先週からお話し始めたバンクーバーの将来性についてですが、今週は東バンクーバーとMt. Pleasantについて更に具体的にお話ししていきたいと思います。
1)東バンクーバーの立地と需要
この元日本人街であったエリアは現在経済的効果を生み出していない事実上の空白地区となっており、それを跨いで弊社のプロジェクト物件があるGrandview/Woodland地域が存在しています。このエリアは再三お伝えしている様に、今後の発展候補地区ですが、このギャップの存在から新規発展成長軌道には載っていません。しかし、バンクーバーが明らかなITメッカになりつつあると同時に映画産業からの注目も浴び、このインダストリアル地区の必要性や需要は今後も安定した上昇傾向を辿っていくと思います。また、このエリアはダウンタンから車で約10分の距離に位置する為、ダウンタウンの徒歩ベースな環境を重視した政策とは異なる方向性が導入され、ダウンタウンの条件では営業不可能な企業などからの需要が上昇すると予想しています。そう言った意味では、Grandview/Woodland地区は色々なノリしろ部分を秘めており、今後も魅力ある地域であり続けるのではないかと思っています。そして、このGrandview/Woodland地区を越えたところに、Canada Highway 1と言うカナダ大陸横断高速の入り口が位置しています。
2)Mt. Pleasant地区の状況
しかし、元日本人街である社会保障地区の存在影響は大きく、Grandview/Woodland地区の発展の前に、ダウンタウン南部に隣接するMt. Pleasant地区の新興が進むと思います。2010年の冬季オリンピックのために開発された選手村地区を含めるこのエリアでは、既に地元有名大学の一つであるブリティッシュコロンビア大学へ直結する地下鉄建設が決まっており、ダウンタウンから空港方面をつなぐ地下鉄とのクロスポイント地区としても近年著しい発展を見せています。このエリアではダウンタウンのインダストリアル地区からは見出されたIT企業などが進出しており、ITハブになりつつあります。しかし、地価の高騰は既に「妥当な」価格ポイントを超えており、住宅業界の冷え込みの影響で、再開発物件は全く買い手がついていないのが現状です。
よって、このエリアの将来としては、価格の調整が行われるのではないかと思います。ここ数年間の間にスペック投資として高額で購入した投資家たちは痛手を食う結果になりかねません。現在販売中の区分所有フレックスオフィス分譲では、一平方フィートあたり$1,700と言う高額をつけており(一坪約466万円)、この価格は多分今後$1,200ぐらいまで下降修正される必要があるのではないかと思っています。と言うのも、$1,700で平均賃貸収入率の3%を求めると、約$50の家賃が必要になります。カナダではNNN(Triple Net Lease)ですので、この基本家賃に光熱費やビルの保険や固定資産税が上乗せされ、結果$65から$70ほどの家賃に跳ね上がってしまいます。これはダウンタウン価格と同様な金額になりますので、いくらダウンタウンのビルプロフィールに似合わないテナントからの需要があり地域的にも過ごしやすい発展が提供されていても、ダウンタウン相当の価格の請求は無謀になると考えます。よって、家賃が$40ほどだと、$1,200ドルでも3%の投資リターンは取得可能になるので、分譲購入候補としても納得がいく数字なのではないかと考えています。
3)今後の展開予想
では、もう少し予想ホライゾンを広げて今後15年間を考えてみたいと思います。このエリアの物件は小規模物件が多く、過半数が6,000平方フィート(180坪)から9,000平方フィート(約270坪)程の区画になっています。そして現在はインダストリアル用途がメインになっています。近年この地区では用途変更があり、用途が製造業だけでなく一般企業の誘致も可能になりました。また、この地区には以前からWholefoods、Save-On-Foods、London DrugsやHome Depotと言った大手リテール施設が小規模レストランと一緒に基盤を抱えているので、生活基盤は既に出来上がっています。よって、今後は更に許容用途が増し、住宅等の開発も許可される可能性は高いと考えています。
よって、単筆区画での再開発は困難なので、買収による合筆が進み、この地区でも低中層マンションなどの建設が可能になるのではないかと思っています。容積率の増加については、微妙で予測し難いところですが、東バンクーバー地区のGrandview/Woodlandでも去年容積率が300%から500%に容認された実績があるので、あり得ない事ではないと思います。しかし、Mt. Pleasantでは、既に複数の新築物件が建設された為、それら所有者に対しての世間体を考えると、今更の容積率増加は難しいのではないかと考えます。もしくは、住宅に限ってとか、賃貸マンションや分譲マンションでも価格帯に制限を設けた場合の建築申請についてのみ容積率の増加は検討案件になるかもしれません。現在はこの様に柔軟な都市計画に対した考えを持ち合わせていないバンクーバー市建設部ですが、15年も経てばこの様な前向きなアイディアも持つ様になってくれるかもしれないと願うばかりです。よって、Mt. Pleasantは新たな居住地区への生まれ変わり、近年郊外に流出した若年層の舞い戻りの受け口として発展していくのではないかと考えています。そうすると、必然的に出てくる疑問は、現在このエリアで活動している企業の行方です。今後は新規複合建設の中に残るか東バンクーバーへ移転する事になるのではないかと、私は個人的にみています。
よって、やはり長期展望では東方面への拡張はほぼ確実な流れではないかと考えています。
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KM Pacific Investments Inc.代表
枡田 耕治
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