今週はこの度行われた、NAIOP(National Association of Industrial and Office Properties)の1月の朝食会からの今後のバンクーバーの不動産トレンドについてお話ししたいと思います。本題に入る前にですが、NAIOPは北米(特にアメリカ)を中心とした商業不動産に特化しか団体です。名前でもお分かりになると思いますが、インダストリアルとオフィス物件を主に取り扱っており、その関係者が多いです。私見ですが、この頃はNAIOPが北米で一番活発で不動産業界者に信頼されている団体だと思います。さらに、NAIOPにはNational Forumという年2回集まるコミティーもあり、そこでも複数のグループが設立され、勉強会を開いています。私は同族会社出身ということや同族会社の世代交代のコンサルに携わっている事もあり、Family Owned Buisnessesというグループで、同族会社の問題や促進について勉強会に参加しています。

リテールなどはSIORやリテール専門の団体が存在しています。また、一昔前は世界的にも一番活発だったBOMA(Building Owners and Managers Association International、通称世界ビル協)も業者のメンバー数が飛躍的に増え、オーナーの意向が反映されていないなどから、今は専門家の協会としてはかなり衰退してきていると思います(一応私もメンバーではありますが)。BOMAは専門性の認定試験(RPA, CFM等)や米政府へのロビー団体としては未だに力ある団体として有名です。

さて、だいぶ脱線しましたが、本題に戻りましょう。

1)2019年のバンクーバー市場とトレンド

2019年のバンクーバー市場は、空室率が広域バンクーバーで4.0%と満床状況が継続する中(バンクーバーCentral Business District(ダウンタウン)は2.5%)、次の新規物件の竣工までまだ約2年かかる状況ですが、シェアオフィス産業の急激な成長と床面積の「占拠」が非常に深刻な問題になっています。シェアオフィスというのは歴史的にも、必要に応じた需要からきていたセグメントで、通常のオフィスを賃貸出来ない小企業や短期需要者からの需要を満たすのが主な役目でした。しかし、最近では、スタートアップレベルのハイテク業界の急成長はもとより、専門職業界でもミレニアム人口(1981年から1996年生まれの人口)のニーズを取り入れたり、オフィス経費の削減や効率向上を目的とした、オープンスペースや共同作業環境導入により、シェアオフィスも入居選択肢の一つとして候補に入ってきています。現在では、仲介業者もシェアオフィスを内覧選択肢の一つに入れている動きが出ています。一例では、老舗の一社であるRegus社の1バンクーバーCBD内のシェア・オフィス・スペースでは、四大会計事務所のDeloittが、全78,000sf(約7,800平米)のスペースを継続的利用スペースの一環として賃貸しています。また、脱線しますが、フリーアドレス制のオフィスの促進も、世界的な動きだと思います。読者の中には、ご自分の会社もフリーアドレス制なオフィスも多いのではないでしょうか?私の知っている所でも、不動産仲介会社のCBREが世界的にフリー・アドレス制に移行し、オープン・ワーク・スペースを推進しています。聞いてみた所、使い勝手も良く、その日の気分や必要に応じた席が確保出来る事は、非常に生産性の面でも良いそうです。

その上、典型的なオフィス環境とは違い、シェアオフィス環境は常に開いていて、世界と繋がっているイメージがあるとの事です。現在のテクノロジーでは、世界中の人と仕事をすることが常に可能であり、時差を超えた仕事を行う事が頻繁になっています。仕事相手がどこで仕事をしているのかが不明なんていう事もよくある話です。よって、仕事環境も、日中のみならず、深夜でも気軽に立ち寄れ仕事が出来る事が求められているとの事です。

2)オフィス賃貸形式からシェアオフィス形態へ

その上、3人のパネリストの一人によると、現在カナダの起業家やフリーランス人口は全被雇用者人口の30%程だそうです。しかし、2021年には同数値が40%になり、2025年には50%に達すると言われています。そして、2040年にはフルタイムで一社のみに雇用される被雇用者はいなくなるとも推測されています。このトレンドから見ても、今後は今までのオフィス賃貸形式も変化せざる終えなくなり、益々シェアオフィス形態が増すようになるかもしれません。では、なぜ現在の大家がこのようなシェアオフィス事業に自社スペースを割き、自社運営しないのかという質問が必然に出てきます。これは現在のホテル事業体と類似しており、運営する人材が必要になるだけでなく、人材の教育や管理が必須になり、スペースも日貸しで運営する事になるので、物件やスペースの管理、及び財務処理において膨大な仕事になる為に、自社運営は行わないそうです。事実、弊社でも以前サービス提供を考えましたが、需要セグメントの調整やスペースの管理と人材確保面では、相当な無理が発生し断念しました。この時に思った事は、オフィス・シェアリングは、借りる方から見ると不動産業ですが、サービス提供者側から見ると、これは不動産ではなくサービス業だと感じました。よって、ホテル業界の様なブランドやロイヤルティー・サービスなどが今度さらに促進され、サービスの専門化とセグメント化が一層増すのではないかと思います。

3)まとめ

では、最終的なポイントになりますが、現在誰がシェア・オフィス・スペースを求めているのでしょうか?それは起業家と即座に設立して事業を開始したい新規参入外国企業だそうです。彼らにとって、コスト的にはプレミアムがかかりますが、即座にオフィス環境を立ち上げられる事で事業が開始出来る事は、相当魅力的な様です。

今週のトピックが思った以上に長くなったので、来週は典型的なオフィス・スペースの需要について朝食会の纏めをお話ししたいと思います。

では、今週も皆さんにとって、新しい事業に着眼出来る週になります様に。