先週はシェア・オフィスの現状についてお話ししましたが、今週は通常。。。とでもいいましょうか。。。の賃貸状況についてお話ししたいと思います。先週もお話ししました通り、広域バンクーバーの空室率は4%で2018年を終えています。そしてバンクーバー・ダウンタウンについては2.5%です。私の約25年間の不動産経験の中でも、市場全体の空室率が2.5%というのは初めてです。それだけに、弊社物件での賃貸活動も凄まじい勢いが感じられます。弊社物件は来年からの再開発を行うために、賃貸期間がとても短く、賃料はそれなりに割り引いてあるものの、テナント候補にとっては、好ましくない条件だと思います。しかし、賃貸活動開始から2ヶ月の短期間で、2賃貸契約が締結され、現在3件目の賃貸契約を交渉中です。弊社が活動している東バンクーバーのサブマーケットで、短期間の賃貸活動であれば、6ヶ月は掛かってしまう覚悟で臨むのが通常です。

1)需要の上昇が継続

さて、朝食会での報告に話を戻します。

米国内の政治不安を懸念する米ハイテク業界を中心とした企業が、今までに見ないスケールで物件を探しています。そんな中、全体供給量は未だ未定ですが、10棟近くの高層ビルが建設される予定で、歴代最高供給量になるだろうと予測されています。例えば、有名な機関投資のOxford Property社では約3百万平方フィート(30万平米)を建設していく予定ですが、竣工数年前の現時点で、既に約半分の150万平方フィートは賃貸予約契約が締結されているとの事です。また、ハイテク以外の外国企業からの需要も上昇しているため、今後も引き続き需要は継続して増えていくだろうというのが、市場一般論です。同時に、オフィス不動産業界では、建造物の戦略的寿命を約35年と考えており、前回の建築ラッシュがあった1980~85年から、現在が丁度その寿命年数に達してきている事が、次期供給ラッシュの背景の一つとして存在します。同時に、既存の物件においても、改築工事が盛んに進んでおり、市場性の維持を図っています。

2)バンクーバーの問題点

しかし、バンクーバーもいろいろな問題を抱えています。一つに、行政面での申請や許可手続きの非合理的な長期期間が大きな問題です。現在BC州では、着工までの申請で約20~22ヶ月かかっています。この期間は通常の不動産市場ではあり得ない長期の無駄な時間です。これにより、バンクーバー市場の競争レベルは激減し、経済発展上でも支障が出ているのは、言うまでにもありません。行政としても、継続的に人員増加に勤めていますが、バンクーバーの場合には、人員以上に基本的な考え方にも問題が存在すると思います。例えば、市役所内での申請書類の流れや、担当部署の考え方の不統一性などがあります。現在は、Plannerという申請確認官が各プロジェクト担当者として配置されますが、各申請官の見解や理解が異なる為、申請官によってプロセスに要する時間なども変化してしまいます。これは有名な致命傷として、業界では良く知られていますが、未だ向上の目処は立っていません。

3)バンクーバーのその他の問題点

二つ目に、不動産が高額資産事業である事です。地価もさる事ながら、建築コストも高いのが現状です。結局これが賃料や販売価格に反映され、入居経費は継続して上昇しています。三つ目に、テナントが不動産市場の現状について把握しておらず、期待のズレが生じています。殆どのオーナーが現市場に合わせて、賃料を更新している為、古い価格帯で計画しているテナントとの交渉は時間を要しており、テナントとしてもスペースを確保出来ない状況が出ています。その上に、テナントからはこの様な価格帯で、オフィスを構える価値や必要性についても疑問が出始めています。

しかし、これは第二ポイントでもお話しした点がある為、ただ単に価格が高すぎという事に納まらない現状があります。結果、現在のバンクーバー・ダウンタウンのAAAクラスオフィスでは、賃料は一平方フィートあたり$80(表面価格)までに達しており、米トップ市場の$80レントと同レベル(価値面で)に達しています。しかし、今後もこの価格は上昇傾向にあると思われています。そうなると、今後は不動産市場の促進のみならず、カナダ(BC州)経済のシステムや価格(給料レベルや生活コストなど)についても見直される原動力になると思います。

この様な状況の中、最後のポイントとして、今後のAI(Artificial Intelligence)の影響が示唆されました。現在でも、ロボットやドローン、バーチャルチームなどのシステムは存在するものの、利用応用度や、世界レベルでのコーディネーションなどについては、まだ未知な面が多いと話しています。やはり、システムは出来ていても、結局は人間の取り組み方、使い方に限度が存在するという事なのかもしれません。

皆さんにとっても、将来を考えるチャンスがある一週間になります様に。