今年の1月から書いてきた、バンクーバーの不動産市場について、ここで纏めを書きたいと思います。本来は、今回のトピックはバンクーバーの市場を話す上で最初にお話しするトピックだったかも知れませんが、今回は各サブマーケットの説明と、各ポケットの特徴について説明をして、今後の動きについてもご説明しておきたいと思います。

1)カナダ・バンクーバー市

23地区の広域バンクーバーの中でも、一番大きいバンクーバー市はこの地域の経済中心地区でもあります。中でも、Central Business Disctrictになるダウンタウン地区では、高層オフィスビルが立ち並んでおり、広域バンクーバー地区でも一番高額な賃貸を取得しています。各オフィスビルは300,000平方フィート(30,000平米)から400,000平方フィート(40,000平米)の物件が多いのが現状です。またこれらも20~30数階建が多く、各階10,000平方フィートが上限になっています。バンクーバー市では、IT/IoT業界やバイオ研究の発展と床需要が大きく存在する中、それらに付随する専門職(弁護士事務所、会計事務所)などの需要も著しく伸びています。今後も、インダストリアルやオフィス業界においては、更なる発展が見込まれています。今後の問題はその需要にどうやって答えていくかです。

2)カナダ・リッチモンド市

リッチモンド市はバンクーバー南部に所在する中国系の移住者が多く在住するエリアです。元々は農業や、インダストリアル用地等で発展してきましたが、近年の中国系移住に対応する感じで、大掛かりな高層マンション開発ブームにあります。また、リテールのショッピング・モールなども多く所在しています。オフィスビルというより、インダストリアルのロジスティック・ハブとして今まで活躍してきた地域です。ただ、リッチモンドの最大の難点は、全てが埋立地であり、元は沼地であった事です。それにより、開発時には杭も打てない状況なため、膨大な土砂を用いる必要があります。ここリッチモンドに、バンクーバー国際空港があります。

3)カナダ・バーナビー市

バーナビー市はバンクーバー市の東に隣接するバンクーバーのベッドタウンです。現在は、エリア的な住宅市場のクールダウンから、買主の市場状況になっていますが、基本的にはバンクーバー市の価格より格安に家が購入できる地区です。地域最大のMetrotown MallBrentwood Mallなどが存在し、昔から定住する移民(特に中国やフィリピン系人口)が生活を営むベッドタウンになっています。商業不動産においても、郊外のインダストリアル/オフィスパークの開発もあり、韓国の大手サムソン社なども進出しています。そして広域バンクーバー唯一の大型映画制作スタジオパークもここバーナビーに所在します。しかし、一般的なオフィスビルの成長は、バーナビー市の経済的立ち位置が今一鮮明でないため、成長には繋がっていない感じがします。

4)カナダ・サレー市

その点、バーナビー市の南東に隣接し、南はアメリカとの国境まで広がる広大なサレー市は、行政リーダーシップにより、バンクーバーから複数のビジネスと住民を引き込み、現在では医療や医療研究関連事業が著しく盛んです。広域バンクーバーを貫くFraser川の南に位置する同市では、川沿いエリアでのインダストリアル物件が多く、今でも唯一の開発可能地区として注目を浴びています。また、インフラ的好立地条件からも、このエリアは製造、搬送業が多く所在し、現在ではクリーンエネルギー業界も成長しています。また、現地大学(Simon Fraser University, Kwantlen Polytechnic University)も拠点を置き、関連教育雇用にも影響を及ぼしています。

しかし、郊外の共通点として、オフィスビルの開発という観点からは、低金利などからくる、バイヤー意欲がバンクーバー市場ほどに大掛かりな新規供給を遂行するほどの需要が確保出来ていないのが現状です。

サレー市を更に東へ向かった、ラングレー市やフレーザーバレー地区では酪農や農業が主な産業になっており、不動産産業という観点からは、投資レーダーに載って来ていないのが現状です。現在バンクーバー市近辺の広域バンクーバー地区では、生活コストの高騰などから、ダウンタウン・バンクーバーをつなぐ近郊通勤電車の駅があるフレーザーバレーへ、移住する若人や低所得人口も出て来ています。このエリアが、実は今後の住宅難回避にひと役買うのではないかと思っています。

今後の不動産ポテンシャルについては、今までもお話しして来ましたが、やはりバンクーバー市に勝る市場はないと思います。コストも高くはなりますが、空室率、プロジェクト遂行リスク、融資返済責務等のリスクを考慮すれば、安定して需要が高い市場を選ぶに勝る事はありません。また、バンクーバーでは、IoTやバイオ研究などの需要が盛んで、供給が追いついていないのが現状です。今後は一段とこれら業界からの需要は伸び、ダウンタウンでは金融業界の拡張に伴った伸びがさらなる需要を巻き起こすと思います。

バンクーバーはとても楽しくエキサイティングな時を経験しています。これに負けないぐらい、皆さんの日々の生活もエキサイティングなものであります様に。