不動産投資のプロセスには、最初に物件を見つけてオファーを出すところからクロージングまでには、複数のプロセスが存在します。今回はその中でも、最初のプロセスである、不動産投資をする上での投資概要を決めるという諸段階の決断必須項目についてお話ししたいと思います。
1)目的
不動産投資を行う上で最も重要なポイントは、その投資目的です。長期的な安定したインカムを得る為のものなのか、それともキャピタルゲインを狙ったものなのか、大きく分けて二通りの目的が考えられます。また、キャピタルゲイン戦略の中でも、市場の上昇に則ったものなのか、それとも改築や再開発という積極的なゲインを狙った手法を取り入れようとしているのかでも、これからお話ししていく項目に大きな影響を与えることになりますので、当初の時点で定めておく必要は必須です。
もちろんいつかは売るということでいえば全ては売却目的になるのかもしれませんが、それが30年以上も先の事であれば、それは販売が目的の戦略ではなく、運営の延長上での売却という考え方をする事になると思います。
2)出口
私の考えるところ、不動産投資をする場合には、まず出口方法を考え、購入まで逆計算するのが賢明だと思います。ここでも基本的には二つの要素があり、一つは売却、もう一つは保有です。売却するにも考慮可能期間や、ターゲット収益や出口から得た収益の使い方などを考える必要があります。また、保有の場合には、長期的運営と運用戦略について検討する必要が出てきます。よって、出口方法を見極めた上で、のちにお話しするビークルを含めた構造を検討する必要があります。
3)期間
目的と出口が決まれば、自ずと最低投資期間が決まってきます。不動産は株の様に一晩で急な価格の上昇や下降はしません。よって、どの様な結果を生み出すにしても時間がかかり、最低は2~3年の期間を見ておくべきだと思います。通常の投資では、5年単位で検討するのが妥当だと私は考えます。また、売却を決断してからも、不動産は即売却出来るものではありません。売主との売買契約が締結されてからクロージングまでは少なくとも2ヶ月はかかります。よって、通常の売却戦略には半年ほどの期間を見ておく必要があります。そう考えると、購入後翌年に売るという考えは、物件の価値が上昇してもいない時に売る事になるので、売却経費だけが嵩み(また当初の購入経費さえも焼却出来ない場合が殆どですから)、プロジェクトとしてはロスに終わる可能性が高いと思います。
4)投資ストラクチャー
次に検討しなければいけないのが、投資ストラクチャーです。例えば、日本から直接海外の物件へ投資をするのか(この場合には最終的日本への環金で源泉徴収があり時間がかかる場合があります)、それとも現地会社を設立して、長期投資を行なっていくのか等が検討事項です。またその上に、現地法律の制限もありますが、どのような投資ビークルを使うかも要検討項目です。例えば、カナダの場合にはBare Trustという信託受益権を組み込んだ方法がよく使われます。このストラクチャーは売却時の節税を念頭に置いており、不動産の売却ではなく、会社(信託)の売買をする事で、不動産所得税を省ける形になっています。
5)物件種類
実務として、上記概要をどの様に達成するかと言う事になります。インダストリアルで勝負するのか、オフィスかリテールかと言う風に具体的な投手方を考える必要があります。また、各物件タイプによって、リスクや必要金額等も変化してきますので、注意する必要があります。また、物件サイズも要検討事項です。投資資産が多くあるからと言って、大きな物件を買うのが一番メリットがあると私は思いません。何故ならば、各価格帯でそれぞれ違う競争相手が存在するからです。大きな物件層では、機関投資家が通常共存しています。彼らとテナントの取り合いする意欲と資金準備があるかという点は重要な検討要件です。弊社の例をとれば、我々は、$5~10MM(4~8億円相当)の物件の再開発をターゲットとしています。それは$5MM以下ですと、一般投資家でも手が出せる金額になってしまうからです。また、$10MM以上だと、機関投資家が競合相手になってしまう可能性があります。また弊社は、現地富裕層投資家とも差別化する為に、再開発や改築を手法とする事で、資産価値の保存と向上に務めています。
6)場所
不動産は、「場所、場所、場所」とよく言われるものです。私もそう思います。どの大陸で行うのか?どの国で行うのか、そして、北米の場合には、どの州(プロビンス)で行い、どの市と市内のどのエリアを選ぶのかによっても、将来的成功は変わってきます。マクロ的政治と経済要因を考慮し、その上で更にマイクロ経済や政治要素を検討しなければ、「正しい」市場選びは出来ないと思います。そして市場選定の後では、市場の成長パターンを見分け、その延長上にある物件(よって将来的資産価値の向上)を狙うのか、ダウンタウンの物件に対して、プレミアムを払ってでも、安定を求めるかなどの戦略も検討する必要があります。
7)価格
そして、もちろん価格です。各市場の今後の成長を検討したり、投資手法により、幾分ののりしろを持つことも可能になりますが、やはり価格は上記全ての条件を考慮した上で、許容出来る範囲で決まってくるものだと思います。また、色々試行錯誤しても、市場が最終的には価格枠を設定してくることになる為、市場価格が高すぎる場合には、戦略の見直しや上記項目の見直しをする必要がに迫られてしまうと思います。
今回はミニシリーズの第一話として、不動産投資を行う上で一番最初に検討すべき点いついて、お話させて頂きました。今後は、不動産投資自体についてお話ししていきたいと思います。
皆さんの今後の不動産投資に対して、少しでもお役に立てればと思っています。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
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