今回のお話はディユーデリジェンスについてです。これは契約書が締結された後の買主側の調査期間を指します。通常は30日から45日間が充てられますが、市場の状況によっては、この期間以下やそれ以上になる場合もあります。

では、内容ですが、基本的に1)買主自身が行う事、2)買主の弁護士が行う事と、3)業者に依頼して行う事の三つの案件に纏める事が出来ます。

1)買主自身が行う調査

買主自身が行う調査は、基本テナントに関連する事項が多くなります。賃貸契約書の条件確認はもとより、契約書通りに賃貸運営が行われているか、また支払いも滞っていないかが、主なポイントです。賃貸契約書の更新権利や期限セキュリティーデポジット(SD)の金額確認も忘れられない点です。

バンクーバーがあるBC州の場合には、オーナー直々の管理物件でない限り、州公認の管理会社に委託され、そこがSDを保管するシステムになっています。そしてほとんどの場合、管理会社が管理しているSDは纏められて管理されている為、管理会社より残高証明書を取得する必要があります。またテナントの物件管理と修繕義務の確認、今までの修繕記録と要修繕項目(予算や管理報告書)もこの期間に確認する必要があります。内容と度合いにもよりますが、物によっては、行政からの要請事項がそのまま満たされていない事も存在しますし、必要に応じては、売主に修繕を要請するか、販売価格の調整を申し込む事もできます。更に、BC州の場合には、基本トリプルネットリース(共益費、固定資産税、保険)で賄われており、全てテナントの割合負担になりますので、満床物件では、物件購入を融資で行わない場合の賃貸は、全て税引き前利益になります。

カナダ(BC州)での物件購入では、売主からの保持書類の開示だけでなく、テナント、管理会社や行政からの書類開示を求めるにも、売主の開示についての同意と承諾書が必要になります。その同意書がない場合には、行政はもちろんテナントも買主の調査に協力する義務はなく、ほとんどのテナントも協力しないのが現状です。ですから、オファーの中の条項には、必ず所有者からの協力が得られる事を同意しておいてもらう必要があります。

その上で、買主が取得すべき書類が数点あります。管理会社からの財務諸表とテナントからの禁反言証明書(Estoppel Certificate)の獲得は上位にランクインする書類だと思います。これら二つの書類から、物件の財務的健康性は把握できますし、禁反言証明書により、所有者とテナントの間に賃貸契約書以外で承諾案件などが存在するかが確認できます。また、テナントとの面接権を獲得する事で、今後のテナントの動向や賃貸契約の更新(オプションが存在すれば)についても把握出来る様になります。

購入後の戦略にもよりますが、賃貸を検討している場合には、行政より建物の構造図や最新版の図面を閲覧しておく必要があるかもしれません。バンクーバーの場合には、行政が保管している構造図面やその他図面が最終盤となります。その上で不法建築が見つかった場合には、行政は速やかに修繕要請を発行する権限を持っています。また、現在の図面は閲覧のみなっている為、持ち帰りが出来ません。よって何処までをどの様に確認するかは購入者の判断により異なってきます。また、BC州では、購入から来る新規所有者の既存賃貸契約書の放棄や撤回は法律的に出来ません。アメリカでは、これは最低でも私がいた頃は、可能でした。(現在は分かりませんが)なので、購入を検討する時点で、所有後の戦略を決めておくのは必須ですが、デューデリ期間中にも、各既存の賃貸契約書の期間や更新オプションについて確認しておく事が重要になります。よって、将来的物件の開発などを考えていても、各賃貸契約が満了する迄は、管理物件として運営して行く義務と必要が発生します。

2)買主の弁護士が行う事

次に弁護士の担当書類ですが、これらは主に所有権、第三者からの訴え、担保権などの解釈など法務関連書類になります。日本同様カナダでも弁護士は特別な書類取得権限を保持しており、買主一人の調査では無理なものばかりですので、弁護士の協力は必須です。この他にも、信託を取り込む購入の場合には、ビークルの構造やビークル内の確認、税金上の売主会社の登録ヶ所などについても弁護士の調査範囲に含まれています。弁護士関連の調査には、買主が直接関わる事はありません。ここの調査のポイントは弁護士からの報告が問題なしであると言う事です。

3)業者に依頼して行う事

3番目の業者による調査についてですが、私どもの考えでは、どの様な戦略を取るかによっても調査する項目が変更してきます。しかし、その中でも次の項目は全ての状態で必須と考えています。
1)境界線の確認
2)環境(アスベストを含む)/土壌汚染の調査
3)構造(目視出来る構造躯体)の確認

1)境界線の確認では、特に越境の有無が重要になってきます。それが購入検討物件による越境か、隣物件の越境なのか、また越境の幅によっても、対応策が変わってきます。2)環境・土壌汚染については、土地所有者に汚染責任が所在すると言うBC州の行政対応に対して準ずる意味があります。また、汚染の有無によっては販売価格の再度調整が必要になってくると同時に、融資を取り付ける場合にも、環境調査報告書は必須書類になります。3)については、既存物件ですので、全ての構造躯体を確認することは不可能ですが、一般的な状況を目視で確認することは重要な調査項目です。また、今後の予算を立てる上でも、下見は大切です。

その他にも、インカム戦略では、特に屋根の雨漏れや張り替え、床や壁面の亀裂、違法建築物の存在や、空調システム及びスプリンクラーを含む水道管の状況の確認は行うべき調査項目です。また、この調査期間中に大まかなシステムの寿命とそれらについての取り替え予算の概要は把握しておくべきだと思います。

また、弊社の戦略の様に、再開発を目的にしている場合は、上記の3項目だけが必要になると思っています。もちろん、確認しない項目についてはリスクにさらされる事になりますが、1〜2年以内の解体と再開発を検討している場合には、さほどのリスクは存在しないと思います。

今週はデューデリジェンスについてお話ししましたが、確認項目は多く、時間もコストもかかる項目です。しかし、それだけ投資の将来を左右するものですので、十分に対応する必要があると弊社では考えています。

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