今週はカナダの融資プロセスと取得可能額について、Frances Streetプロジェクトの数字を使って、具体的にご説明したいと思います。まず始める前にご注意頂きたいのは、商業用の融資と住宅融資は別物であるという事です。よって、今回お話しする事は個人の住宅購入融資の場合には当てはまりませんので、お間違いなくです。では、その違いはどこにあるかと言うと、大きな所でも、計算方法、融資対象費用項目、税金対処項目など複数面で異なります。
1)プロジェクトの総建築費予算
今回のプロジェクトの総建築費の予算は約$19,500,000(約16億6千万円)になっています。この金額には、建築費(解体を含める)や土地購入費のハードコスト、建築申請代や建築家費用等のソフトコストや金利支払い分や銀行手数料などにあたる財務関連コストが含まれます。なので、当初の購入時からの全ての項目がこの融資額計算に含まれてきます。全ての項目を含める事で、スポンサーが何処かで融資金を「費用」として抜き取ったりさせない為のコントロールでもあります。組合設立準備までにかかった費用についても、建築融資にて賄われ、この金額も基本的には全額融資開始当初に返却されます。組合準備経費返金のタイミングについては、スポンサーの経験が左右され、経費返金額についても若干の差が起こります。例えば、バンクーバーの市場が未経験であれば、建築当初の3ヶ月間は試験期間として経費の一部を銀行が「預かり」、その後滞りなくプロジェクトが進む事で、全額リリースされるという事もあります。この辺については全てが交渉条件になるので、専門家の融資仲介者を雇って融資を取り付ける事が凄く重要になります。融資仲介業者へのフィーは通常融資額に対して、1~1.5%程になると思います。しかし、これもビジネス関係などが関わってきて、当事者同士で決める率になる事が多いです。
2)平均融資率
平均融資率は、総建築費の約80%になりますが、融資先案件、経済状況、申請日付や債務者のクレジットなどによって変動します。ちなみに現在は経済の低迷感が漂い始めているので、インダストリアル物件は安定していますが、融資率も若干低下しており、信頼度の高い企業では約80%の融資率が可能になっています。よって、弊社の様にバンクーバーでの再開発経験が浅い場合には、約75%程度の率に加え、なんだかの条件が加算されるのではないかと予想しています。この条件は通常4通りあり、次のどれかになる事が多いです:
1)建築請負人の建築終了手形(文章のみの手形が殆どで、金銭的払い込みは少額)
2)賃貸アドバンス保証(名目とは違い融資額の部分的第2融資保証金です)
3)金利の引き上げ
4)プレセール条件。
この上に多くの銀行では、予約販売の掛け金を融資率計算に含む事を許可しています。これにより、銀行からの融資額が増え、手元からのエクィティー減額される事になります。これにより、レバレッジが上がり、プロジェクトとしての投資リターンの効率も上昇する事になります。
3)融資率について
また、融資率を決める上でも、プロジェクトの総建築コストに対する利益額も貴重な判断要になります。例えば、優位的な融資条件を受けるためには、年率の利益・総コスト比率は最低15%以上あるべきと、融資仲介業者は話しています。しかし、去年から市場状況が急変した(新規税金制度導入が原因)住宅業界におけるマンション建築では、この比率が10~12%に滞ってしまうものもあり、融資をつける事が出来ずに、プロジェクト自体が滞ってしまう、もしくは更なる保証を積む必要が出ているそうです。自慢をする訳ではないですが、弊社のプロジェクトにおけるこの比率は26.11%です。
これら建築融資返済は期間限定になっていますが、現在のバンクーバー市場であれば、問題なく竣工し、販売もしくは賃貸する事が可能だと思います。よって、高層マンションなどでは、建築期間が長引きますが、弊社の物件では20ヶ月前後の建築期間を前提にしています。よって、弊社がこれから受ける融資も2年半ほどの期間ものになると思われます。
4)融資を受ける際に必要な建築条件や情報
では、融資を受ける際には、どの様な建築条件や情報が必要になるかについて、書き出しました。
1)ゼネコンとの契約はCost-plus方式。これはゼネコンの原価に一定の利益率を上乗せした計算方式です。弊社の様にスポンサーがハンズオンで、プロジェクトに関わるのであれば、予算節約につながります。
2)物件の場所。不動産の定義として立地条件は常に良いものが魅力的です。
3)段階的な予約販売。当初に15%ほど予約販売が確定しており、融資交渉が本格する事に予約販売率が上昇する方がいいストーリーが描けます。
4)Quantity Surveyor’s Report。コストが第三者の目で確認されていると言うのは安心感をもたらす上で重要です。
5)考え抜かれた販売パッケージ。早期完売に繋がるので、重要です。
本プロジェクトの融資活動開始時は夏季後になる為、もう少し時間がありますが、この先のブログでは投資リターンなどについて書きたいと思うので、今週のトピックとして取り上げてみました。融資は本当に色々細かく精通していないと、一番の命取りになる所だと思います。その様な上でも、今回の情報が役に立てば、今回のブログの目標は達成したと思っています。
では、皆さんの不動産購入の際の融資交渉もうまくいきます様に。
関連ブログ
第48話「第2プロジェクトのアップデート – 概要」
第49話「第2プロジェクトのアップデート – 投資リターン」
第60話「Frances Street プロジェクトのアップデート – 建築費」
第61話「Frances Streetプロジェクトのアップデート – 融資」
第62話「Frances Streetプロジェクトのアップデート – 投資家に対してのマーケティング」
第63話「Frances Streetプロジェクトのアップデート – マーケティング」
第64話「Frances Streetプロジェクトのアップデート – 投資プロジェクトとしての中間報告」
第97話「Frances Street Projectの状況」
第115話「1270 Frances Street売却について」
第116話「1254・1258 Frances Streetの売却プランについて」
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
アマゾン: 「家業を継げなかった三代目、継がなかった三代目」枡田耕治
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