今回購入した物件の各ストラクチャーを簡単に話しますと、一件は物件のみを購入する不動産契約で、もう一件は不動産を所有するホールディングカンパニーを購入するベア・トラスト方式での不動産取得でした。その上に、弊社としても、税的還元をマックスにするために、ベア・トラスト方式を取り入れ、弊社ホールディング会社が出資を行う形で、SPC(特定目的会社)を設立しました。このSPCが不動産とホールディング会社を纏めて購入しました。なので、購入時には、弊社の下にSPCがあり、その中に不動産と購入したホールディング会社がありました。
契約締結翌日には、SPCと購入したホールディング会社を吸収合併させ、最終的に残ったエンティティーは弊社SPCが、3筆の物件を保有している形になりました。これをする事で、弊社には吸収合併したホールディング会社の当初簿価と弊社の購入価格の差が税的控除になり、約300万ドル(約2億5500万)程のキャピタルゲイン税控除を受けることが出来ました。また、ベア・トラストを用いる事で、不動産売却税を支払う必要が免除され(不動産を買うのではなく、会社を買う事になるので)、その上でも約3%の購入コストの節約に繋がります。
また、出口の際には、このエンティティーを区分所有事業者として再登録させ、ユニット購入者には、このエンティティーを購入率に比例する分だけ所有する形で売却します。この場合は、通常の不動産購入になり、ベア・トラストなどの構造を用いた購入は不可能になります。よって、購入時には、不動産所得税もかかる事なります。将来的資産修繕費などの負担についても、この区分所有に応じた割合で各ユニット所有者に請求される事になります。固定資産税などについても、同じ様に分割され、請求される事になります。しかし、この場合には、行政より各所有者に対して直接固定資産税の請求が来る形になります。一番短な例は、日本の分譲マンションの購入と類似していると思います。
仮にこれらユニット所有者が、将来的に各保有ユニットを売却する場合には、通常の不動産取引になり、区分所有者組合の承諾さえ得れば、売却可能になります。(組合によっては、事前承諾不要な所もあるかもしれません。全て組合登記によります)
デベロッパーであり、売主の弊社が、この区分所有を使った売却方法を用いた理由について、税的効果の観点はすでに申し上げましたが、事業観点からしても、メリットは多数あると思います。1)各ユニットで販売する為、各サイズが小さくなり、価格設定にプレミアムを含める事が可能になる。2)市場反応によっては、販売価格設定の変更も速やかに対応出来る。3)着工前に販売に入る為、ある程度のカスタム化が可能になり、その分価格プレミアムを上乗せ出来る。この様に利点は多数ありますが、主なものをあげて見ました。勿論、場合によってはリスクも含まれます。1)各ユニットの為に、エキストラコスト(内装壁など)がかかる。2)ユニットが多い分、営業に時間がかかり、コストが跳ね上がる。3)床面積上完売時に満床にならない可能性がある、などが挙げられるかもしれません。しかし、着工前に営業を始める事で、内装壁コストなどは殆ど掛からず、工事の一環として作り上げることが可能になります。販売コストについても、仲介業務を外注しており、売り高に対しての利率性にしているので、人件費からくるコストは存在しません。また、現在の市場が売主市場である事も、我々の利点になっています。そして、小さなユニットを販売すると言っても、最小面積や、売り残りのない様な販売をするので、完売後に満床にならない事はありません。
弊社の長期目標としては、この様な売却出口は望まず、長期保有をまず第一としています。しかし、近年のバンクーバー市場の価格の急激な高騰に煽られ、弊社としても当初の予定を少々修正せざる負えなくなりました。よって、第一プロジェクトも数年保有した後で売却し、今回のプロジェクトも区分所有という形で売却し、続くプロジェクトの活力として蓄える事にしました。今後は、自社資金のみで投資運営をする事も大事だと思っていますが、プロジェクトの増数とリスク分散の為にも、投資家を公募する組合方式で、プロジェクトを遂行していこうと考えています。よって、今回も組合が設立し次第、次の物件購入に取り掛かる予定です。
話を戻しますが、今回の物件のデザインは、弊社が常に頼っている現地の建築家に依頼し、バンクーバー特有の西海岸設定を大いに活用したデザインを現在検討中です。また、各所有者が自社ビルへ出勤する感覚(対賃貸オフィスの一室に入る感覚)を持ってもらいたいので、現在この「独自のスペース」感にも、力を入れて思案している所です。また、物件がインダストリアル地区のI-2ゾーン(Industrial-2)に属する為、天井高や柱間の距離も出来るだけ広げ、オープンなスペースと応用の効く物件を提供していきたいと考えています。その上で、前回のプロジェクトの様に、驚きを提供する仕組みを取り入れたいと考えています。例えば、今回も入り口にシャンデリアを取り付けたり、内壁色にアクセントを入れたりする事も考えています。また、弊社プロジェクトのアイデンティティーを外装に取り入れる為、前回の様に、日よけにはカラフルな色を取り入れたり、いろいろなアイディアを現在思考中です。デザインについては、また今後最終的な案が出来た所で、再度お話したいと思います。
では、次週のブログでお会いしましょう。日本も梅雨が開け、夏ですね。熱中症にならない様に、ご自愛下さい。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
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