可能な富裕層クラスのみになっています。それでも購入意欲は強く、米国同様築50年以上のブロックや煉瓦造りの物件がプレミアム価格で売買されています。殆どの購入者は物件に改築を施す事もなく、現状から可能な賃貸収入で保持しています。また、概ねの投資がダウンタウンではなく、成長過程にある東バンクーバーやMt. Pleasant（以前バンクーバー万博が行われたエリア）に集中しています。これも長期を見据えた資産保有という考えから、資産ののりしろが多く含まれているエリアを対象としていると思われます。
３）結論とアドバイス
よって、現在のバンクーバー市場へ物件保有と運営を目的に投資をする場合には、長期（最低10年以上）スパンの投資計画が必要になると思います。その上で、オールキャッシュでの投資であれば、バンクーバー市場でも投資計画が可能になると思います。
今までにも色々な所で、当初から単独（個人・企業ともに）で新市場に乗り込み投資を試みる日本人投資家さんを多く見てきましたが、一つアドバイスさせて頂けるのであれば、是非その市場を熟知したパートナーと組んで一物件目の投資を行うことを非常に強くお勧めします。現地市場に馴れている人間から得られる市場情報は、本などには出てこない貴重なものです。みなさんがどの市場へ行かれるにしても、長期の成功をおさめる為にも、信頼できる現地のパートナーを見つける事をお勧めします。
みなさんにも海外で信頼出来る仲間が見つかる事を祈って、今週も良い一週間をお過ごしください。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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