今週は不動産物件購入目的が再開発を行う場合のシナリオについてお話ししたいと思います。その際には、再開発のプロセスのみならず、融資や投資家集めについても軽く触れる事で、全プロセスが見渡せる様にしたいと思います。
再開発は市場によってプロセスの違いが大きく出てきますので、このブログではカナダのバンクーバー市におけるプロジェクトについて書いていますので、 お気をつけください。その上で、今週の話を具体的で少しでも皆さんの役に立つ為に、いくつかの条件を付け加えさせて下さい。今週のお話では、インダストリアル用地における用途変更がない場合についてお話しします。また、出口は売却を目指す形とします。
1)カナダ・バンクーバー市での再開発プロジェクトの場合
再開発をする場合には、購入時にある程度どの様なものを建設したいのか、またはどの様な条件があるのかを知っておく必要があります。例えば、自走式地下駐車場を設置する場合には、土地面積が最低でも10,000平方フィート(約1,000平米、約300坪)必要になります。土地の最有効活用する為には、長方形の土地を選ぶべきです。日射や南面を多く取り入れられる立地条件の方が好まれますので、立地には注意するべきです。また、私個人的に好む立地条件は、幹線道路や交通が激しい通りに面していない場所です。駐車場へのアクセスの問題点から幹線道路を跨いで侵入するのはとても困難ですし、ユーザーからも嫌われます。なので、信号があったり、角物件であれば、状況は緩和されるかも知れませんが、この様な状況の物件は避ける様にしています。もちろん、仲介などはこれら立地物件の方が、露出度が高く目立つから良いと言いますが、個人的には必ずしもそうは思いません。よって、場所の選択判断の中には車の出入りも考慮した判断が必要だともいます。
デューデリの中でもお話ししましたが、再開発をする為には、各賃貸契約が満了している必要があります。もちろん賃借人の契約を買い取ることも可能ですが、その際には賃貸契約に則った費用だけでなく、引越し代や新規事業所の準備費として色々請求されることが多いので注意が必要です。もちろん、これらコストは全ていずれ発生する金額なのですが、時期が早まったという理由で請求される事は多々あるのが現状です。
2)建築着工までのプロセス
建築着工までのプロセスとしては、まず建築家が設計図を書き上げる必要があります。BC州では建築申請もアメリカの様に2段階プロセスになっており、最初は外観や構造物その物についての審査になるDevelopment Permit(開発許可書)になります。このプロセスが約5ヶ月かかり、4ヶ月目ぐらいで、行政からの「Prior-To」という許可書を発行する為の事前通知書が送付されます。これは通常10から20ページ程になる書類で、行政からの修正事項や要望が書き込まれています。Prior-Toに記載されている項目がすべてクリアーになった時点で、Development Permitが発行される事になり、その後第二段階目である「Building Permit(建築許可書)」の申請準備にプロセスが移っていくことになります。Building Permitでは、内装や設備について強調され、最終的にはすべての再開発項目についての判断が下されます。
カナダのバンクーバー市の場合、この全体的な建築申請のプロセスには約20から22ヶ月が要されますが、私が個人的にも今まで関わった行政の中でも申請時間が最も長い行政です。人材不足と縦割り行政システムから来る、行政内の連携不足が主な原因と言われていますが、プロセスはとにかく長く細かいです。その様な中でも、安心出来る事は、申請が細かいので完成物件も申請書からそれほどかけ離れる事なく竣工するという事です。よって、全体的な質も高く、市の全体的都市計画に沿った物件が出来上がると言う構造になっています。
3)バンクーバーでの建築申請プロセスの変化
しかし、この頃のバンクーバーでの建築申請プロセスには変化が出てきている様で、Development Permitの時点で、 プロジェクトの詳細などについても、問われてきています。私共としてもこの変化を体験するのは今回が初めてですので、どの様な変化があるのかは「乞うご期待」と言う感じですが、今までの申請プロセスを見ているだけでも、とても細かくなり、現場でその場対応する柔軟性が極端に少なくなってきている感じがします。
デザイン的にも、行政の対応に変化が見受けられ、共有設備の設置義務が今まで以上に厳格になってきています。例えば、市全体で環境保全の為に自転車や徒歩での通勤を促す事から、共有シャワースペースやロッカールームの設置が義務付けられ、自転車置き場の設置も建築規格の中に含まれる様になりました。また、共有ミーティング・スペースも賃貸エリアには含まれませんが、設置義務が施される様になりました。今回のプロジェクトで言えば、この様な賃貸面積に含まれない共有スペースの設置はビル全体のフレンドリーさと言う観点からは利益になりますが、建築コストが上昇する上に、直接的な金銭的利益が発生しないと言う面では、痛手になります。しかし、その反面、一番売り辛いスペースをこの共有スペースあてはめられる事はある意味利益に繋がりますので、良い流れと受け止めています。
さて、このトピックが思った以上に長くなりそうなので、今週はここで一旦終了し、来週は建築融資や投資家対応、そして建築面での再開発や改築についてお話ししたいと思います。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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