四半期のレポートでも何度かご説明しましたが、広域バンクーバーのインダストリアル用地は供給量が限られており、特にバンクーバー市内では、この先もディストリビューション・センターなどの大型物件は供給できない状況です。よって、市内のインダストリアル地区は、小規模のフレックス・オフィス(ロフトタイプ)物件が主なタイプになっています。平均的な床面積はの割り振りは、2,000から3,000平方フィート(200~300平米)のスモールベイ需要、5,000平方フィートのミッドベイ需要、そして10,000平行フィートを超える大型フレックスオフィス需要になります。ただ、5,000平方フィートのぐらいまでは複数の物件で対応が可能ですが、それ以上になると、対応可能な物件は少なく、テナント需要に見合った物件も少ないのが現状です。
バンクーバー市内のインダストリアル業界の近年の変化は、ダウンタウン南部に隣接する、Yaletownエリアの元倉庫物件にIT等のテナントが入居したのが始めでした。その後、False Creekを渡ったYaletownの南地区のMt. Pleasantインダストリアル地区にYaletownの入居価格が負担出来なくなったスタートアップ企業が、入居し始め、新しいトレンドが出来ました。そして、その後に今回のトピックである、ダウンタウンの東側に隣接するGastownやRailtownが新フレックス・インダストリアル地区として発展しました。
1)Railtownの成り立ち
Gastown/Railtownは、19世紀終わりから20世紀の始めに木材を始めとする物資の荷下ろし場、大陸横断鉄道の終点駅として栄えました。その中でも、Gastownはホテルや飲屋街の繁華街として、複数階のレンガビルが建設されました。その面影は現在も存在し、昔のホテルはマンションや小規模事務所に変わり、一階にはお土産屋さんやレストランが立ち並ぶ観光エリアになっています。蒸気で動く時計台も観光客を引き寄せる一つのアトラクションになっています。よって、不動産として区別すると、Gastown地区は典型的なインダストリアルエリアではなく、用途からしても、複合住宅、オフィス・軽製造地区とされています。
Gastownの東に隣接するRailtownが、荷下ろし場や木材作業場として、使われていました。その上、物資の鉄道運搬が可能になる事で、製鉄所、製糖所や氷貯蔵庫なども加わり、当時のバンクーバーの経済を支えました。19世紀終わりには、日本からの移民もこのエリアに居住するようになり、現在でも存在する日本人学校や、日本人の経営するホテルや店舗も多く存在し、経済を支えていました。Railtownは元Japan Townとも呼ばれており、複数の建造物には日本人のビル名がついています。
2)Railtownについて
10〜15年ほど前までは、軽製造業が殆どでしたが、上記でも説明した通りの歴史の流れにより、現在はIT業界がその多くを占め、新規ITメッカとして、注目を浴びています。また、バンクーバー市による、土地用途見直しにより、今までの300%の容積率は昨年終わりから500%に上昇しており、行政的にも、このエリアを今後のIT専門のエリアとして発展させていく予定です。言うまでもなく、投資家からの注目度も一気に上昇しており、土地の価格も急激に高騰しています。5年ほど前の時点では、$120/平方フィートで取引されていましたが、この用途変更に伴い、現在のRailtownの取引価格は$220~230/平方フィートまで上昇しています。しかし、この価格はこの先も継続して上昇するものと予測されており、Mt.Pleasant同様、数年内には$300/ 平方フィートを超えるとみられています。また、Mt.Pleasantは用途変更により、今までの典型的インダストリアル用地からIT関連の使用も可能になりましたが、容積率は300%に止まっています。それに代わり、Railtownでは、用途も柔軟になった上、容積率も大幅に上昇した事から、今後の価格変動はMt.Pleasantエリア以上のインパクトがあると思います。同時にRailtownの難点は、対象エリアが極端に小さく、面積にして約10ブロック程しかありません。よって、Railtownの今後の発展と需要の伸びにより、バンクーバー市内の各地区の用途拡大にも大きな影響があると思っています。
現在計画されている複数の開発案件では、賃貸と区分所有による売却の両方が出ています。賃貸物件においては、$30~35/平方フィート/年(共益費は別)プラス$35~40/平方フィートのテナント工事を検討しているとの事です。賃貸の場合においては、ROICが6%程になる計算で、投資プロジェクトとしては、すごく良い計算です。しかし、現在の賃貸価格が未だ$30を超えていない為、この見えない壁を突き抜けるのは、新築物件でも至難の技になると思います。また、同地域に所在した弊社の改築物件でも、$35/平方フィートのTI(Tenant Improvement)を支払った為、このような新築物件では、TIをもう少し上げる必要があるのではないかと思います。結果、ROICは5%マーク前後になるのではないかと思います。しかし、フロー物件では3%が平均になっている現在のバンクーバー市場では、5%でも魅力ある物件だと思います。
区分所有物件においては、いま売りに出ている唯一の物件の各階の床面積が5,000平方フィートほどしかない為、平均価格は約$850/平方フィートに止まっているようです。売却価格は、各案件の使い易さや、各階の床面積も影響する為、平均して10,000平方フィートぐらいの床面積が提供出来る物件では、平均価格も$1,000/平方フィートを越えると思います。
3)まとめ
今回は現在注目を浴びている、Railtownエリアについてお話しましたが、今回のポイントは、このエリアの今後の繁栄が、バンクーバー市の将来的土地用途の方向性を決めると言っても過言ではないという所です。そう言った面では、弊社の東バンクーバープロジェクトにおいても、このRailtownの販売価格が基本になっています。今後は、Railtownの需要と供給、およびエリアとしての成長とIT業界の足並みが不動産投資面からも注目される点だと思います。
日本国内では地震や台風などの災害で影響を受けられた方も多々いらっしゃると思います。1日も早い復興をお祈りしております。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
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