前回お話しした、投資の概要が決まったらば、次のプロセスは候補物件を見つけ出し、各物件を評価する事です。ご察しできる様に、ペーパー上で求める物件について話すのは簡単な事ですが、実際にその様な物件を見つけ出すのは話が違います。一般的な不動産市場は普通経済の周期と共にサイクルに沿って動いているので、購入を考えた時期がサイクルのどの辺にあるかによっても、物件探しの苦労は一変すると思います。因みにバンクーバー市場はまだ10数年目に入った右肩上がりが継続しています。このような場合には、購入を試みるにも、バイヤーとセラーの市場感覚が異なったり、キャップレートの圧縮により、賃貸収入ベースの「正しい」投資評価が困難になり、別の問題が物件を精査する上でも発生してしまいます。ただ、通常では、次の方法が一般的な不動産投資において初歩段階でお話しするべき事だと思います:1)物件の検索方法、2)物件の選択方法、3)各候補物件の比較方法について。

1)物件の検索方法

まずは、1)物件の検索方法についてですが、一般的な方法は仲介会社に委託するか、もしくは自分で市場を歩いて探す方法がメインです。また商業物件では、あまりされていませんが、各仲介業者のホームページなどを見て、その担当仲介業者に問い合わせをすることです。しかし、HPの情報は、文字上でしかなく、情報に誤りがあることもあります。そして、この方法は効率が良くないのも事実です。ですから、最低でも弊社の場合には、業者のHPを閲覧して、物件を探すことはしません。弊社の場合には、1)と2)を同時並行させる方法で、物件を探します。

我々の場合には、業者と既に親密な関係ができているので、常に発注する業者は決まっています。しかし、業界の中は常に数社を抱えていて、毎回変える投資家もいます。彼らは、長年の経験から既に自分たちの存在は業者の中で知られており、業者の方から連絡が来る投資家たちです。その上、考え方としては、一社だけと付き合うと、リスクがありすぎると言うので、複数社と並行して付き合っています。私個人的には、どちらが良いとは言えず、それぞれの考え方だと思います。弊社の場合には、同じ業者の同じ仲介の人間たちを毎回使っています。私どもの考えとしては、全部の卵を一つのカゴに入れてしまうリスクはありますが、その分彼らは私どもの好みや細かい所まで把握しているので、提示してくる物件にブレがないと言う事です。また、我々は二人のブローカーと付き合っていますが、一人がインダストリアルの購入で、もう一人がオフィスの売買や賃貸を専門に行っています。よって、二人とも重なる事はなく、効率良く出来ていると思っています。そのほかの要素は、性格のマッチだと思います。私の性格的面でもとことん腹を割って付き合うのが、やり方ですので、先方としてもそれを好む人間と仕事をしています。また、北米では、不動産仲介業はあくまでも仲介人個人との付き合いですので、業者の知名度より、各仲介人を個人的に判断する必要があります。また、顧客としては聞きたくない事ですが、仲介業会はすごく綿密に繋がっていて、仲介人は業界で干される事が一番の命取りになるので、顧客への忠誠心より業界内での立場や評判を機にする事が多いので、付き合う上では注意する必要があります(特に初めて付き合う仲介人とは)。

ちょっと脱線したので、話を戻しますが、仲介業者を選ぶ場合、北米では基本的に物件の内覧に付き合った時点で、その仲介業者と仲介契約の前提となる関係が出来た事になります。沿って、その時点で、独占仲介契約(Exclusive Leasing Agreement)を締結させられるかもしれません。そして、異なる仲介を通して物件を一定期間内に購入した場合には、当初の仲介へも仲介手数料の支払い義務が発生するのが一般的です。この場合は、仲介業者が支払い請求の告訴をしてくる可能性が多大にあるのでご注意ください。よって、顧客としても個人ではなく企業として契約する事が条件になる場合が多いです。物件候補が出てきた際の条件の交渉などを試みる場合には、仲介業者を通して購入することをお勧めします。業界の中でも色々ありますが、仲介の持っている情報やネットワークはやはり必要不可欠です。また通常では、仲介手数料は売主が払う事になっていますので、購入者の仲介の手数料も支払う義務はありません。しかし、同時に仲介の忠誠心も売主にあるということをお忘れなく。

2)物件の選択方法

次に2)物件の選択についてですが、これは各購入者の購入目的や出口によっても異なります。基本的には、次の項目がメインポイントになります。サイズ、場所、築年数、予算や投資出口から導いた投資戦略手法によって、購入に適している物件か否かが、予測出来ると思います。また、当初のプロフォーマ(数字的検証)によっても、各物件が購入適用物件かが、見えてくると思います。

例えば、弊社の最初の物件であった704 Alexander Streetでは、予算が限られていたのと、土地が小さめだったので、再開発は無理でした。しかし、角物件であったり、窓から見える景色が海と北の山々でしたので、これを生かさない訳はありませんでした。しかし、物件の立地条件はまだまだ発展途中のエリアだった為、その不信感を払拭する手立てが必要でした。我々は躯体まで落とした改築に集中する事で、新築同様な景観と設備を取り入れ、内装にも工夫した為、差別化と柔軟性を持ち入りことが可能になりました。よって、立地条件的マイナス面をカバーする事が出来、家賃的にはその時では 最も高い賃貸レベルで契約を締結することが可能になりました。

3)各候補物件の比較方法について

そして3)各物件の比較方法についてですが、複数の物件を見て回ると、必ず2~3件は同等に魅力的でどちらに決めるか迷うこともあります。そのような場合には、やはりもう一度投資目的を確認することをお勧めします。特に期間、予算、必要投資リターンなどは重要ポイントです。戦略によっては、中央ビジネス街を好まれるかもしれませんし、予算的に限度がある場合には、中心地から離れたところでの、応用的な投資手法を求められます。しかし、ここまで投資の話が進むと、投資対象地区などは限定して考えているはずですので、その場合には、外から見た建物の構造や物件の将来的可能性(例えばコーナー物件で光が入るのか、各階の床に上下がないか(法律的身障者用対策工事の必要性観点から)、駐車場は完備されているのか、バス停までの距離や近隣のレストランなどの利便性等)、オファーを出さなくても読み取れる事はたくさんあります。また、改築や再開発を行う事での、物件の将来的価値の上昇の可能性なども検討に入れるべき項目です。よって、物件の将来的見込みは、内覧する前にも多くの事が分かってしまいます。その上で、最も投資条件に見合った物件を見極める事が可能になると思います。

今週はオファーを出すまでのプロセスや留意点についてお話ししました。この他にも色々考える事は多く、不動産投資は思う以上に考えることが多い投資です。しかし、これも数こなせばという事もありますので、皆様の不動産投資がうまく行くことを祈っております。

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