バンクーバーの建築申請期間が長い事は、以前にもお話ししたと思います。今回も建築許可発行までには、20~22ヶ月ほどの期間がかかると考えています。そして、そのあとに建築着工になり、約18~20ヶ月の期間を要すると思われます。計4年弱のプロジェクトになる想定です。その中で、組合が設立され、投資家が参加するのが建築許可が降りてからになりますので、投資家の投資期間は約2年弱の想定です。
まずは申請期間中の流れですが、当初6ヶ月で用途確認とデザインや開発申請の作成期間になります。この時点は、主に地盤処理や建物の大きさ、外観等についての申請になります。申請提出後、約8ヶ月間(半年から10ヶ月)の行政確認が入り、その間も建築家とのやり取りが行われます。この時点がクリアされると、一次的許可書がおり、既存物件の取り壊しや、地盤掘削が可能になります。今回の物件では地下2階まで掘削し、地下駐車場を設置する予定ですので、期間的には大掛かりなものにはならないと思っています。
そして開発申請提出と同時進行で、建築申請の準備・提出になります。建築申請は建造物の構造、資材や内装、そして建築基準法に則った建築方法や施しなどが問われます。このプロセスの方がやはり時間が掛かり、約16カ月程の行政の申請部とのやり取りが繰り広げられます。よって、申請準備から一年もすれば、今後の方向性も見えてきて、最終的には、各業者へのビッドも始まります。そして、建築申請許可が発行され次第、建築着工に入ります。
この建築許可を得た時点で、投資家の募集となり、組合の正式な運用開始になります。現実的には、この以前から各投資家候補と商談を重ねているので、建築許可発行は形式上のものなりますので、着工への遅れは最小限に抑えられる事になります。
この一連の申請作業を見てもお分かりの様に、プロセスは長く複雑です。よって、行政とのパイプが太い建築家を雇うのが、各プロジェクトの成功を握るといっても過言ではありません。弊社の信頼している建築家は、今は独立し小さな建築事務所を経営していますが、以前はカナダを代表する大きな建築事務所に所属し、行政とのパイプも太く持っています。よって、申請部の担当者を選ぶ事は出来なくても、申請部トップとの事前調節や行政の求める項目の聞き込みなども可能になり、相当の時間と経費の削減に繋がっています。
一旦建設が始まると、建築家には二つの任務が施されます。1)各マイルストーンでの建設現状の確認。2)銀行の建設融資支払いの為の進行状況確認書の作成。1)の建築状況確認については、だいたい月一間隔で行われ、その都度報告書が建築家から提出され、図面に沿った建設の有無から、問題点などを含めた報告書の提出があります。2)では、こちらの建設ローンはDraw Down 方式と言い、各建設マイルストーンを迎える毎に、その分の融資がDraw Down(支払い)されます。この場合にも、デベロッパーからの一時補填はなく、殆どの場合は、建築家の建設進行状況確認書提出により、金融会社からゼネコンへ直接支払われる形になります。もちろん、どちらの場合でも第三者のコンサルタントを雇って監修してもらう事は可能です。しかし、通常は建築家に依頼した方が、経済的に節約も出来るので、弊社としては建築家に依頼しています。
また北米の建設事情の問題点としては、仕事が粗いことが良くあります。駆体などの強度ごまかしなどはありませんが、鉄筋を打つ場合の平行性や支柱内の鉄筋までの距離が一定でない事は良くあります。内装においても、見えない所では、塗装が施されていなかったり、三重のコーティングが二重に終わっていたりなどということも良くあります。また、資材と資材などの間の隙間など(特に木材)も要注意項目の一つです。住宅の場合には、施工主が居住するという事で、あとでのクレームも多い事から、丁寧な仕事をする業者も多いですが、商業や賃貸物件になると、疎かになりがちな点です。見積もりも、方法によっては、業者利益分がはっきりしない場合も良くある事です。この辺については、痛い経験を経て学ぶ投資家も多く(特に海外からの投資家の場合)、注意項目だと思います。現場監督を設置する上でも、ゼネコンが信頼ある業者である事は大事な点です。その上で、現場監督が常に常駐し、全ての行程を把握し、目を光らせる能力と実績があるかも重要な点です。日本の建設現場同様、いろいろな注意点は存在しますが、だからこそ余計にレピュテーションと実績のある業者を選ぶ事は、トータルコスト面でも節約につながると思います。
こちらでは、日本の様な引き渡し書類やバインダーにする習慣がないのも文化の違う点かもしれません。よって、一般的な保証書などは束で提出されますが、竣工時のフロアープランやフロアープランに消化器、スプリンクラーや非常ベルの位置などが書き込まれた物は殆ど出て来ないため、ゼネコンを教育して作成してもらう必要があります。鍵の引き渡しもその一つで、束で渡され、ゼネコンと一緒に歩いて全ての鍵穴を確認する様な習慣はありません。よって、マスター・キー・システムにする上でも、全てのドアがちゃんと施錠されるか確認するのは施工者に委ねられます。結局は施工者がテナント若しくは購入者に責任を直接追う事になりますので、そういった面でも全ての確認が必要になります。ただし、それを本当にやっている施工主が少ないのも、悲しい現実ですが。。。
場所が異なれば習慣も異なり、気をつけなければいけない点もすごく増えることになります。そう言った面でも、ゼネコンに丸投げしてしまう施工主も多く、質のレベルに問題が出る事が多くあります。しかし、自社の信用とレピュテーションを考えると、これら確認は非常に重要な項目だと、我々は考えます。
何かお気付きの点があれば、ぜひご教示頂きたいと思います。では、残暑とは言えない日々ですが、ご自愛下さい。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
アマゾン: 「家業を継げなかった三代目、継がなかった三代目」枡田耕治
楽天ブックス: 「家業を継げなかった三代目、継がなかった三代目」枡田耕治