ここ数週間に及んで不動産投資についてミニシリーズ*でお伝えしてきましたが、ご覧の通り不動産投資にも色々なプロセスと段取りが組み込まれており、最終的エキジットまでの期間も数年かかってしまう事が殆どです。
もちろん、その見返りは大きなものになりますが、初期投資で必要とされる資金の額も大きく、リスクレベルも高い投資事業です。よって、総合的リターン率もそれなりに高く設定されている必要があります。しかし、この「妥当な投資リターン率」は、各市場や経済状況、及びその時の他の比較投資利益率などの影響を受ける事になるので、一言にX%と言う数字を提示するのは難しくなります。ただ例として、カナダのバンクーバーでは初期購入時からの共同投資でスポンサー(デベロッパー)の資金率が5から10%の場合には、IRR=18%が目安になっています。IRR=18%という数字はキャッシュリターン率に置き換えると、年率約20%前後が良い目安なのではないかと思います。よって、北米での共同投資事業への参加は、一組合員として投資に参加し利益を得るという平等なスタンスより、金貸し業を行う事で利益を分け合うという様な理解と言った方が今のトレンドに合っているのかもしれません。投資組合員の場合には投資経営と管理は一任勘定になりますので、コントロールが効かないと言う側面を補う上でも、リスクが高いので、それなりのリターンを求める意味でも高く設定されてしまうのだと思います。同時に、自己資金投資でレベレッジを付けて家賃収入ベースの投資を行った場合、現在の平均リターンは年率3から4%ぐらいになります。もちろん、将来的エキジット時のキャピタルゲインも今までの様に地価が年率15から20%ほど上昇し続けている場合には、この様な現金収入でも賄えるのかも知れませんが、現状の融資コストは年率4から5%になりますので、必ずしも投資家全員に値する投資手法でない事は明らかになります。よって、投資を考える場合には、購入前に出口戦略を考える事が必須になります。その上で必要運営費を考慮した資金の準備が必要になります。
1)不動産物件の購入
不動産投資を行う上で、やはり最も重要なのが物件の購入です。物件タイプ(オフィス、インダストリアル、リテール)や場所、契約状況も大きく影響してきます。また、その上にブログでは直接お話ししませんでしたが、Land Lease(借地権)を取り入れる事で、購入コストが安く出来る事もあります。ただこれはすごく複雑で市場の流れ以上に心理的影響も出てくる物件所有方法ですので、明確な戦略と経済などの流れとのタイミング合わせが必要です。また、仮契約の中で最も重要と思われる条項が売主のReps and Warranty(表明保証)になると私は思います。なので、この条項には特に弁護士と相談して決めるべきです。弊社においてもこれだけ色々な物件を取り扱ってきましたが、各物件の状況は異なるのでこの表明保証は毎回細かく確認する様にしています。
2)仮契約後のデューデリジェンス
そして、仮契約を締結した際には、デューデリジェンスは将来的成功を左右するステージですので、綿密な調査が必要になります。その中でも環境汚染は非常に重要で、行政の対応も厳しくなっている為に一層注意を置く項目になります。ただこれは、バンクーダーだけでなく、どの市場においても環境保全と安全性については厳しくなっていると思います。バンクーバーでは、特に2020年までに世界で一番環境に優しい街になる為に、環境管理については頻繁に新しい条件やシステムが導入されています。
3)物件の運営方法
クロージングを終えた後では、投資戦略によって物件の運営方法が若干異なりますが(開発などでは必要運営期間の違いから、新規テナントを入れる場合には賃貸契約書上の項目や条件が簡素化され、融資支払いを補う為の家賃収入に焦点が移るからです)、物件運営を行う必要があるのはどのケースでも同じです。開発目的でテナントの入居を試みる場合とにかく時間を要する項目です。建築申請やその時の市場の状況により、再開発の最終的な価格も左右される為、余裕を持ったアプローチが必要になります。再開発では、いかにレッドオーシャンから離脱して、自分の物件の価値観と将来性をアピールできる環境を構築するかがキーだと思います。そして、どの様な投資家を募ってくるか、またどの様な条件で投資家を募るのかによっても、必要リターン値が変化する事になりますので、ここは重要検討事項です。
4)売却
投資事業の幕を締めると言う意味では、売却はクライマックスに値します。区分所有や再開発の場合には、金融機関のpre-sale requirement ratio(前売り必要比率)の提示がありますので、着工時には過半数のユニット(階数)が売却済みになっている事になります。よって、竣工時には大凡の最終価値の割り出しも可能になるのではないかと思います。組合通しなどでは組合投資家の税金対策までは行いませんので、各投資家が納税する事になります。
投資事業完了後、日本への資産送金については、会計士や税理士との綿密な事前の話し合いが必要になると思います。また、カナダの場合には政治的意図や貨幣の流通量などでも、最終的な日本円換算された金額に変動がありますので、要注意です。海外投資を行う場合、個人的にはワンウェイの資金移動を前提に考慮しています。我々は金融投資家ではない為、毎投資終了時に資金の返還を行う事により、投資事業以上の金融的・財務的(送金の為の源泉徴収などの税金を含めた)対応が課され、為替のタイミンングによっては許容範囲以上のロスが発生する可能性もある為、システムを簡素化する為にも長期投資スタンスをベースに取り組む事にしています。そうする事で、次の世代レベル用の事業資産や海外における生活費ぐらいは貯める事が可能になりますので、人生上でも色々な選択肢が広がると私は考えています。よって、長期投資における成功の秘訣は末長く付き合える現地パートナーを見つける事が重要だと考えています。
この一連の不動産投資事業の流れについて、読者にも高いレベルにおいてですが、各プロセスをご説明出来たのではないかと思っています。不動産事業には色々なプロセスがありますが、各ステージをシンプルにして全体的な流れを当初から把握して考慮しておく事で、スムーズな流れと事業が獲得出来ると思います。
皆さんの不動産投資事業も楽しく目的に沿ったものになりますように。
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
YouTube: KM Pacificオフィシャル
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