1)2019年のバンクーバー不動産市場

バンクーバー市場における2019年の不動産市場は一種の歴史上のマイルストーンだったと思います。住宅不動産業界においては、2018年に導入された複数の政策の影響が売買価格や路線価格上で現れ、イケイケ心理で継続した価格の上昇に一時的なストップをかける事になりました(空き家税は2016年)。これら政策(空き家税、外国人投資家税、融資条件見直し政策)は今後も存在し継続すると思われ、今まで海外からの投資資産の流入に両手を大きく上げて大歓迎だったバンクーバーも、住民の生活基盤保護にシフトせざる得なくなったと思います。しかし、バンクーバーの潜在的魅力(立地条件や環境条件)や市場力(IT、教育、安定した経済)が今後も継続し、住宅市場を牽引していく事になると思います。よって、今後もバンクーバーの住宅不動産への魅力は世界レベルで注目を浴び続ける事と思います。ただそれはここ数年間の年率15%を超えるものではなく、もっと落ち着いた長期成長型になる事と私は思っています。よって、1980年代では一軒家の価格が50から60万ドル相当(約4,000から5,000万円)が2000年を過ぎて100万ドルを超えた時点で、居住不可能都市と噂されていましたが、2019年では同クラス一軒家は最高値の300万ドル(約2億4000万円)をマークし、その後190万ドル(約1億5000万円)若しくはもう少々安値で落ち着いている状況です。今後は年数パーセントの上昇があれば良い感じではないかと思っています。そして、今後再度世界的な経済上昇が発生した時には、またバンクーバーの潜在価値が表に出て、再度住宅の価格上昇を経験するものと予測しています。

2)2020年のバンクーバー不動産市場

現に2020年におけるハウジング・スタート値は、歴代的な数値を記録しており、一時的休息を取った市場を活性化するものと思われます。ただ、このハウジング・スタートがどれだけ現在最も必要とされている初回住宅購入者や若年購入者層の手が届く範囲の物件であるかは不明で微妙な所です。バンクーバー圏では建築申請に複年数の多大な時間を要され、今年のハウジング・スタート値として出ているプロジェクトも、立案されたのは最低でも2年前だと考えると、高建築コストを考慮した高級マンション向け住宅がメインストリームなのではないかと懸念してしまいます。そうすると、これら高級マンションは海外投資家に対しての政策が遂行される中、どのくらいの地元投資家が購入し、賃貸物件として市場に導入するかがキーになると思います。この場合でも、やはり購入価格が高い為、賃料も今の1BR$2,700(月約23万円)を下回る事はあまり望めないのではないかと思います。この辺は、私の憶測にしかあらず、また新聞などからの情報を頼りにしたものですので、夏頃にまた現場がどうなっているのか再度検証してみたいと思います。

同時に2020年の住宅価格予想では2.4%ほどの上昇を予測しているとの事ですが、BC州不動産協会では約20%の売買件数の上昇を見込んでいるそうです。価格の安定は居住を目的とする本来の住宅市場を活性化させる役目があるので、この予測は住宅業界の活性化に繋がると思います。バンクーバーにおける住宅業界のパフォーマンスはマイクロ経済のキーインディケーターにもなっている為、住宅業界の活性化は他の業界へのプラス影響をもたらすと考えています。例えば、住宅業界が活性化する事で、ローカル経済に対して安心と信頼が増しサイコロジカルな原動力となり、消費を促す事になります。これが経済の安心を更に更新させ、最終的には資産計上される商業物件の購入やオフィスの移転や拡張に繋がると思っています。

3)銀行担当者との話

実際に弊社の銀行担当者と現在の経済について話すと、2019年は各顧客企業において記録的な増益の年だったそうです。この経済状況は今年に入っても継続していて、企業は意欲的に投資や事業拡張に資金を費やしているそうです。ただ、問題は人材不足を原因とした企業拡張だそうです。そんな中、弊社担当の銀行マンによると不動産業界ではその様な「ウハウハ」感は無く、逆に購入や再開発に対しては、慎重なスタンスをとる所が多くなっているとの事でした。やはり、価格面でも見えない天井を継続的に突き破ってきた最近のバンクーバーの住宅市場では、中国を主とする海外投資家の減少が住宅市場全体に成長更新の限度として映り、それが他の不動産セクターにまで心理的な影響を及ぼし、価格の上昇がストップしたと私は分析しています。これは特にストラタなどの区分所有セグメントでは最も明らかになっていると思います。今まで文句は言うものの、価格の根拠を質問する事なく、上昇する価格を受け入れてきたセグメントですが、住宅の減速から、商業においても価格レベルを疑問視するスタンスが見え始め、需要面では供給を明らかに下回っていても、値段だけではバリュー(価値)を見出せていないと判断した投資家や企業層が購入を拒んでいるのだと思います。よって、今までの様な需要が供給を超過しているので、作れば売れると言う時期は終わり、価格にバリューが反映されているものが今後成功すると思っています。

ですから、斬新な設計やデザインなどの取り入れによる付加価値の提供が今後のプロジェクトを成功に導いていくのだと思います。また、多少のタイムラグは存在するものの、住宅業界の「回復」からくる商業不動産業界への追い風は秋口ごろから来るのではないかと推測しています。弊社としても今後の市場の流れを見守っていきたいと考えています。

4)まとめ

私にとってこのバンクーバーという市場は、未だ未だのり代を多く秘めており、世界からの影響をやっと身をもって感じるようになれた、成長過程にある市場だと思っています。今まで外圧に影響される事なく隔離されて来た市場では、挑戦や進化を必要とされて来ませんでした。ビジネス・アズ・ユージョアル(今までと同じ)では、これから世界舞台でIT、メディア制作、医療研究業界などで羽ばたこうとしているバンクーバー市場のサバイバルは不可能です。そういった面でも、クリエーティブな方向性を示すFirst Mover Advantage(先発の利点)が企業の成功を促すと私は考えています。

そういった面でも、弊社としてはこの先もバンクーバーをフルに活かした活動を行っていこうと考えています。

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