以前のブログにおいても、このトピックは軽く取り上げましたが、その後の状況を今回お話ししたいと思います。
1)住宅用不動産の動向
バンクーバーの地理的環境は今も変わっていませんが、最近は郊外の至る所でマンション建設が行われている様に思えます。特に現状の住宅難から地元先住民族(インディアン民族)が開発業者と共に自分たちの領土の一角を開発し「分譲」する動きが目立っています。ただ、先住民族所有地では、一般のカナダ法が通用せず、各先住民族の部族法が適用される事になります。よって、多くの住宅販売の場合には、完全な所有権の移行ではなく、長期借地権を用いたランドリースになります。ですから、価格は経済的に設定されていますが、表面化されないコストやリスクが存在している為、今後の販売傾向が気になるところです。
ただ、バンクーバー市の基本的レイアウトは、ダウンタウンがあり、その周辺には古くからの住宅街になっています。よって、市内の開発は全てのケースにおいて再開発になります。また、地価の高騰はどのセグメントでも同じで、以前のブログでもお話しした様に再開発費用は相当なものになってしまっています。また、近年の建築費の高騰(ここ2年間で年平均約20%の上昇)により、各プロジェクトへの圧迫は半端ない状況です。よって、これら開発費をカバーする為にも、竣工物件は高級物件志向になってしまい、中国などからの投資目的の住宅購入者の興味が去ってしまった現在は勢いが停滞している状況です。
2)長期的展望で考えたバンクーバーの姿
この様な状況は短期的展開ですが、長期的展望で考えたバンクーバーの姿はどの様になるのかご説明したいと思います。当初この街に来た時には、丁寧な区画整理もされておらず、住居地域とオフィスや、倉庫地区も入り混ざった「発展問題」を抱えた街だと思いました。しかし、これがバンクーバーの本来の魅力なのかも知れないと今では思う様になっています。これだけ利用可能土地が限られた半島でのダウンタウンの開発と発展はニューヨークのマンハッタン同様に柔軟で多種多様な対応が必要なのかも知れません。だからこそ、ダウンタウンの用途は今後一段と複合共存状態になり、アジアの様な一高層ビルの中にも居住スペース、オフィスと生活サポート施設が複合化される方向にあると思います。居住環境の整備の向上を狙う為にもダウンタウンでは、自然環境を保護する一環として、車両の侵入が禁止され、徒歩や自転車及び電動バスなどの環境整備が整った公共交通機関のみが走行可能になっていくと思います。物資の搬入は夜間がメインになり、日中の配達は環境保存配慮がされた手段のみが可能になるのではないかと思います。一般車の出入りは日中を外した時間帯のみが可能、若しくは2050年までには全車両を電気自動車化すると発表した行政の意向に沿って、電気自動車以外の車両はダウンタウン・バンクーバーに於いて走行不可能になるのかも知れません。その一例として、東西を突き抜けるメイン・ストリートであるジョージア通りでは、車線を減らし自転車専用通路を導入する工事が現在進められています。今までにも数本の車道で自転車専用通路の導入が行われてきましたが、ジョージア通りに導入された事で、この勢いは更に増していく事になると思います。
3)東バンクーバーの今後の動向
商業セグメントであるオフィスやインダストリアルに於いても、ダウンタウンでの高層オフィスビルの急激な再開発が進む中、これらオフィスビル・プロフィールに値しないテナント層はダウンタウンを離れ、東(East Vancouver)や南(Mt. Pleasant)方面にある既存インダストリアル地区に新規拠点を求めて移転しています。しかし、行政主導で区画化された低所得者用居住地域や薬物乱用保護施設など社会的保護が必要な人口に対しての居住保護区域がダウンタウンの東側に隣接している為(元日本人街)、ダウンタウンから観光地で有名なガスタウンを抜けて東方面への拡張の勢いは実質上遮られてしまっています。この区域の軽減化が今後のバンクーバーの物理的成長の鍵を握ると同時に、多種多様な人間の生き様を芸術的に見せるバンクーバーカルチャーの促進(レストランやフーディー人口の参入、IT業界の仕事場としての発展、ファッションや家具などの先端デザインの発祥からミューラル等の屋外アートなど)で、メインストリームでは今まで取り上げられなかったニッチ層が更に存在をアピールし、バンクーバー文化を一新していくと思います。そしてこのニッチ文化が更に新しい特に若年層の人口流入を促進させる事につながると予想しています。バンクーバー市の人口は67.5万人ですが、各ニッチ層や文化(カルチャー)の層は厚くバラエティーに富んだ思考が混在しています。
そう言ったユニークなキャラクターと自然の宝庫という資産をアピールしていく事で、今後更に色々な人口が入り混ざった層の厚い都市に発展していくと考えています。
今回は長くなりましたので、2部構成にし来週継続してこのトピックについてお話ししたいと思っています。
関連ブログ
第83話「NAIOP朝食会の報告 – 2020年の展望」
第84話「ダウンタウンバンクーバー不動産市場の今後の成長方向の予測 1」
第85話「ダウンタウンバンクーバー不動産市場の今後の成長方向の予測 2」
KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
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