前回までは不動産の購入プロセスについてお話ししました。そして、先週の最後にちょっと触れましたが、BC州では、不動産の購入と同時に賃貸契約の放棄や撤回がアメリカの様に出来ません。よって、各賃貸契約が満了する迄は、管理物件として運営して行く義務と必要が発生します。これはデューデリでも大変重要な事ですが、購入後の戦略を購入前に明確にし、その戦略によって、各既存の賃貸契約書の期間を確認する必要があります。
再開発については、この先のブログでお話ししますが、バンクーバーにおける建築申請期間はとても長く、約2年弱かかります。これは行政の人材不足が原因なのか、プロセス自体が問題なのか、正直言ってよく分かりません。ただ感じる事は、行政も迅速な対応が今後の経済成長に必須と考えているようですが、新人担当者の教育が追い付いていない事、そして部署の編成が縦割りすぎている為、コミュニケーションや見解の統一が欠損している事が現状の難点だと思います。
1)購入後の初期運営について
まず申し上げておく事は、これら下記シナリオでは、所有者が自己物件管理を行う前提で話をしています。よって、もし管理会社を雇うのであれば、下記の様なプロセスは発生しません。しかし、投資家であってもこの流れを知っておく必要はあると思うので、引き続きお話を続けます。では、購入後の初期運営についてですが、一番大事な事は、各テナントへの賃料振り込み先の変更及び物件所有者の変更についての通知です。こちらでは、売主が売買契約及びそのプロセスは機密事項と考える会社が多く、テナントに対しての情報開示はすごく限られている場合が多々あります。よって、所有者が変わったにも関わらず、「知らなかった」というテナントがいるのも、よくある話です。または、知ってはいたが、その現状だけを把握しており、それ以上の日程や運営方法の変更についての告知が全くないのが通常です。ですから、まずは、テナントへの告知が一番大事な仕事になります。
こちらでは、契約書がそのまま継続されるので、再契約を締結する必要はありませんが、新規所有者に変更され、賃貸人と賃借人は契約書が継続する意に同意している事を書面で交わしておくのは、運営上は良い事です。殆どの場合、賃借人とは問題は起こりませんが、まれに賃貸人が変わった事で、家賃の支払いを拒む賃借人もいます。よって、家賃の支払いを拒み、時間稼ぎをされ、新規賃貸人としては、契約不履行で裁判所に連れ出すか、Bailiffという(直訳は管財人)裁判所認定の企業へ資産の差し押さえを依頼するしか方法はありません。裁判所は手間、時間とお金が掛かり、管財人は手間とお金がかかります。どちらにしても面倒なプロセスになります。賃借人のこの様な拒みは財政的な問題が原因として多く、夜逃げする可能性が高いです。
2)運営上の注意点
脱線しましたが、運営の話に戻しますと、賃貸人の契約上の責任として、鍵の変更をお勧めします。これは、すべての鍵の所在を明確にするという観点からと賃借人に対して安全なスペースを提供する責任という意味で、変更する事は重要な項目です。未変更の鍵が原因で起こる無断侵入による事件の責任は賃貸人にかかり、法的及び金銭的負担は多大です。よって、その様なリスクを防ぐ為にも、鍵の交換はしておくべきです。この場合の費用は、所有者負担で最低でも鍵のコピー3個は賃借人に渡しておくべきでしょう。それ以上の鍵が必要な場合には、賃借人が自己負担でコピーをします。
また、よくあるのが、トリプルネットリースにおける光熱費の名義変更です。所有者が変更になった時点で、賃借人が光熱費の契約者として支払いをしている場合には問題ありませんが、物件所有権獲得後に賃借人が退去した場合には、新規所有者として、各公共サービス提供者に契約名義変更を申し出る必要があります。新規契約者である場合(新規信託やシェルカンパニーも同様)には、敷金の支払いが発生します。これは1年間後ぐらいに申請すれば返金されます。同様に、新規賃借人を迎え入れた場合には、賃借人が公共サービスの名義変更を速やかに行う必要があり、それをちゃんと見届けるのも、物件所有者の責任です。
路線価格評価や不動産税請求書は物件登記簿をベースに送付してきますが、通常の支払い請求書発行にあたる12月(翌年2月支払い期限)と5月(7月支払い期限)までになにも連絡がない場合には、行政に確認をするべきです。
この先の物件運営については、所有権取得後の各投資戦略によって変わってきます。
では、次週は物件再開発や改築についてお話ししたいと思います。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
アマゾン: 「家業を継げなかった三代目、継がなかった三代目」枡田耕治
楽天ブックス: 「家業を継げなかった三代目、継がなかった三代目」枡田耕治